アトピー性皮膚炎/アトピー性皮膚炎の予防法・治療法

生後数ヶ月の湿疹予防が、全身のアレルギー予防に?

アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の発症率は、生活の欧米化とともに増え続けていると言われています。アトピー性皮膚炎は60%の人が1歳までに発症し、それによる皮膚バリアの破壊が、喘息など全身のアレルギーの発症につながる可能性も指摘されています。そうすると、いかに乳児期にアトピー性皮膚炎の症状を抑えられるかがカギになるのです。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

アトピー性皮膚炎は、60%の人が1歳までに発症する

アトピー性皮膚炎はほとんどが乳児期~幼児期で起こり、45%の人が6ヶ月以内に、60%の人が1歳までに、そして85%の人が5歳までに発症します。いかに発症時期が早いのか、おわかりいただけると思います。

また、アトピー性皮膚炎の罹患率は大人になると人口の5%以下にまで下がりますが、小児のうちには10%以上と多く見られます。発症した60%の人では小児から大人になる過程で治るのですが、言いかえれば40%もの多くの人が大人になるまでアトピー性皮膚炎の症状を持ち越してしまうという統計的なデータです。

このように、発症が早くかなり多くの人が大人になるまで持ち越してしまうアトピー性皮膚炎は、いかに早い段階、特に生後数ヶ月の間に症状を抑えてあげられるかがカギになります。

アトピー性皮膚炎

おなかのアトピー性皮膚炎(湿疹)の写真。左側が炎症を起こして赤く、ザラザラした表面の皮膚になっている。世間で考えられているよりも多くの人(~40%)が成人になるまでアトピー性皮膚炎を持ち越すので、予防と早期治療が大事。


2014年に日本とイギリスで発表されたデータでは、生後すぐから保湿剤を半年間塗ったところ、アトピー性皮膚炎の発症を半分近くまで減らすことができる、という研究結果が出ました。もともと皮膚科医は、保湿剤でしっかり保湿してあげることで、アトピー性皮膚炎の赤いガサガサした症状の出現を抑えられることを経験的に感じていましたが、ついにデータとしても裏付けられたのです。

生後数ヶ月の湿疹を予防することが、全身のアレルギー予防につながる

全身のアレルギー

乳児期のアトピー性皮膚炎が原因で、喘息など全身のアレルギーが発症する可能性も指摘されている。子どもが小さい頃から保湿剤で乾燥肌、アトピー性皮膚炎(湿疹)を予防することが大切。お風呂あがりに全身に保湿剤を塗ってあげるとよい。

私は最近、世界で最も大きな皮膚科の学会American Academy of Dermatology(アメリカ皮膚科学会)に参加してきました。アトピー性皮膚炎(湿疹)について今後の予防と治療の戦略を話し合う中で、もっとも強調されていたことは、冒頭でも指摘した「生後数ヶ月までの予防が、その後の発症を抑えることができるのではないか」ということです。

学会ではこの最初の数ヶ月について「window of opportunity(予防・治療に最適な時期)」として触れました。この時期に保湿剤による予防とステロイドのぬり薬による治療をしっかりと行うことで、今後のアトピー性皮膚炎の発症を抑えることができる、さらには喘息や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎といった全身のアレルギーをも減らすことができる、という内容でした。

乳児期に皮膚のバリアがこわれていると、そこからアレルギーの原因になる物質が侵入し、他のアレルギーの原因になる可能性があるのです。

保湿剤による予防とステロイドのぬり薬による早期治療がカギ

ぬり薬

アトピー性皮膚炎(湿疹)の予防には保湿剤、早期治療にはステロイドのぬり薬が欠かせない。毎日ぬり薬を使う習慣をつけましょう。


まず、皮膚のいい状態を保つには、保湿薬で皮膚の乾燥を抑えてあげる必要があります。特に冬は乾燥するので、保湿薬を毎日お風呂からあがってすぐに塗ることが重要です。

そして、顔や腕などの赤ちゃんにとって湿疹が出やすい部分が赤くがさがさになった場合は、皮膚科を早めに受診し、広がる前にステロイドのぬり薬で治療してあげることが大切です。ここでステロイドを怖がってしまうと赤いがさがさが広がり、完全に症状を抑えることが難しくなります。そして、そのままアトピー性皮膚炎に移行してしまう場合もあります。小さいお子さんでも、短期間(~1週間)弱めのステロイドのぬり薬を使う分には、副作用を気にする必要はありません。

アトピー性皮膚炎は定期的な予防、早期治療を

生後から数ヶ月、保湿剤を毎日塗るだけで湿疹の予防ができることは、2014年に論文としてしっかりと示されています。湿疹が出現した場合にはできるだけ早く、ステロイドのぬり薬(もしくはプロトピックという炎症を抑える処方薬)を用いた治療で治し、普段は保湿剤で予防する、これが大切です。

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