アトピー性皮膚炎/アトピーのかゆみ対策・スキンケア・保湿

アトピーはお酒でかゆくなる?飲酒・アルコールの注意点

【医師が解説】適度のアルコールはストレス解消になりますが、アルコールには、急性アルコール中毒や、判断力低下などの慢性的な影響など様々な作用があります。お酒を飲むと皮膚のかゆみが増すなど、アトピーへの影響も。飲酒の注意点とアトピーへの影響を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

アルコールの体への影響……急性アルコール中毒や慢性的な影響

アトピーへのお酒の影響

「お酒」とは、ビールや日本酒のことを指します

アトピーの原因の一つでもあるストレス。ストレス解消にアルコールが一役を担うこともありますが、いいことばかりではありません。今回は、アルコールの作用とアトピーへの影響を説明します。

お酒は麻酔や消毒作用を持つアルコールを含む飲料です。アルコール飲料、お酒を飲むと、人への影響はどのようなものがあるのでしょうか?

■急性の影響
  • 中枢神経系への作用。脳に対して、抑制的な麻酔作用があります。「酔い」で、最初に抑制系の神経が抑制されますので、陽気になります
  • 血管拡張作用。顔が赤くなります
  • 利尿作用。尿が近くなります
  • など
特に中枢神経への影響は深刻です。飲む量に応じて、個人差はありますが、目安としては以下の通りです。

■血液中のエタノールの量と症状
  • 0.05%……陽気、気分の発揚、興奮
  • 0.08%……小脳への作用、運動の協調性の低下、反射の遅れ、動作が雑
  • 0.10%……運動の協調性の明らかな障害(まっすぐに歩けない等)
  • 0.20%……錯乱、記憶力の低下、重い運動機能障害(立つことができない等)
  • 0.30%……意識の喪失
  • 0.40%……昏睡、死
急性アルコール中毒には注意が必要です。簡単な式ですが、
アルコールの血中濃度(%) = 飲酒量(cc) * アルコール度数(%) / 体重(kg) / 833
で、アルコールの血中濃度は予想できます。0.1%以下にしたいものです。

このように、アルコールは脳への影響が大きく、正しい判断ができなくなります。運動機能も落ちますので、運転は非常に危険です。当たり前ですが、飲酒運転による事故は加害者にも被害者にも人生を変えることになりますので絶対に飲酒した場合は、運転を辞めましょう。

■慢性的な影響
  • アルコール性肝障害・脂肪肝→肝硬変→食道静脈瘤
  • 慢性膵炎→糖尿病
  • 痴呆・小脳萎縮
  • 末梢神経障害
  • 心筋症
  • ビタミン不足による精神症状
など
 

アトピーへのお酒の影響……皮膚のかゆみが増す、乾燥してカサカサに

アトピーがあると、アルコールはどんな影響があるのでしょうか?

■急性の影響
  • 中枢神経系への作用→掻く動作がひどくなり、無意識に湿疹部分を掻いて悪くする。麻酔作用により掻いても痛みが少なく、傷がひどくなる
  • 血管拡張作用→皮膚への血行がよくなり、かゆみが増す
  • 利尿作用→肌が乾燥しカサカサする
■慢性的な影響
  • 肝障害→皮膚のかゆみが増す
  • ビタミン不足などの→乾燥肌、肌荒れがアトピーを悪化させる

アトピーの悪化要因である「ストレス」解消のためだとしても、適度な飲酒にしましょう。
 

適正飲酒の10か条(アルコール健康医学協会)

アトピーへのお酒の影響 お酒の飲み方

おつまみを食べながら、が「いい飲み方」

適度な飲酒の方法が、アルコール健康医学協会で紹介されています。アトピー悪化の防止はもちろん、他の病気を防ぐためにも大切なことです。

1. 談笑し 楽しく飲むのが基本です
適量のお酒で、楽しい気持ちをさらに増加させたり、緊張感を和らげたり、良好な対人関係を促して、ストレスを解消させます。

2. 食べながら 適量範囲でゆっくりと
空腹状態でたくさんのお酒を飲むと、胃腸の粘膜が荒れてしまい、アルコールが吸収されやすくなります。適量なお酒と一緒に栄養のバランスのとれたもの、特にタンパク質や脂質を含んだものを一緒に食べるようにしましょう。

3. 強い酒 薄めて飲むのがオススメです
アルコール度数の高い飲料は、のどや胃腸の粘膜に強い刺激を与え、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がんなどの原因になることもあります。アルコール度数は低くした方がよいでしょう。

4. つくろうよ 週に二日は休肝日
お酒を飲むと、肝臓には中性脂肪が蓄積され、胃や腸といった消化管の粘膜も荒れてきますので、修復するために時間が必要です。これら臓器の修復には数日の休みを入れたいものです。

5. やめようよ きりなく長い飲み続け
長い時間飲み続けると、酒量が増え、大量飲酒になりがち。さらに二日酔いになります。時間を決めておきましょう。

6. 許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
イッキ飲みは急性アルコール中毒から死にもつながる可能性も。酒飲みのマナーとして、相手にも十分配慮しましょう。

7. アルコール 薬と一緒は危険です
くすりの副作用が出てしまうことがあります。薬の作用がなくなったり、逆に強く現れたりします。

8. 飲まないで 妊娠中と授乳期は
妊婦が飲酒したり、授乳期に飲酒すると、胎盤、母乳を通じてアルコールが胎児や赤ちゃんの体内に入ります。胎児や赤ちゃんに影響が出る可能性があります。

9. 飲酒後の運動・入浴 要注意
運動、入浴によってアルコールの分解が遅くなってしまいます。酔いがひどくなって、事故などが起こる可能性があります。

10. 肝臓など 定期検査を忘れずに
血液検査で肝機能等の検査を受け、その健康状態を確かめることが必要です。特に肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、脂肪肝、肝硬変になることがあります。症状が出たときには大変な事になっています。

アルコールと上手につきあっていきたいものですね。
 
豆知識
小脳:脳の中でも運動機能を担っている。運動動作や体のバランスを大脳や脊髄と連携して調整している。小脳の機能が落ちると、まっすぐ歩けず、俗にいう千鳥足になる。
 

【関連記事】 <参考リンク先>
アルコール飲料(ウィキペディア(Wikipedia)
社団法人アルコール健康医学協会
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