6股でも人気は揺らがない
2016年の年明けから、芸能、スポーツ、政治と幅広いジャンルから、怒涛のようにエグいニュースが飛び込み、大手、中小含めてマスコミは上を下への大騒ぎ。まるでステーキとうな重と酢豚を一度に出されたかのようで、日本中がニュースに胸焼けを起こしていたところに、「箸休め」として格好の話題を提供してくれたのが、ご存知「狩野英孝6股騒動」でした。それまで世間を騒がせていた、どこか閉塞気味でネタとしてお気楽に取り上げにくかった話題と違い、誰もが心置きなくツッコミを入れられると、各局ワイドショーでも引く手あまた。交際相手の加藤紗里もたちまち売れっ子になるなど、取材する側、される側、それを楽しむ野次馬たちまで、みんながWINWINの関係で丸く収まってる気がしてなりません。
それもすべて、事件の主役である狩野英孝のキャラクターに負うところ大と見ています。もしこれがほかのタレントだったら、ここまでの事件に引っ張られ、地味で暗い事件になってたかも。マイナスをプラスに変えてしまう計り知れない人間性、日々のストレスに苦しむ我々にとっても、学ぶべき点が多々あるのでは?
なんとあの純文学に登場していた!?
芸能界では広く知られていた狩野英孝の得がたい人間性ですが、これが文学の世界にまで影響を及ぼしていたことをご存知でしょうか。昨年、芥川賞を受賞し空前のベストセラーとなった又吉直樹「火花」に登場する若手芸人・鹿谷。これ実は狩野をイメージして作られたものなのです。芸の実力よりも持ち前のキャラクターが受けて、数々のバラエティー番組に呼ばれ人気者になっていくという一節を読んだ時には、すぐ狩野英孝のことが思い浮かびました。ただ、そのパターンで売れたいわゆる天然ボケ芸人は他にも存在し、ネット上では別の人の名前も挙がっていたので、ひょっとしたら思い込みかもという一抹の不安もありましたが。
きっちり確信が持てたのは、今回の出来事のおかげでした。芸能人の記者会見で狩野英孝について聞くのが慣例のようになり、ピースの2人にもその質問が突きつけられました。そこで又吉が答えたエピソードが、向こうが後輩にもかかわらず「狩野軍団に入りませんか?」と勧誘されたというもの。これ、「火花」の中で又吉を投影した主人公・徳永に鹿谷が声を掛けた「鹿谷軍団に軍師として入りませんか?」そのままなんです。
出番こそ短いながらも、鹿谷の存在は物語の中で重要な役割を果たします。たぶん、莫大な印税の分け前を請求する権利は、綾部よりもあるのでは(笑)。