旨味や香りがたまらない……人気が続く「熟成肉」とは
好きの人たちの間では、最近霜降りよりも赤身肉が注目されています
熟成肉とは温度や湿度を管理して、一定期間熟成させた肉のことを指します。硬い赤身肉でも、熟成させることにより、柔らかくなるだけではなく、旨味がより感じられ香りも良くなるのです。この変化は、肉の中にある酵素や微生物の働きにより、たんぱく質がアミノ酸へと分解されることで起こります。
和牛の霜降り肉も、特有の甘い香りと独特の旨味があり、脂質もオレイン酸などの良質の脂肪酸を含んでいるのですが、肥満や高血圧などからカロリーやコレステロールなどが気になる人もいます。近年のヘルシー志向の高まりが、人々の関心が赤身肉にも寄せられる要因となっているのかもしれません。
熟成肉は安全? 熟成方法や管理体制は信頼できるかチェックを
熟成肉を熟成させる方法は、赤身肉が主流のアメリカなどで普及している乾燥熟成、いわゆるドライエイジング法と、真空パックされて熟成されるウェットエイジング法があります。アメリカでは科学的な研究を踏まえて、ドライエイジングの技術についてのプログラムが確立されています。しかし、日本の現状では、熟成肉に明確な定義はなく、製造者によって味・熟成期間・衛生状態が異なっています。製造プロセスはもちろんですが、たとえ食肉卸事業者まではきちんと管理されていても、通販などにおける物流での温度管理や、飲食店での管理体制はどのようには徹底できるのかが気になるところです。
全国食肉事業協同組合連合会のサイトによると、「昨今のインターネット販売や一部飲食店での過度の日数のドライエイジングがあたかもより美味であるとの宣伝は行き過ぎであり、肉の取扱いや、衛生面での管理が心配されます」とされています。同連合会以外にも、日本ドライエイジングビーフ普及協会なども、信頼性の高いエイジングビーフの普及を進めています。
日本でも検討が始まった「熟成肉」のルール作り
こうした業界の動きや市場のニーズを受けて、農林水産省は製造方法などに一定のルールを設けることで熟成肉の信頼性が高まり、畜産農家やJAなどが熟成肉を作りやすくなり付加価値を高められるとして、ルールの検討を進めているようです。今回の農林水産省の検討対象となるのは、ドライエイジングビーフ(DAB)で、熟成肉として出回ることが多いタイプ。これまで熟成ハムや熟成ベーコンなどの加工肉は日本農林規格(JAS)にありましたが、新たにJASの品目に加えて、熟成工程や仕上がった肉の状態、材料となる肉の部位などを特定される予定です。JASでは、施設の衛生状態や品質管理について、第三者認定機関が確認されます。認定を受けた製造業者は、JASマークを付けて商品を販売できるため、安全性や品質性の高さを訴求できます。
真摯に高品質と安全性を追求して製造・流通している事業者もいるのですが、残念ながらずさんな衛生管理、あるいはコスト優先で過度に熟成したものでも提供してしまうような事業者がいる可能性も懸念されています。
日本ドライエイジングビーフ普及協会では、信頼できる購入先なども紹介されていますので、参考になさってください。
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