ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.17 伊礼彼方(4ページ目)

群像劇の名作として知られながら、その規模の大きさゆえなかなか上演されない『グランドホテル』がこの春、遂に登場! 2組の豪華キャストの中で、「ハンサムだが無一文の貴族」を演じるのが最近、活躍目覚ましい伊礼彼方さんです。年上の女性と運命的に出会い、人生が変わる役どころですが、伊礼さん的にはかなり地を生かせそうなお役だとか。恋愛観を含めた「深い」お話をお届けします!*観劇レポートを掲載しました*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

リーヴァイのメロディが楽しみな『王家の紋章』

6月8~26日には新国立劇場『あわれ彼女は娼婦』にも出演予定の伊礼さん。(C)Marino Matsushima

6月8~26日には新国立劇場『あわれ彼女は娼婦』にも出演予定の伊礼さん。(C)Marino Matsushima

――夏には少女漫画の名作『王家の紋章』のミュージカル化で、ヒロインの兄を演じられますね。

「現代から古代エジプトにタイムスリップする女性の壮大な物語で、最新刊が60巻でまだ連載が続いているんです。ヒロインは古代エジプトで二人の王に愛されるのだけど、編集者の方が送ってくださった最新刊を読んだら、まだその争奪戦が続いてました(笑)。音楽は『エリザベート』のシルヴェスター・リーヴァイさんの書き下ろしなんですが、僕、リーヴァイさんの音楽、大好きなんですよ。例えが変ですが、演歌っぽいというか歌謡曲ぽいというか(笑)、日本人が好きな泣きのメロディがいっぱいある。どういう曲があがってくるのかとても楽しみですし、ミュージカル初共演の浦井くん(浦井健治さん)と一緒にできるのも楽しみですね。劇中は別世界にいる設定なので、残念ながら絡むシーンはないかもしれないんですけど。

それに今回、『エリザベート』の再演以来6年ぶりの帝劇なんです。この世界に入って10年、改めて自分のミュージカルの原点ともいえる場所に再び立てる縁も感じていますね」
『王家の紋章』8月5~27日=帝国劇場

『王家の紋章』8月5~27日=帝国劇場


「演目ごとに“全く違う人物”を演じたい」

――今後、どんな表現者でありたいと思っていらっしゃいますか?

「難しい質問ですね。漠然とした言い方になりますが、常に嘘のない表現者になりたいなと思います。あと心掛けてるのは、今が『ピアフ』で次が『グランドホテル』に出演するとして、“全然違う人”に見えたいですね。“また今回も伊礼君ぽいよね”と言われるより、“あれ、伊礼君だったの?”と言われたい。昔、劇団新感線の『オセロ』でインテリ・ヤクザの役をやって、その数年後に“あれ伊礼君だったの、全然わからなかった”と言っていただけたのが、僕にとってはすごい褒め言葉で、そうなりたいとずっと思ってるんです。なれているかどうかわからないけど」

――いわゆる“カメレオン役者”ということですね。

「映像と違って加工やCGは通用しないし、太ったり痩せたりといった準備期間も舞台では限られているので、外見だけではなかなかその役になりきれない部分もあるんですが、内面的ではいつもそう思いながら取り組んでいます。ジャンルにも拘りはもっていないので、ストレートプレイとミュージカルを両方やっていけるのが理想ですね。ミュージカルでは得られない刺激がストレートの芝居にはあるし、ミュージカルには芝居にはない、音楽という手段で表現するという魅力がありますから」

――音楽の才能を生かして、ミュージカルを作曲しようと思ったりは?
2009年The Musical『AIDA』撮影:村尾昌美

2009年The Musical『AIDA』撮影:村尾昌美

「そんな才能はないですよ。それより、何か面白い題材があるとプロデュース(企画)したくなります。この作品、こういう人に演出してもらって、この人とあの人でバトルさせたら面白いだろうなとか、いつも思っていますね。興行的なことを考えないといけないから実際は難しいだろうけれど、好きにできたらすごく面白いことができるかもしれない。でも、役者としてそこに自分が出たいとは思わないんです。裏方としていろいろなことが気になってしまって、表方との共存が難しい。例えば宴会場でトークショーをやっていても、向こうのほうでお客様のコップが倒れたりして、意外とウェイターが気付いてないから僕が知らせたり(笑)」

――意外と(?)こまやかでいらっしゃるのですね。

「どうなんでしょう。両極端な部分はあるかもしれませんね。座右の銘が“春風秋霜”なので、自分に厳しく人には優しく!をモットーにはしています。性格は基本、がさつですけどね(笑)。楽屋もいつも散らかってます(笑)」

*****
その直後、スタッフから「お財布、落ちてますよ」と指摘され、あまりのタイムリーさに「僕、こういう人間なんですよ」と苦笑していた伊礼さん。ラテンの気さくさとこまやかさに加え、物事の本質へと恐れず踏み込んでゆくその探求心が、彼に一面的ではない、襞のある人間描写を可能にしてきたのでしょう。そんな彼の内面が、最大限に生かされそうな今回の『グランドホテル』フェリックス役。草刈民代さん演じる年上女性とのロマンスを中心に、見どころ満載の舞台となりそうです!

*公演情報*『グランドホテル』4月9~24日=赤坂ACTシアター、4月27~28日=愛知県芸術劇場大ホール、5月5~8日=梅田芸術劇場メインホール

*次頁で『グランド・ホテル』観劇レポートを掲載しました*
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