リーヴァイのメロディが楽しみな『王家の紋章』
6月8~26日には新国立劇場『あわれ彼女は娼婦』にも出演予定の伊礼さん。(C)Marino Matsushima
「現代から古代エジプトにタイムスリップする女性の壮大な物語で、最新刊が60巻でまだ連載が続いているんです。ヒロインは古代エジプトで二人の王に愛されるのだけど、編集者の方が送ってくださった最新刊を読んだら、まだその争奪戦が続いてました(笑)。音楽は『エリザベート』のシルヴェスター・リーヴァイさんの書き下ろしなんですが、僕、リーヴァイさんの音楽、大好きなんですよ。例えが変ですが、演歌っぽいというか歌謡曲ぽいというか(笑)、日本人が好きな泣きのメロディがいっぱいある。どういう曲があがってくるのかとても楽しみですし、ミュージカル初共演の浦井くん(浦井健治さん)と一緒にできるのも楽しみですね。劇中は別世界にいる設定なので、残念ながら絡むシーンはないかもしれないんですけど。
それに今回、『エリザベート』の再演以来6年ぶりの帝劇なんです。この世界に入って10年、改めて自分のミュージカルの原点ともいえる場所に再び立てる縁も感じていますね」
『王家の紋章』8月5~27日=帝国劇場
「演目ごとに“全く違う人物”を演じたい」
――今後、どんな表現者でありたいと思っていらっしゃいますか?「難しい質問ですね。漠然とした言い方になりますが、常に嘘のない表現者になりたいなと思います。あと心掛けてるのは、今が『ピアフ』で次が『グランドホテル』に出演するとして、“全然違う人”に見えたいですね。“また今回も伊礼君ぽいよね”と言われるより、“あれ、伊礼君だったの?”と言われたい。昔、劇団新感線の『オセロ』でインテリ・ヤクザの役をやって、その数年後に“あれ伊礼君だったの、全然わからなかった”と言っていただけたのが、僕にとってはすごい褒め言葉で、そうなりたいとずっと思ってるんです。なれているかどうかわからないけど」
――いわゆる“カメレオン役者”ということですね。
「映像と違って加工やCGは通用しないし、太ったり痩せたりといった準備期間も舞台では限られているので、外見だけではなかなかその役になりきれない部分もあるんですが、内面的ではいつもそう思いながら取り組んでいます。ジャンルにも拘りはもっていないので、ストレートプレイとミュージカルを両方やっていけるのが理想ですね。ミュージカルでは得られない刺激がストレートの芝居にはあるし、ミュージカルには芝居にはない、音楽という手段で表現するという魅力がありますから」
――音楽の才能を生かして、ミュージカルを作曲しようと思ったりは?
2009年The Musical『AIDA』撮影:村尾昌美
――意外と(?)こまやかでいらっしゃるのですね。
「どうなんでしょう。両極端な部分はあるかもしれませんね。座右の銘が“春風秋霜”なので、自分に厳しく人には優しく!をモットーにはしています。性格は基本、がさつですけどね(笑)。楽屋もいつも散らかってます(笑)」
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その直後、スタッフから「お財布、落ちてますよ」と指摘され、あまりのタイムリーさに「僕、こういう人間なんですよ」と苦笑していた伊礼さん。ラテンの気さくさとこまやかさに加え、物事の本質へと恐れず踏み込んでゆくその探求心が、彼に一面的ではない、襞のある人間描写を可能にしてきたのでしょう。そんな彼の内面が、最大限に生かされそうな今回の『グランドホテル』フェリックス役。草刈民代さん演じる年上女性とのロマンスを中心に、見どころ満載の舞台となりそうです!
*公演情報*『グランドホテル』4月9~24日=赤坂ACTシアター、4月27~28日=愛知県芸術劇場大ホール、5月5~8日=梅田芸術劇場メインホール
*次頁で『グランド・ホテル』観劇レポートを掲載しました*