ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

橋本さとし×石井一孝×岸祐二、奇跡のユニットを語る(2ページ目)

昨夏の第一弾の大好評を受け、今回のリターン公演は開幕前から話題沸騰、東京公演は10分で完売した橋本さとしさん、石井一孝さん、岸祐二さんの奇跡のユニット「Mon STARS」コンサート。開幕が迫る中、前回の手応えと今回の抱負、今後の夢までを熱く熱く、そして爆笑の渦の中で(?)語っていただきました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


互いへの「リスペクト」が絆の基盤

左から石井一孝さん、橋本さとしさん、岸祐二さん。(C)Marino Matsushima

左から石井一孝さん、橋本さとしさん、岸祐二さん。(C)Marino Matsushima

――お三方はなぜにそれほど、惹かれあうのでしょうか。

岸「僕、当初はアンサンブルで、『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』で活躍する大先輩の二人を尊敬していたんです。それが『三銃士』で三銃士役をご一緒できることになって最初に驚いたのが、3人のハーモニー。ほかにない響きでした。それぞれやってきたことも個性もこんなに違うのに、一緒に歌うとまるで何十人もで歌っているようなコーラスに聞こえる。これって他にないなと思いました。そして仲良くなるうち、みんなロックが大好きだとわかって、音楽に対する思いが一緒なんだと。でもそれぞれの特殊能力はちょっとずつ違ってて、それが(一緒に歌うことで)びしっとはまるところが、僕は気持ちいいです」
石井「例えば、祐二には絶対音感があるんです。絶対音感ってクラシックを含めて、歌手の8割は持っていないと言われるのに、彼は持っているんですよ。いっぽう、僕は音楽作りが好きで、コード進行だとかドミソなのかミソドなのか、どういう風に音が積み重なって、俺は真ん中なんだなとか一番下なんだなとか、そういう理屈っぽい部分が好きで歌っています。そしてリーダーはそういうの何もかもを超越している(笑)」
橋本「僕は“勘”ですよ(笑)」
石井「さとしさんは譜面のコード進行も読まないんだけど、めちゃくちゃ耳がいいから、譜面上で難しい歌を最も早くとれるのはリーダーだったりするんです。高い音も出ますしね」
橋本「音というより、(心の)叫びやと思ってますからね。感覚の違いですね」
石井「こういうふうに3人が全然違うバックボーンがあって、それぞれ尊敬しあってる。(個性が)バッティングしていない、というのがいいんです」
橋本「リスペクトしあえて安心できるというのが、信頼関係に繋がってるんでしょうね。僕らのコンサートはいろいろなアイディアがてんこ盛りになって、これを全部やったらグラマラスになりすぎるという事態にもなります。そういう時、誰かがこれはやめようと言ったりすると、すんなり意見を聞くことができる。とてもバランスがとれているんです」
「cube三銃士Mon STARSコンサート」2015年公演より。撮影:江熊麗志

「cube三銃士Mon STARSコンサート」2015年公演より。撮影:江熊麗志

――コンサートでは「三銃士」として、それぞれにやんわりキャラクター設定があると以前うかがいました。トークではどの程度が「地」なのでしょうか?

石井「冒頭は例えば僕なら(「三銃士」の)アラミスの雰囲気で登場したりしますね」
橋本「祐二は「イエローで~す」だものね」
岸「(キャラを)押し付けないで下さい!やりますけど(笑)」
石井「でもフリートークになったら、素の部分があるかな」
橋本「出してはぶち壊して…というのがそれぞれありますね」

――前回はいろいろなコーナーがありましたが、中でも正統派とパロディがないまぜの『レ・ミゼラブル』メドレーは楽しかったです。

橋本「あれは反響が大きかったですね。僕らとしては、「追いついてない人たちが真似事をする」のではなくて、実際に出ていた僕らが「本気で」パロディにする。それによってミュージカルというジャンルを楽しく捉えられたら、と思ったんです」
石井「パロディ的な要素を加えるというのはとても難しいけれど、それは僕らが向かっていきたいところでもありますよね」
橋本「ただ笑いをとるんじゃなくて、驚嘆しながら爆笑してもらえるように。今回も、前回をふまえた内容を考えていますよ。他にも、僕ら世代が聴いて育った昭和歌謡もまた歌います」

――今回のゲストは一路真輝さん、霧矢大夢さん、壮一帆さん、シルビア・グラブさん、安蘭けいさん。豪華な顔ぶれ、楽しみですね。

橋本「ただ招くのではなくて、一緒に楽しんでいただけるようなコーナーもあります。無茶ぶりも含めて(笑)」
石井「前回はゲストの方々に、掌の上で転がしていただいたよね」
橋本「ゲストにしきってもらっているときもありましたね。だから仕切りがうまい人しか呼ばない(笑)」
岸 「「まだ喋ってていんですか、曲に行きますか」と言って下さる方もいましたね」
橋本「前回は『三銃士』でご一緒した方ばかりだったんですが、今回は初めましての方もいらっしゃいます」
石井「僕は多分全員知ってますけど。リーダーは初めての人もいてちょっとドキドキですよね」

新たな世界が見えてくるこのコンサートを「生きてる限り」続けたい

「cube三銃士Mon STARSコンサート」2015年公演より。撮影:江熊麗志

「cube三銃士Mon STARSコンサート」2015年公演より。撮影:江熊麗志

――今後、Mon STARSをご自身のキャリアのなかで、どんな位置づけにしていきたいと思っていらっしゃいますか?

橋本「そうですね…(と、しばし沈思黙考の後に)お楽しみ会!(一同爆笑)。いや真面目に、本気でぶつかれる、そしてお客様と一緒に楽しめる会にしていきたいです。人生って楽しいだけではなくて、苦しいことも悲しいことも経験してきたけど、そういうものをクリアしてきたところの楽しみとして僕らにはMon STARSがあります。一緒に居て安心できるメンバーとこういう会ができるということに、僕はものすごく感謝してます。だってそれぞれ忙しくて、会いたくてもなかなか会えないんですよ。それがこういうイベントがあることで会える。本番だけじゃなくて、今こうやって何をやろうと考えている時点から、僕らのお楽しみ会は始まっているんです」
石井「僕もプライベート感覚で二人と会える嬉しさがありますね。僕はソロ活動ではCDも全部自分で作っていますし、ソロ・コンサートも全部企画構成演出を自分でやらないと気が済まないタイプなんですが(笑)、Mon STARSを経験して、3人の力が合わさるとこんなに新しい発想があるんだなとか、一人だと絶対生まれない世界観が生まれるんだとわかって、新たな地平が見えたというか、観たことのない景色が見えてきました。それに僕はボケ気質なので、トークでつっこんでくれる二人がいると居心地がいいんです」
岸「ボケ「気質」じゃないですよ、本能の「ボケ」です(笑)」
石井「そう?(笑)それを生かしていただいているから、心地いいんですよ」
橋本「カズは突っ込んでもらわないと、危ない感じだもんね(笑)」
石井「ソロ・コンサートで一人で喋ってると、ボケてるつもりでも会場が「シーン」みたいな(笑)。でもここだと、それをビビッドに拾ってくれる二人がいるので、新しい景色を見させてもらってる。楽しいです」
岸「僕はさっきも言ったように二人のことを尊敬していて、思えば初めて『ミス・サイゴン』でご一緒したのが2003年だから13年経っているけど、年を経ることに人間としてどんどん好きになっていって、家族というか兄弟のような存在で、それがしっくりきてるんですよ。一方ではライバル同志でもあり、そんな僕ら3人Mon STARSコンサートで集まると自分でも無限の可能性があるように感じられて、さらにそれをお客様と共有することによって何が起きるかわからないという感覚になります。それがカズさんの言う新しい景色ということなのかもしれないし、今もすごく楽しみです。3人集まると何かが起きるこの会を、僕は生きてる間ずっと続けていきたいという感じがしています」
橋本「生きてる間!(笑)」
岸「40代半ばで始めた「おじさんの全力」を見ていただいて(笑)、みんなで盛り上げていただければ。あと、今後いろんな層にアピールするという意味で、Mon STARSがアニメの主題歌を歌って紅白を目指すとか、僕スポーツが好きなんで野球とかサッカーの国際試合で『君が代』を3人で歌ったりといったこともできたらいいですね」
橋本「あれ、緊張するらしいよ。全方位から見つめられる中で歌うから。歌詞間違えたらたいへんな非難受けるし(笑)」
岸「僕の出身の、戦隊ものの主題歌とかもやってみたいですよね。そういう活動を通して、ミュージカル界にとっても何かの起爆剤になればと思います」
「cube三銃士Mon STARSコンサート」2015年公演より。撮影:江熊麗志

「cube三銃士Mon STARSコンサート」2015年公演より。撮影:江熊麗志

――Mon STARSコンサートはお三方のファン、ミュージカルファンももちろん楽しめますが、それだけではもったいないような気がします。もし「行くぞ」と決めたお客さんが誰か連れてくるとしたら、誰を連れてきてほしいですか?

石井「このコンサートは老若男女が楽しめると思う。ミュージカルファンだけしか楽しめない作りにはなってないので、全然関係ない人に来てほしいよね」
橋本「お子さんとか連れてきていただいて、「あ、ミュージカルも観てみたいな」と思っていただけるといいですね。「これ、ミュージカルの曲か。作品も観てみようか」となれば、僕らなりの責任も果たすことができると思うし。若い方が観に来たとしても昔の歌謡曲を聞いて「こういう曲あるんだ~」とか、自分の中の世界観が広がるきっかけになればいいし。だから僕としてはあれだな、10代の若い女の子にいっぱい来てもらいたいな」
岸「10代の女の子って、急に飛びましたね(笑)」
石井「僕が思うに、男って、 “かっこいい男”にはあんまり関心がないんですよ。僕もそう。だけど、例えば福山雅治さんはもちろんかっこいい方ですけど、実はラジオでめっちゃ下ネタ話していたりして全然かっこつけてないと聞いて、それならライブに行ってみようかな、と思ったりするんです。僕らのコンサートにも「かっこつけてる男が嫌いな人」に来てもらえると、親近感を覚えてもらえるんじゃないかな。ちょっとダサいところもありつつ、意外にこの男たちは男から見てもアリかなと思ってもらえるのでは。若い女の子に来てほしいリーダーとは違う視点から、そう思います(笑)」
橋本「この野郎!(笑)」
石井「いやいや、いろんな観点があったほうがいいかなと思ってね(笑)」
橋本「でも前回は実際、ほどんとが女性のお客様だったけど、福山さんは男性だけで何万人も集めちゃうわけでしょう?僕らもそういうことができるようにしたいね」
石井「いいね」
橋本「3人ぐらいしか来ないかもしれないけど」(一同、爆笑)
岸「「行こう」と決めたお姉さまたちが、旦那さんを連れてきていただけると嬉しいですね。そしてお子様たちも。(橋本さんを見やりながら)10代の娘さんならなおのことよろしいと思います。僕自身は20代がいいんですけど(笑)」
橋本「俺は裸の王様か!」(一同、笑)

*****
終始、笑い声の絶えなかったひととき。「話、尽きないよね~」と言いつつ立ち上がったお三方は実にリラックスした素敵な表情で、このユニットがミュージカル・ファンにとってのみならず、いかに彼ら自身にとっても「奇跡的な」出会いであるかが感じられます。ミュージカル・ナンバーの魅力を卓越したボーカルで、しかもふんだんな笑いとともに届けてくれるMon STARSコンサート。地方公演はまだ残席もあるようですので、ミュージカル・ファンの裾野を広げる意味でも、パートナーやお子様とお出かけになってはいかがでしょうか?

公演情報*「cube三銃士 Mon STARS Concert ~Returns~」2月11~14日=東京グローブ座、3月1~2日=サンケイホールブリーゼ、3月3日=ももちパレス ゲスト 一路真輝(2月11日、3月3日)、霧矢大夢(2月12日)、壮一帆(2月13日)、シルビア・グラブ(2月14日)、安蘭けい(3月1~2日)
お三方への過去のインタビュー記事(プロフィールを含む) 橋本さとしさん石井一孝さん岸祐二さん
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