■厚生労働省:ジカウイルス感染症患者の発生について
※2016年3月現在、パスツール研究所などのグループによる研究結果により、手足のまひなどが出る難病、ギラン・バレー症候群の発症との関連が疑われています。
■ギランバレー症候群の原因・症状・治療法
ジカ熱とは
ジカ熱の名前の由来は、ウガンダのZika(ジカ)森林です。感染症の原因となるジカウイルスが、そこに生息するアカゲザルから1947年に初めて発見されました。発熱と発疹を特徴する病気ですが、80%の人は感染しても症状の出ない不顕性感染で済みます。ジカ熱は、2007年にミクロネシア連邦のヤップ島、2013年にフランス領ポリネシア、2014年にチリのイースター島、2015年にブラジルおよびコロンビアを含む南アメリカ大陸で流行が見られています。
中南米への渡航者で感染が報告されていますが、特にブラジルは2016年にリオデジャネイロオリンピックを控えているため、問題になっています。
ジカ熱の原因は
蚊が媒介になる感染症です
主にウイルスを人から人へ媒介するのは蚊で、デング熱と同様、ヤブカの一種であるネッタイシマカ、ヒトスジシマカの2種類が確認されています。ネッタイシマカは日本には常在していませんが、ヒトスジシマカは日本のほとんどの地域で見られます。刺されてから3~12日で発症します。
感染すると血液中にもウイルスが存在するようになりますので、人どうしであっても血液や体液を介する濃厚な接触での感染(性行為など)も報告されています。
…デング熱の原因・症状・治療
ジカ熱の症状
多くの場合は感染しても症状があらわれませんが、代表的な症状としては下記が挙げられます。- 38.5℃以下の発熱
- 斑状丘疹性発疹(盛り上がって少し大きな発疹)
- 関節痛・関節炎
- 結膜充血
- 筋肉痛・頭痛
- 眼の後ろが痛い後眼窩痛
- めまい
- 下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振などの消化器症状
など
現在の流行地域(中南米)から帰国後に2週間以内に症状が出れば、ジカ熱の可能性があります。死亡例は少ないのですが、免疫不全の方は重症化し、致死的になることもあります。
ジカ熱は胎児に小頭症を起こす可能性がある
妊婦にジカウイルスが感染すると小頭症の危険が…
小頭症はどんな病気なのか
小頭症は名前の通り、頭骸骨が標準より小さくなり、脳の発達が未熟のままであったり、機能が悪くなったりします。日本でも知られている先天性風疹症候群や先天性サイトメガロウイルス感染症などでも見られます。胎児が母親の中で成長する過程でウイルスに感染すると、脳の発育が障害されたり、脳自体が破壊されたりして小さくなります。
妊娠初期では、生存できずに死産になることもあります。また、脳の発育があまりできていないために、出生後発達が遅れたり、生命維持に必要な脳の発達ができずに早期に死亡したりすることがあります。
2016年2月現在、小頭症に対する治療方法はありませんので、予防が重要になってきます。
ジカ熱を診断するには
まずは、流行地域への渡航があるかどうかを確認します。症状が出ている場合には血液検査を行い、遺伝子増幅法(PCR)でジカウイルス遺伝子(RNA)検出する方法、ジカウイルスに対して初期に出現するIgM抗体、感染初期と回復期の血液からジカウイルスに対する抗体の上昇などで診断されます。抗体検査の場合は、黄熱ウイルス・日本脳炎ウイルス・デング熱ウイルス感染でも上昇することがあるので、注意が必要です。遺伝子検査が有効と言えます。
ジカ熱の治療と予防
ジカウイルスに対する治療薬はありません。そのため発熱や関節痛、筋肉痛に対しては、鎮痛・解熱薬などの対症療法になります。脱水などがあれば、輸液を行うこともありますが、7日程度で症状は改善されます。予防は、現時点でワクチンはありません。蚊に刺されないようにする必要があります。流行地域では、以下のことを心がけましょう。
- 長袖、長ズボンを着用する
- サンダルなどの素足を避ける
- 虫よけスプレーを使用
- 民家の庭、公園、墓地、木陰やヤブを避ける
妊婦あるいは妊娠の可能性のある女性はジカ熱流行地への渡航を避けた方がよいでしょう。
日本でジカ熱が流行するかどうかですが、現在、海外からの旅行客が増えていますので、ウイルスを持った人が入国し、蚊に刺されることで拡大していく可能性があります。媒介の原因になる蚊は、日本でも生息していますし、感染者と濃厚な接触で感染する可能性もあります。
デング熱の日本での流行を考えると、決して対岸の火事ではないと思ってください。サーベランスと言う監視を行い、速やかにウイルスを持った蚊の駆除することが、現時点でできる公衆衛生の対策と言えるかもしれません。
■関連リンク
ジカウイルス感染症について(厚生労働省)
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