一人暮らし/一人暮らしの部屋探し

「大島てる」に聞く、実際にあった怖い事故物件

実は隠れているだけで、そこかしこに数多くあるといわれる事故物件。殺人や自殺、火災、孤独死など、様々な理由があります。事故物件公示サイトを運営し、数多くの事例を見聞きしてきた大島てる氏に「これはぞっとした!」と思った事故物件ベスト3をお伺いしました。

河野 真希

執筆者:河野 真希

一人暮らし・簡単一汁三菜レシピガイド

ワケあり物件専門家『大島てる』に聞く、ぞっとした事故物件トップ3

事故物件というものは、隠れているだけで、実はそこかしこにあるといわれています。前回『事故物件専門家「大島てる」に聞く、こんな部屋に注意』で、事故物件とは何か、またどうすれば部屋探しで事故物件を避けられるかなど、事故物件公示サイトを運営する大島てる氏に伺いました。今回は引き続き、数多くの事例を見聞きしてきた、てる氏に「これはぞっとした!」と思った事故物件を教えてもらいました。

事故物件

あなたの家も実は事故物件かもしれない…… イラスト/オギリマ サホ


第3位 床の下に死体!?予期できぬ事故物件

てる氏が「2015年のワースト」と教えてくれたのは、京都府N市の一戸建て。工務店を経営する男が自分の奥さんの遺体を、その当時工事を請け負っていた土地に埋めたと供述しました。自分が殺したと殺害をほのめかす主張もしているそう。これは12月に発覚したばかりの事件で、テレビや新聞などでも多く取り上げられたため、記憶に残っている人も多いかもしれません。

この事件の何が恐ろしいかというと、
「そこに住んでいた人は、事件にはまったくの無関係だったということ。せっかく新築の家を立てたのに、その床下に死体が埋まっているなんてことは誰も予期することができません。ローンを組んで購入していたとしたら、そのローンはどうなるのか…。将来のことを考えると、とても怖くなります」と、てる氏。

一人暮らしの人は賃貸物件に住むことが多いため、いざというときには引越をして逃げることもできます。でも、家を購入してしまった場合、そうは簡単にいきません。その後の事件の続報はまだないため、詳細がわかりませんが、そこに住んでいた人たちは今現在どうしているのか、買ってしまった物件の補償はされるのか、とても気になるところです。

第2位 ひとつの物件から、死者が立て続けに4人も……

次に上げていただいたのが、東京都A区にあるマンション。

「ひとつの物件で三回も事件が起こり、最終的に四人の人間が死んでいます」

その経緯を説明すると、まず最初の事件は2006年のこと。そのマンションの3階部住人同士が喧嘩をし、一方がビール瓶で殴って死なすという傷害致死事件が起こりました。その後、2009年には屋上で首つり自殺が発生。さらに、2010年にはその物件の大家であった女性が元住人かつ元夫である男に刺殺されるという事件が起こり、その後犯人は埼玉県で自殺した状態で発見されました。

その物件についてさらに詳しく伺うと、

「部屋数もそう多くない小さな物件です。その街全体の治安はごく普通で、事件や事故が特に多い地域というわけでもありません。それなのに同じ物件で数年内に事件が立て続き、それぞれの事件に関係性があるかというと、それもまったくない。関係がないのに、立て続くというのが、オカルト的で怖い物件です」

前回の記事でも書いたように事故物件でまた事故が起こるというのは非常にレアなケース。理由も関係もないのに、事故が立て続く裏には、その土地に何か呪い的なものがあるのではと疑ってしまいたくなります。

第1位 平気でウソをつく人間がいることが最も怖い

そして第1位として、あげていただいたのは

「横浜市■■区■■5丁目■■番■号の■■゛ー■■■゛マンション。この物件は2008年に死体遺棄現場となりました。しかし、その怖さは事故そのものというより、大家の行動です。その大家はこのマンションで起こった死体遺棄事件を隠すため、『大島てる』に掲載された内容の削除と謝罪文の掲載等を求め、訴訟を起こします。しかし、その結果は大家の敗訴。現在も情報は『大島てる』に掲載されています」

もしかしたら、この経緯を読んでも「それのどこが怖いの?」と思う方もいるかもしれません。

「この大家はお客さんに本当のことを言うつもりがまったくないんです。裁判を起こすには、当然費用がかかります。そんなお金を支払えるなら、家賃を下げて貸すことくらいできるはずなのに、そうしない。こんな人間がいることが本気で怖いと、私は思います」

こういう大家や不動産会社がいるということは、つまり知らぬ間に事故物件に住まわされている人もいるということ。

世の中には報道されていない事故も多くあり、『大島てる』のサイトだけが報じているものも数多くあるそうです。だから、その情報さえ隠してしまえば、何も言わず、家賃も下げず、損することなく貸してしまえる。そんなふうに考える人間は「決して珍しくない」とのこと。だからこそ、この事故物件公示サイトの存在意義があるのでしょう。

最近の事故物件の傾向は?

最近の事故物件の傾向をお伺いすると、「殺人事件のうち,親族間のものの割合が増えています」ということ。

その中でも印象的に残っているものの、ひとつめが千葉県M市の事故物件。2014年に93歳夫が83歳妻を老老介護する中で、病に苦しむ妻を見かねた夫が絞殺するという事件。昨年その裁判が開かれ、夫には実刑ではなく、執行猶予付きの判決が出たことがニュースになりました。「とにかく悲惨で、今後も同様の事件が増えそうです」。高齢化が進んだ社会だからこその悲しい事件です。

そして、もうひとつが神奈川県I市の事故物件。2013年に40年近く連れ添った妻が夫をマグカップで殴り死なすという事件が起こりました。重なる浮気や酒癖に腹を立てたゆえの犯行だったとか。「凶器が珍しい例として印象的」。ちなみに、他にも珍しい凶器には「そば打ち棒」「漬物石」「お尻で窒息させて殺害」などがあるそうです。

こういった親族間の事件は、高齢化による老老介護や長引く不況などがその理由に挙げられることが多いですが、外から見えにくい親族間の問題は一言でいえるほど簡単なものではないようです。

事故物件、どうして隠そうとするの?

「2014年、アパマンショップホールディングスで自殺があった部屋を入居者に告知せず、貸していたことがわかりました。自殺や殺人、火災などで人が死亡した心理的瑕疵(心理的な欠陥)がある部屋の場合、貸し主(大家)は借り主(入居者)に事前に告知する義務があるため、告知義務違反にあたります。」と、てる氏。

このニュースが掲載されたサイトのコメントには「正直に自殺があったと言えばいいのに」「家賃が安いなら、住みたいと思う人もいるんじゃない」といったものが多くあったと、てる氏は言います。でも、それはあくまで借りる側からの感覚であり、大家や不動産会社からすれば「家賃は下げたくない」「損してなるものか」と、事故物件であることを隠ぺいしようとするのだそう。

てる氏が事故物件公示サイトを始めたのは、「そういったズルい大家や不動産会社に一言物申したい」という強い思いから。事故物件だと知れば、タダでも住みたくないという人の方が多いものです。でも、その事実を知らない上に、高い家賃のまま住まされてしまう人がいるのは許されることではありません。『大島てる』の存在によって、借りる側ばかりが損をするケースが少なくなることを願います。

※編集部の判断により、大島てる氏の発言を一部非公開としております。

■事故物件公示サイト運営・管理人・大島てる
大島てる

映画『残穢【ざんえ】 ―住んではいけない部屋―』とコラボ経験のある大島てる氏

事故物件公示サイト『大島てる』
www.oshimaland.co.jp/を運営。
監修本『大島てるの絶対借りてはいけない物件』(主婦の友インフォス情報社)

現在公開中の『残穢【ざんえ】 ―住んではいけない部屋―』とコラボ中の大島てる氏。住人達に次々と事件や事故が起こる、いわゆるワケあり物件。その謎を解いていくと……気になる物語だけれど、部屋探しが怖くなってしまいそう!?

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