花開く若者たち

名門の家に生まれ、生まれながらにして歌舞伎俳優として育てられた若者たち。
10代のころには「ほかの道はないのだろうか」と進路に悩む人もいれば、小さな時から歌舞伎が大好きでたまらない人もいますが、20歳すぎて歌舞伎役者になろうと決断をしたあとはその成長たるやめざましく、見ていてすがすがしささえ感じるほどです。

まだまだ若くて大きな役にはつけないので露出も少ないのですが、しっかりと修行を積みながら、確実に実力をつけている彼ら。将来の歌舞伎を担う20歳代の6人の若者たちに注目です。(生年月日順)


顔よし、素質よし、口跡よし!の真摯な花形
中村歌昇

■1989年5月6日生まれ。1994年初舞台。

父は中村又五郎。中村米吉・龍之介兄弟とは従兄弟にあたります。父の中村又五郎は、年配の方ならNHK大河ドラマの上杉謙信の子役をやった「中村光輝」といえばわかりやすいかもしれません。4歳下の弟・種之助も才能があり、良き仲間でありライバルでもあります。

2013年にはオンワード樫山「五大陸」アンバサダーに選ばれ、2015年にはテレビドラマ「下町ロケット」(アジア医科大学の研修医・葛西役)にも出演し、注目を集めました。

非常に整った顔立ちで、口跡もさわやかで父親譲りの役者としての素質も十分。2011年に四代目中村歌昇を襲名後は、南座、金丸座、博多座で「俊寛」の成経などを好演しました。すでに家庭もあり、落ち着いた環境でこれからの活躍がとても楽しみです。


明るいなにくそキャラの実力派
坂東巳之助

■1989年9月16日生まれ。1991年初お目見え。1995年二代目坂東巳之助を襲名し初舞台。

父は、踊りの名手・坂東三津五郎。母は元宝塚歌劇団雪組&花組男役の寿ひずる。なんともすばらしい血筋ですが、残念ながら両親は巳之助がわずか7歳で離婚し、父、坂東三津五郎は2015年2月に他界しています。

父の指導のもと、時代物、世話物、舞踏など、どの分野でも力をつけてきたのは、才能によるものか、努力によるものか。おそらく両方なのでしょう。

親であり師匠でもある父を亡くしたことは、巳之助にとって大きなショックであったことは紛れもありません。公式の発言としてはもちろんしっかりと語っていますが、ブログでは
俺が元気だっつってんだから俺は元気なんだよ!って事です。(2015年2月のブログより)
と本音も。周りからの同情心や好奇心を突っぱねて、前に進める強さがある役者さんです。

2015年のスーパー歌舞伎セカンド「ワンピース」では非常にエキセントリックなボン・クレーのほかロロノア・ゾロ、スクアードと3役を見事にこなし、喝采を浴びていました(尤も歌舞伎役者が全く性格の異なる二役三役を同じ日に演じるのは、当たり前ではあります)。

ガイドがワンピースレポートの中で「立ち回りのときの腰が非常にしっかりしており、演技の基礎ができていることを実感させられます。なおかつ、リズミカルで軽やか」と書いたのは、若い歌舞伎役者全般に対しての感想でしたが、最もそれを感じたのは坂東巳之助でした。明るいムードメーカー的役割でチーム全体を牽引する力もある巳之助。なにくそキャラの実力派として、立役、舞踊、女方もこなし、今後の歌舞伎界に欠かせない逸材です。

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スーパー歌舞伎ワンピースでは、歌舞伎にも演劇にも興味のなかった層にもファンを増やした


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