ノロウイルス感染の原因は?
毎年冬に猛威を振るうノロウイルス
ノロウイルスへの最大の感染源はノロウイルスが付着した食品を食べてしまうことです。食品の鮮度は関係なく、ノロウイルスが食品に付着しているかどうかが重要です。そのため、ノロウイルスに感染している人が手洗い不十分なまま直に食品に触ってしまうと、ウイルスが食べ物や皿に付着し、感染が広がる場合もあります。
また、ノロウイルスの原因にカキから感染することが知られています。これは、下水に流れたノロウイルス感染者の便が下水処理を経ても生き残ったまま河川に流れ込み、海に到達することが原因です。カキなどの貝類は、海水を体内に循環させて食物を摂取していますが、ノロウイルスに感染した水分が体内で循環することで、体内にノロウイルスが蓄積・濃縮されます。そうして汚染されたカキを加熱調理せずに食べることで、ノロウイルスによる食中毒が発生するのです。
ノロウイルスの主症状は?
ノロウイルスの主症状は嘔吐(おうと)・下痢(げり)・吐き気・腹痛、その他に強い関節痛や筋肉痛で、嘔吐や下痢は1日数回から、ひどい時は1日10回以上になることもあります。発熱や悪寒(おかん)を伴うこともありますが、発熱は37度から38度のあいだ程度で、それほど高熱にはなりません。一般的に3~4日で症状は治まりますが、脱水症状や食事量の減少などにより、体力が低下し症状が長引く場合もあります。防衛体力が低い乳幼児や高齢者では、状況により重症化する場合があります。感染してから発症するまでの潜伏期間は約24~48時間と、感染から短時間のうちに発症することも特徴でしょう。
症状がなくなっても油断できないノロウイルス
ノロウイルスの特徴として、症状がなくなった後も体内にウイルスが残留し、小児は約1カ月(以上)、成人でも約3週間(以上)もの間、便中にノロウイルスが存在することが明らかになっています。そのため、トイレの後に手をしっかり洗わない、トイレの水を流す時に便器のフタを閉めないなどをすると、容易に周りの人に感染を広げてしまうことになります。症状が治まるとどうしても気を緩めがちになりますが、こうしたノロウイルスのしぶとさから、症状がなくなってから1カ月程度の間は、油断は禁物です。以前はノロウイルスの検査は時間も費用もかかるため一部の医療機関でしか実施されていませんでしたが、近年では安価かつ短時間で済む検査が開発され、より一般的に検査が行えるようになっています。また、重症化の可能性が高い3歳未満、65歳以上の方等は健康保険を利用して検査を受けられるなど、より身近な疾患として扱われるようになってきていると言えます。
ノロウイルスには効果的な治療法がない
検査はより一般的になりましたが、ノロウイルスの症状を軽減したり、治癒する効力のある薬品は開発されていません。一度症状が発生してしまったら、水分と栄養を補給しながらひたする症状が治まるまで耐えるという対症療法を行います。代表的な予防方法としては、手洗いの徹底や食品を加熱すること、マスクの着用が挙げられますが、どこにウイルスが潜んでいるかわからないため、なかなか予防も難しい、というのが現状です。
こうしたノロウイルスの特性を踏まえ、東洋医学からノロウイルスについて考え、その予防方法や症状の軽減方法を紹介していきます。
東洋医学から考えるノロウイルス
ノロウイルスには、12月から1月の冬季に流行がピークになるという特徴があります。東洋医学の世界観では、冬には身体を守る役割をしている陽気(ようき)の働きが衰えると考えられています。こうなると陽気の対極の存在である陰気(いんき)の力が強くなり、陰の属性を持つ寒(かん)が体内にとどまりやすくなります。通常であれば体内には陽気と陰気が循環しバランスをとっているのですが、寒さが過剰になるとそのバランスが崩れてしまうのです。特にこの寒がお腹にとどまってしまうと、お腹に刺しこむような痛みや嘔吐、下痢が発生するとされています。さらに食物から得る栄養や水分を全身に循環させる脾臓や胃のエネルギーが寒によって遮られると、栄養が全身に行き渡らずに、栄養失調や脱水症状が発生すると考えられています。
このように考えると、ノロウイルスは東洋医学の観点では、寒の気の過剰な体内への侵入であると考えることができます。
ノロウイルスの予防、症状軽減に効果的なツボ
■大椎(だいつい)大椎は陽気の入り口
大椎にお灸を行うと、全身の陽の気を補充し、身体を温めることができると考えられています。大椎は、うつむいた時に首の後ろで最も突出して感じる首の骨の指一本分外側で、左右両側に存在しています。
また、この付近はノロウイルス罹患時に関節痛や筋肉痛が発生しやすい部位でもあり、お灸を行うことで血液の循環を促し、痛みを軽減する効果もあると考えられます。
■気海(きかい)
気海は気が湧き出る海と言われている
身体を温めることと並んで、邪気によって損なわれてしまった身体の気自体を回復させることが大切です。気海(きかい)は次の通り、気が湧き出る海であると考えられており、へその指二本分真下の位置にあると考えられています。
ここを女性は右手、男性は左手を下にして両手を重ねて優しく押し込むと手のひらにある労宮というツボから気が充填されると考えられています。また、気海にお灸をすることも、体内にとどまっている寒の気を体内に追い出す効果があると考えられます。
手洗いやうがいにプラスして、今回ご紹介したように身体の気を整えることによるノロウイルスの予防もぜひお試し下さい。