ツボを日常生活で使いこなすためには、そのベースとなる東洋医学の思想の根幹を成す「陰陽(いんよう)」と「五行(ごぎょう)」を理解する必要があります。じつはこれらは意外なところで現代に息づいています。歴史や地名、生活のなかに見る「陰陽(いんよう)」と「五行(ごぎょう)」についてふれながら、その考え方を解説していきます。

生活や歴史に見る陰陽と法則

完全な調和を表すともされる陰陽の図

世界にある全てのものが陰陽で成り立つとされる

「陰陽」は、この世界にある全てのものを陰と陽という対立する2つの性質に大別するものです。
例えば
  • 女性は陰、男性は陽
  • 精神は陰、身体は陽
  • 寒いは陰、暖かいは陽
  • 柔らかいは陰、硬いは陽
  • 下半身は陰、上半身は陽
  • お腹は陰、背中は陽
といったように考えます。もともと私たちの住むこの世界も、陽の気が上昇し空に、陰の気が下降して大地となったとされています。

この陰陽の思想では、
  • 「陽なくして陰なし、陰なくして陽なし」
  • 「陰が減少すれば陽が充実し、陰が充実すれば陽が減少する」
  • 「陰が極まれば陽に転じ、陽が極まれば陰に転ず」

という法則が成り立ち、互いが存在することで己が成立するという相互依存関係のなかで全ての現象・事象が存在すると考えています。
  
これら陰と陽の相互関係は身近なところでは朝から夜の移り変わりや春夏秋冬などの四季の変化といった自然現象や、寒くなると熱が出て、熱があがると寒くなるという風邪に見られるような現象も例として挙げられます。

また、腰部の筋が硬くなって起こるタイプの腰痛は陰である腹部の筋肉の力が減少し、陽である背部の筋が充実しすぎてしまっていることを表していたり、頭痛などは陽が頭に充実しすぎていると考えたりします。

他にも、数字の9は陰であり8は陽であり、この2つの数字を足した17という数字は完全な調和を示すとされ、聖徳太子が制定したと言われる『十七条憲法』や足利尊氏が制定した『建武式目(けんむしきもく)』が17条から構成される理由とされます。

また、数に違いますがありますが、京都にある龍安寺の石庭には陰を表す7と陽を表す8を足した15個の石が配置されており、15個全てを同時に見ることはできないように配置されています。これは世界に完全なものは無い、というメッセージであると言われています。

五行の性質は現代社会に生きている

一方で「五行」は、世界の全ては「木・火・土・金・水」の5つの要素で構成されているとするものです。五行は世界に存在するすべてにその性質をあてはめることができるとされ、方角や色をはじめ身体の各部位や内蔵、感情、季節、味などあらゆる身近なものがそれぞれの性質に分類されています。

例えば
  • 東は木、南は火、中央は土、西は金、北は水
  • 青は木、赤は火、黄は土、白は金、黒は水
  • 胆のうは木、小腸は火、胃は土、大腸は金、膀胱は水
  • 怒りは木、喜びは火、思考することは土、憂いは金、恐れは水
  • 酸っぱいは木、苦いは火、甘いは土、辛いは金、しょっぱいは水
などというようになっています。

身近なところでは、曜日や惑星の名前なども五行に由来していて、そのままの名をつけられています。また、目黒や目白といった地名は五行に対応する方角と色をもとに、それぞれの土地に奉られた不動尊にその名を付けたものであり、目黄や目赤といった不動尊もあまり知られてはいませんが存在しているのです。また、風水で言われる「鬼門の方角」なども五行の思想が反映されていると言われています。

食べ物に目を向けてみると、「五目焼きそば」や「五目チャーハン」などがありますが、「五目」とは五行から由来した言葉であり、「五行全て含まれている」すなわち「いろいろなものが入っている」という意味合いで使われていると言われています。

五行の法則とツボへの応用

五行思想では全てのものは「木火土金水」で成り立つとしている

五行の相生相克サイクルを示す図

五行の押さえておくべき点として「相生関係(そうしょうかんけい)」と「相克関係(そうこくかんけい)」という代表的な性質を持っています。

相生関係
  • 木が火を生み
  • 火が土を生み
  • 土が金を生み
  • 金が水を生み
  • 水が木を生む
というサイクルを表しています。
 これは「母子関係」とも呼ばれ、ツボを用いて身体におきた症状を改善しようとするときに知っておきたいルールです。例えば胃の調子が悪い場合を例にとると、胃は五行では土に割り振られているため、その親にあたる火の性質を持つ小腸、もしくは子である金の性質を持つ大腸のエネルギーが流れるツボを刺激すると胃の調子が良くなる、といったように考えます。

■相克関係
  • 木は土に克ち
  • 土は水に克ち
  • 水は火に克ち
  • 火は金に克ち
  • 金は木に克つ
 それぞれの性質がもつ力関係のサイクルを表しています。こちらも同様にツボを利用する場合のルールとなるもので、再び胃を例にとって考えると、胃の働きが活発になりすぎておこる症状などに対しては、土の性質に克つ存在である木の性質を持つ胆のうのエネルギーを持つツボを刺激し、胃のエネルギーを抑えることができるとされています。