2007年あたりから「200年住宅構想」の話題がマスコミなどでも大きく取り上げられるようになり、その後2009年6月にスタートしたのが「認定長期優良住宅」の制度です。

マンションでは「認定長期優良住宅」の導入がなかなか進んでいないものの、一戸建て住宅では2015年12月末までの累計認定戸数が65万戸あまりとなりました。

この長期優良住宅の認定基準は主に住宅の性能に着目したものですが、ここでは「住宅敷地の問題」について少し考えてみることにしましょう。

当初いわれていた「200年住宅」というのは、きっちり200年間維持することができるという意味ではなく、あくまでも長寿命住宅の概念だったわけですが、それはともかくとして「これから200年後まで残る住宅にふさわしい敷地とは何か」といった議論が後回しにされているように感じられるのです。

明治以降、とくに昭和の戦後~高度成長期以降の住宅は、土地の細分化の歴史だといってもいいでしょう。大都市部では狭小住宅も珍しくなく、バブル期には東京で敷地面積が10坪未満の一戸建て住宅も少なからず分譲されていました。

それは極端な例だとしても、15坪~20坪程度の小さな敷地や、いびつな形に分割された敷地などは現在の新築住宅でも少なくありません。

また、再開発などが進んだマンションの比較的大きな敷地でも、もとの地主の一部が用地買収に応じなかったために、一角だけが変則的に取り残されている例もみられます。

しかし、それほど遠くない将来に大都市でも人口減少が本格的になれば、土地の細分化の歴史は終わりを告げ、隣地買収などによる個人レベルでの土地の再統合が進んでいくことも十分に考えられるでしょう。

人々の土地に対する意識も大きく変わっていき、これから200年後の23世紀になれば、おそらく現代とはまったく異なる様相をみせているはずです。

そう考えると、「今後200年先まで存在し続けるような長寿命住宅を建てられては困る」という敷地だってあることでしょう。

地震や豪雨など自然災害に弱い敷地、大規模火災などで延焼リスクの高い敷地、防災上の支障になるような敷地、広範囲の再開発や区画整理などが不可欠な敷地などの場合でも同様です。

もちろん住宅の長寿命化は必須の課題ですが、ずっと長く残していく住宅にふさわしい敷地とは何か、長寿命住宅に求められる「宅地性能」とは何かを、将来の住宅像を見据えながら十分に議論することも決して疎かにはできません。

その一方で、長寿命住宅にふさわしい建築行政も重要です。

日本の住宅寿命を論じるとき、必ずといっていいほど欧米の数値が出され、それに比べて日本の住宅寿命は短いので問題だ、といった結論になっています。

たしかに、新築してから20年や30年ほどの短期間で取り壊されたりすれば、コストの浪費ばかりでなく、貴重な資源の無駄遣いにもなるでしょう。

最近では建築に伴う二酸化炭素排出量の問題なども大きくなり、住宅寿命を延ばすことの重要性は誰も否定することができません。

しかし、住宅寿命を考えるときには単純に欧米と比較するだけでなく、日本が突出した地震国であるという事実と、それを背景にした建築行政の変遷も加味しなければならないでしょう。

昭和56年に施行された改正建築基準法により、現代の建物は「新耐震基準」とされる一方で、それ以前の建物は「旧耐震基準」として「耐震改修工事をしなければ危ない建物」のようなイメージが強められています。

実際には旧耐震でも安全な建物、あるいは逆に新耐震でも危険な建物があるわけですが……。

ところが、地震のメカニズムについてまだ十分に解明されたとはいえない状況です。これから数年後、あるいは数十年後に新たな事実が明らかとなり、現在の「新耐震基準」がさらに強化、改正されることもあり得るでしょう。

そうすると、いま建てられている住宅も一斉に「旧耐震建物」となり(いまの「旧耐震」は「元耐震」でしょうか) 、改修工事の必要性に迫られたり、流通性が大きく阻害されたりすることも考えられるわけです。

そして、再び新築志向が高まったり、建て替えが検討されたりして、結果的に住宅寿命を縮めることにも繋がりかねません。

さらに、2020年には住宅に対する新しい省エネ基準が義務化される予定となっています。現在はこれに適合しない新築住宅も多く建てられており、それらは改修しないかぎり「旧省エネ基準建物」となるのです。

基準の改正によって住宅寿命に影響が及ぶことがないように、200年後でも通用するような建築基準をしっかりと議論することや、仮に基準が変わっても容易に対処できるような建築技術の開発なども不可欠です。

長寿命住宅を普及させることだけでなく、長く適用し続けることのできる建築行政の確立も必要なのではないでしょうか。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2008年1月公開の「不動産百考 vol.19」をもとに再構成したものです)


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