省エネで忘れがちな照明の質
照明には数量化して評価しにくい雰囲気や演出効果などを表す、光の質が一方で問われます。このことは照明専門家でも一般の生活者に対して説明しにくいところです。そこで照明の質に関係し、数量化の可能な演色性、光色だけでも従来照明と同等か、もしくはそれ以上であるかを確認する必要があります。
演色性は色の見え方を表す光源の性質です。現在、一般的に活用されているのが国際照明委員会(CIE)で基準化されている平均演色評価数です。Raで数量化され評価していますが、Ra100が最高値で自然の色に見えることを意味します。
住宅照明ではJISの基準でRa80以上が推奨されています。従来、白熱灯で照明されている家庭では、白熱電球がRa100 なので、もしLED照明に変える場合は温かな光色(電球色)で、Raがより100に近い評価数を持ったLED光源で照明しないと同等の効果とは言えないことになります。
LEDは現在、技術的に進化しており、演色性も改善されています。初期のものはRa70にも満たなかったものが、今では80以上は普通で、90を超えるものも少なくありません。
またRaの数値は少し低くても、見た目の色が鮮やかだったり、好みの色具合に強調して見えたりするLED光源 も開発されています。
そのため演色性はRaとは別の評価法の研究が進んでおり、一部のメーカではその数値がRaと併記して紹介されています。この評価法はまだ基準化するレベルに達していないため、あくまでも参考値になっています。
内装や家具、調度の色が自然に見えたり、綺麗に見えたりすることは空間の質を高めます。
写真1. 同じキッチンでも光色を変えると雰囲気がガラッと変わる
同時に、光色を変えることで雰囲気が変わる照明も従来光源では難しかった技術で、演出効果を高める点でポイントが高いです。
写真2. 写真1の光色は、写真2の右下にある調色コントロールスイッチで簡単に操作できる
日本の家庭用電気料金は世界的に高いといわれていますが、ヨーロッパの主要国に比べるとさほどではありません。しかしアメリカやカナダに比べると、現状でも倍ほど高いです。
1980年代、アメリカの家庭照明は白熱灯を主体におよそ30W/平方メートルが普通で、消費電力の削減を意図的に考慮した家でも15~20W/平方メートルでした。
しかし電気代が安いので、さほど気にすることなくランプ効率の悪い、しかし照明の質の高い光源による一室多灯照明を楽しんでいる背景がありました。実際、アメリカのロス在住の照明デザイナーに聞いてみたところ、夫婦2人での生活でかかる電気代は月平均で3000円台だそうです。
現在家庭の消費電力のうち照明に使用される電力を仮に15%とすると電気代が月一万円の家庭では、照明で1500円の電気代がかかっている計算になります。
いま日本の家庭でのLED照明普及率は25%くらいとされており、経済産業省では30年度までにLED照明の100%普及を見込んでいるようです。
その頃は多灯分散照明で、平均5W/平方メートルくらいの家が増えてくると思います。今後、極端に電気料金の高騰がなければ、ひと月1000円以下の照明費の実現が可能になります。さらに主要な部屋はセンサーや調光機能によるこまめな制御を行うことで、雰囲気を高め、さらなる電力費の低減が見込まれるでしょう。
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