小柴胡湯のほか、健胃、消炎作用のある生薬を処方されている
漢方の基本は患者の症状に寄りそうこと
(一)は健胃薬で、(二)は生薬の配合から「小柴胡湯」であるのがわかります。(三)の黄柏は尿の混濁にも用いられる漢方です。漢方薬の詳しい説明は、ポケット漢方辞典「小柴胡湯」にありますが、小柴胡湯は胃炎や胃潰瘍、肝炎、胆のう炎、風邪などに用いられる処方です。具体的にどのような症状がある時に適しているか例をあげてみましょう。□胃がむかむかして吐き気がする
□口が苦い、ネバネバする
□胸脇が痛む、かたい
□食欲が落ちる
□イライラして眠れない
□微熱が続く
□視力が低下する
実は小柴胡湯は、前ページで紹介した糖尿病で処方される漢方の代表例ではありません。ただし、漢方はそのときの体調や体質に合わせることを重視します。そして一番の糖尿病の怖さは合併症です。
長い間適切な治療をしていなかったり、無理をして病気をこじらせたりすると、さまざまな合併症を引き起こし、それが死亡の引き金となってしまうことが少なくありません。
五代氏の主訴は画面だけでは確定できませんが、上記のような不調があれば、糖尿病による免疫力の低下で風邪になった後期の症状や、気力体力不足による胃炎の可能性もあります(追加記述:彼は大酒のみだったとのことで、アルコール性肝炎と糖尿病の合併症の説があります。そう思うと理解できそうです)。
ちなみに長い間糖尿病を患っていると、リンゴの腐ったような臭いがしたり、肌の色がくすんで黒っぽくなり、痩せこけてきます。何が辛かったのかは五代本人に直接たずねるのが一番でしょうが、少しでも彼の苦しみに寄りそった時間を共有できた気がしました(合掌)。