数奇な運命をたどったカラヴァッジョ
日本でもよく知られた稀代のイタリア人画家カラヴァッジョ。短い生涯の中で残した貴重な作品の数々は、ルーブル美術館やニューヨーク・メトロポリタン美術館をはじめ、イタリアではローマのバチカン美術館やボルゲーゼ美術館などに収蔵されています。1571年にミラノで生まれたカラヴァッジョは、その類まれなる才能とは裏腹に、素行に問題があったようで16世紀後半にはローマへ逃れ、そしてナポリへ。さらにマルタ島まで行き、ローマ時代に親しくした芸術家の友人が住むシチリア・シラクーサへ渡りました。各地で名声を浴びる作品を残しながらも、一方では喧嘩が絶えず、傷害罪などで追われる人生を送ったと言われています。
シチリアで観られるカラヴァッジョの作品
シチリアに滞在していたのは、1608年の終わりごろから約1年ほど。シラクーサ、メッシーナに作品を残しながら移動をし、州都パレルモにも滞在しました。シチリアを後にし、ナポリでしばらく滞在した後の1610年7月18日に死去。死因には諸説ありますが、いずれにしても、たった39歳の若さでこの世を去ってしまったわけです。シチリアに滞在中、つまり死去のほんの数年前に描かれた作品は、以下の通り。カラヴァッジョの他の作品とは趣が異なり、素朴さと人間の優しさが現れていると言われています。
・シラクーサ 「聖ルチアの埋葬」(1608~1609年)/ドゥオモ広場サンタ・ルチア・アッラ・バディア教会
・メッシーナ「ラザロの蘇生」「羊飼いの礼拝」(共に1609年)/メッシーナの州立美術館
そして、シチリア最後の地パレルモには、「キリストの降誕」(1609年)が、サン・ロレンツォ礼拝堂にありました。……と、過去形なのにはワケが。この貴重な祭壇画は、何者かによって1969年に盗まれてしまったのです!
最新技術で複製したデジタル・カラヴァッジョ?!
そのカラヴァッジョの貴重な絵画が、2015年末、なんと! 最新デジタルテクノロジーを駆使した印刷技術を用いて複製され、元あった場所に展示されました。オープニング当日は、パレルモ人的にもとても悲しく恥ずかしい盗難事件でもあるため、現イタリア共和国大マッタレッラ大統領(パレルモ人)までもが、喜びと共に訪れるほど(2016年には、「カラヴァッジョ盗難の闇」と題した複製までのドキュメンタリーがSKYで放送されるそう)。本物ではありませんが、セルポッタの見事な漆喰で埋め尽くされた礼拝堂にポカンと口を開けていた正面祭壇に、まとまりがついた……といった雰囲気でしょうか?! その美しい漆喰芸術を見るだけでも価値があるサン・ロレンツォ礼拝堂。パレルモ旧市街を訪れる際には、のぞいてみてはいかがでしょう?
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■Oratorio di San Lorenzo サン・ロレンツォ礼拝堂
住所: Via Immacolatella, 3, Palermo PA
電話:091 6118168
オープン:10時~18時 不定休
料金:2ユーロ(カルミネ・マッジョーレ教会見学共通チケット)
アクセス:パレルモ旧市街サン・フランチェスコ・ダッシジ教会横。クアットロ・カンティから徒歩7分
※料金は予告なく変更になる場合があります。