勃起は、性的刺激を受けた脳の指令でペニスの動脈が広がり、海綿体が血液で満たされることで起こります。つまり、血管や血流と非常に深い関係にあります。

しかし、血管がなんらかの原因で傷ついたり、硬くなったりすると血流が抑えられるため、十分な勃起を得られません。その状態がED(勃起不全)です。
つまり、EDの本質は勃つ・勃たないという現象ではなく、それを引き起こす「血管の病気」です。

血管を傷つけたり硬くしたりする原因の多くは、日々の生活習慣や嗜好品に潜んでいます。今回はEDを助長するいくつかのリスクファクターを取り上げてみました。
 

飲み過ぎると勃ちにくいのはなぜか

適度のアルコールは緊張をほぐすのに役立つが、飲み過ぎるのは逆効果

適度のアルコールは緊張をほぐすのに役立つが、飲み過ぎるのは逆効果

「酒は百薬の長」という言葉があります。「酒は飲んでも飲まれるな」という言葉もあります。適度の酒はどんな薬にも勝るが、度を超すのは良くないという戒めでもあります。

実際、少量のアルコールは大脳の働きを抑えるため、大胆な振る舞いを後押しします。「酒の上での話」が言い訳に使われるのもそのためです。しかし、飲み過ぎてしまうと、大脳に対する抑制が過度に働くため、性的な興奮まで抑えられてしまいます。

健康な人であっても、たくさん飲んだ時にうまくいかないのは珍しいことではありません。しかし、その失敗が元で不安が募り、心因性のEDに発展してしまうケースもあるので要注意です。

ED治療薬を飲んでも効かないという患者さんの相談を受けることがあります。たいていは薬が効かないのではなく、アルコールの影響による場合が少なくありません。

いくらED治療薬を飲んでも、大脳が性的に興奮しなければ勃起は起きません。過度のアルコールで興奮が抑えられれば、勃起しないことはよくあることなのです。くれぐれも飲みすぎには注意しましょう。
 

タバコの何が悪さをするのか

血管を傷つける作用のあるニコチンは、血管の病気であるEDにとって大敵

血管を傷つける作用のあるニコチンは、血管の病気であるEDにとって大敵

喫煙者ほどEDの発症率が高いのは事実です。喫煙が海綿体やペニスの血管の内皮に障害を起こすからです。米国の研究では、約9年間で中等度または完全EDを発症した喫煙者は、非喫煙者の2倍でした。ED患者の80%以上が喫煙者というデータもあります。

喫煙がEDを助長する最大の原因は、タバコに含まれるニコチンです。ニコチンには血管の収縮をはじめ、心拍数の増加、血圧の上昇、心筋収縮力の増加など、循環機能に関係するさまざまな作用があります。

血管の病気であるEDにとって、血管を傷つける喫煙は危険行為といっても過言ではないでしょう。健全な勃起を取り戻したければ、一刻も早く禁煙することをおすすめします。

実際、ヘビースモーカ―のED患者に1カ月禁煙させたところ、ペニスの膨張度と硬度が速やかに改善されたという研究報告もあります。

タバコには「百害あって一利なし」を肝に銘じましょう。
 

糖尿病とEDには因果関係はあるのか

生活習慣病の中でも、糖尿病と高血圧症は喫煙と並んで血管を大きく傷つける病気です。糖尿病になると血管内を糖分濃度の高い血液が流れます。糖分濃度の高い血液は毛細血管を傷め、そこを流れる血液から栄養や酸素を受け取っている神経も侵されます。

糖尿病になると血管が硬くなり、血流が低下するため、EDを引き起こしやすくなります。高血糖に長期間さらされ、海綿体に広がる神経が傷つけられると、脳の性的興奮がうまく伝わらないためにEDを招くこともあります。

わが国における糖尿病患者のED有病率は、非糖尿病と比べて2~4倍高いとされています。糖尿病性のEDは糖尿病の合併症と考えられています。

このほかにも、すでに触れた神経障害や網膜症、腎症などの糖尿病性合併症とも深く関係しているので、元の病気の治療に努めることが大切です。
 

高血圧症の人のリスクの高さは?

高血圧患者はEDを合併する頻度が高く、重症化しやすいのが特徴です。平均年齢59歳の高血圧患者を国際的な問診票「IIEF5」で判定した結果によると、EDの頻度は高血圧患者で67%、糖尿病患者で71%、糖尿病を合併した高血圧患者では77%でした。

米国の研究によると、ED患者が高血圧を合併する頻度が41.2%であるのに対し、非ED男性では19.2%でした。高血圧とEDとの間に深い関係があることが分かります。高血圧とEDの合併頻度が高い理由は、高血圧によって心血管合併症が発症し、その影響でEDが発症している可能性があるためといわれています。

高血圧症や糖尿病によるEDにもED治療薬が有効です。高血圧や糖尿病の治療薬と併用しても差し支えありません。ただし、病気の具合によっては注意を要する場合もあるので、医師の指導を受けるようにしてください。

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