悔しさや悲しみを凌駕した反骨精神
『ファントム』撮影:岸隆子
「4,5歳の頃だったと思いますが、当時中学生だった姉がキーボードを弾いていて、音楽に興味を持ちました。当時はスペインにいて、現地の幼児番組の歌からポップスまで、あらゆる音楽が好きで、幼心にマライア・キャリーの曲をかっこいいなと思ったりしたのを覚えています。でも「誰かになりたくて」目指した、といったことではなかったですね」
――10代に入って芸能界を目指したとき、ハーフの外見が逆にネックとなって、オーディションには100回以上落ち続けたのだとか。それでも諦めなかったその原動力は?
「最終的に「好き」という気持ちが勝ってしまうと、やるしかないんですよね。諦める選択肢があっても、あきらめたくないという気持ちが強いと、どれだけつらくても悲しくても、きついとわかっていても、挑戦し続けてしまうんです。挫折もしましたし、家で泣いたこともありますよ。一番オーディションを受けていたのは13~16歳ぐらいの頃でしたが、その年齢って精神的に成長している過程であって心が脆いし、大人に言われることを鵜呑みにする時期ですが、当時力を持っていた…あるいは持っているふうにしていた大人たちに、僕がダメな理由をいろいろ言われて凹みました。とくに容姿のことを言われましたが、悔しいという気持ちだったり、「なにくそ精神」が「悲しい」に勝って、「絶対いつか」「見返してやりたい」という気持ちもありました。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部
――その心意気は今も持ち続けている?
「はい、そういう感覚でしかエンタテインメントって作れないと思いますし、それこそ「地球ゴージャス」で五朗さんがやっていること、前例のないもの、新しいものを作って再演はしないというポリシーには共感します。ゼロからモノを作り上げることって難しいんですよ。もちろん、出来上がってるものの力を借りて自分たちなりにアレンジするとか、外国で人気のあるミュージカルを持ってきてやるということもできるけど、五朗さんがこだわっているのは、自分で、自分の伝えたいことをゼロから作る。それを信じてやり続けるってすごいエネルギーが必要なことだと思いますし、僕自身そういう感覚の人間なので、共感できるんです。僕自身、今後もそういう「前例のないこと」をやっていきたい。せっかく生きているんだから、簡単な道より険しい道を行ったほうが、たどり着く先では何倍もハッピーな気持ちや達成感を味わえるんじゃないかなと思っています」
*次頁では、ミュージカルにおけるいくつかの代表作について伺いました。