ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.32 城田優、「前例」は自分が作る(4ページ目)

岸谷五朗さんと寺脇康文さんが主宰し、95年から多彩なオリジナル演目を発表してきた「地球ゴージャス」。その第14弾公演『The Love Bugs』で新たな役どころに挑戦中なのが城田優さんです。黄泉の国の帝王から音楽の天使まで、これまでも演じる諸役を輪郭鮮やかに演じてきた彼ですが、今回はどんな魅力を発揮してくれるでしょうか?*観劇レポートを掲載しました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

悔しさや悲しみを凌駕した反骨精神

『ファントム』撮影:岸隆子

『ファントム』撮影:岸隆子

――城田さんは幼少時から歌に興味があったのだそうですね。どなたかからの影響があったのでしょうか?

「4,5歳の頃だったと思いますが、当時中学生だった姉がキーボードを弾いていて、音楽に興味を持ちました。当時はスペインにいて、現地の幼児番組の歌からポップスまで、あらゆる音楽が好きで、幼心にマライア・キャリーの曲をかっこいいなと思ったりしたのを覚えています。でも「誰かになりたくて」目指した、といったことではなかったですね」

――10代に入って芸能界を目指したとき、ハーフの外見が逆にネックとなって、オーディションには100回以上落ち続けたのだとか。それでも諦めなかったその原動力は?

「最終的に「好き」という気持ちが勝ってしまうと、やるしかないんですよね。諦める選択肢があっても、あきらめたくないという気持ちが強いと、どれだけつらくても悲しくても、きついとわかっていても、挑戦し続けてしまうんです。挫折もしましたし、家で泣いたこともありますよ。一番オーディションを受けていたのは13~16歳ぐらいの頃でしたが、その年齢って精神的に成長している過程であって心が脆いし、大人に言われることを鵜呑みにする時期ですが、当時力を持っていた…あるいは持っているふうにしていた大人たちに、僕がダメな理由をいろいろ言われて凹みました。とくに容姿のことを言われましたが、悔しいという気持ちだったり、「なにくそ精神」が「悲しい」に勝って、「絶対いつか」「見返してやりたい」という気持ちもありました。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

物事って、前例のないところからすべてが生まれてるんですよ。なのに「前例がないから」ということで否定されることが少年ながらに腹立たしくて、「君みたいな子は使いづらいよね、ハーフの子がそこにいるとちょっと話が変わってくるんだよ」みたいなことを言われると、「ハーフなんてこの世界にたくさんいるじゃないか」と反発心を覚えました。背が高すぎるとか彫りが深すぎるとかカッコよすぎるんだよねとか、容姿に関して言われてきたことは全て明確に覚えていますが、前例がないところにこそ何かが生まれるし、それが今の世界を作ってきたと思っている僕としては「前例がないなら僕が作ってやろう」と思ったんです。190センチのハーフの俳優という前例がないなら今、作ってやろう、と。そういう気持ちで続けてきて、今があります」

――その心意気は今も持ち続けている?

「はい、そういう感覚でしかエンタテインメントって作れないと思いますし、それこそ「地球ゴージャス」で五朗さんがやっていること、前例のないもの、新しいものを作って再演はしないというポリシーには共感します。ゼロからモノを作り上げることって難しいんですよ。もちろん、出来上がってるものの力を借りて自分たちなりにアレンジするとか、外国で人気のあるミュージカルを持ってきてやるということもできるけど、五朗さんがこだわっているのは、自分で、自分の伝えたいことをゼロから作る。それを信じてやり続けるってすごいエネルギーが必要なことだと思いますし、僕自身そういう感覚の人間なので、共感できるんです。僕自身、今後もそういう「前例のないこと」をやっていきたい。せっかく生きているんだから、簡単な道より険しい道を行ったほうが、たどり着く先では何倍もハッピーな気持ちや達成感を味わえるんじゃないかなと思っています」

*次頁では、ミュージカルにおけるいくつかの代表作について伺いました。
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