保育士/保育士試験・資格について

保育士資格なしで保育所勤務ができるようになる!?

平成27年12月、厚労省は『保育の担い手確保に向けた緊急的な取りまとめ』を発表。保育士不足への緊急措置として、保育士資格を持たない者でも条件を満たせば保育の業務に携わることができるようにするという内容です。保育の「質の維持・向上」と「受け皿確保」を両立する難しさが浮き彫りになりました。

ながみね あき

執筆者:ながみね あき

保育士試験ガイド

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保育の仕事は無資格でもできるのでしょうか?

平成27年12月4日、厚労省は『保育の担い手確保に向けた緊急的な取りまとめ』を発表しました。SNS等で『保育士資格を持たない人も保育所勤務ができるよう、厚労省が省令を改正すると発表した』というような情報を見かけた方は多いのではないでしょうか。保育士試験受験者を応援している筆者としてもこれは衝撃的でしたので、この情報の真偽を確かめてみました。

まず今回の情報をおさらいしましょう。

『保育士資格が無くても保育所で働けるようになる』は本当?

答えは「条件付きでYES」です。保育士資格の無い人が、本当に平成28年4月から勤務できるようになるのだそうです。ただし下記の条件を満たす場合とのことです(実際に平成28年4月から改正される内容です)。日本経済新聞電子版で2015年12月4日に配信され、多くの方はこの記事を目にしたのではないでしょうか。

引用元:日本経済新聞電子版で2015年12月4日 20:23
『保育士確保へ朝夕1人や教諭活用 16年度から配置基準緩和』

・子どもの少ない朝夕に限り保育士1人に加え、研修を受けた保育ママなど資格を持たない人での保育を認める

・配置する保育士数の3分の1以下ならば、幼稚園や小学校の教諭、養護教諭による保育も可能になる。幼稚園教諭は3~5歳児、小学校教諭は5歳児を主に保育し、養護教諭は年齢にかかわらず保育できる
保育士とペアを組んだり、補助的な存在として採用されるようです。もちろん今後も保育士の増加対策に取り組んでいくものの「緊急的な措置として」「時限的な取組」としてこのように改正するということのようです。

ちなみに厚労省発表の元の資料はこちらです。
『保育の担い手確保に向けた緊急的な取りまとめ』(厚労省サイトのPDF資料に接続します)

この改正によって保育士不足問題は解決するのか

どうしても保育士が足りない。だから緊急的・時限的に……と言いながら、将来その期限が来たとき、きちんと人材確保ができている保障はあるのでしょうか?わたしは難しいのではないかと思います。

なぜなら以下のとおり、保育士不足の原因は適切に調査・報告がなされており、厚労省は保育士が足りない要因を既に把握しているのです。人材不足の現状をこれほどしっかりと把握しているにもかかわらず、今回の省令改正に踏み切ったということは、この問題の解決が充分に進んでおらず、急場しのぎをしようとしていることを表していると思います。

参考資料)保育分野における人材不足の現状(厚労省資料)

p.3)保育分野における人材不足の原因・理由1
○保育士資格を有するハローワーク求職者のうち約半数は保育士としての就業を希望していません
○保育士職への就業を希望しない理由で、就業継続に関する項目としては「責任の重さ・事故への不安」が最も多く、再就職に関する項目としては「就業時間が希望と合わない」が最も多い。
p.4)保育分野における人材不足の原因・理由2
○ 保育士職への就業を希望しない理由で、働く職場の環境改善に関する項目としては、「賃金が希望と合わない」が最も多く、「休暇が少ない・休暇がとりにくい」ことなどが挙げられている。
○ 保育士職への就業を希望しない理由が解消した場合、63.6%の者が保育士を希望。
ほかにも、この資料の5ページでは保育士の平均賃金が他の職種と比較して低いことも報告されています。ここまで詳細に把握しているにもかかわらず、今回の『緊急的な取りまとめ』がなされたのです。このことから、この問題を抜本的に解決することは大変難しく、問題解決にはまだまだ時間がかかりそうだということが窺えます。保育の「質の維持・向上」と「受け皿確保」を両立する難しさが浮き彫りになりました。

日本は先進国のなかで、国が教育にかける予算がとても低いと言われています。教育の中でも保育・幼児教育分野はさらに遅れていると言わざるを得ない状況です。はたして今後、根本的に解決する策は見つかるのでしょうか。わたしたち一人一人が、この問題についてアンテナを高くして考えていく必要がありそうです。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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