様々な課題を解き抜いた、抜群の完成度

2回にわたってお送りします。前編はこちら!
竹ヶ原敏之介氏監修、マンテラッシ限定モデル 印象編
M.M.4undefined前方から

竹ヶ原敏之介氏の監修によるSUTOR MANTELLASSI M.M.4を前方から一枚。踵から踝にかけてや鳩目周り、それにつま先など、センターラインの角度が実は微妙にずれているのがお解かりいただけるでしょうか? マストロヤンニがこのブランドにオーダーした際の木型を用いている、何よりもの証拠です。国内では限定10足のみ販売。税込み29万7000円(GALLERY OF AUTHENTIC Tel03-5412-6908)

イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニが、SUTOR MANTELLASSI(ストール・マンテラッシ)の靴を履いてロサンゼルスの観光名所Walk of Fameに自らの足形を遺してから50年。それを記念し、国際的に著名な5組のクリエイターにデザインを依頼した同社のプロジェクト「M.M.」のうち、ずば抜けた完成度の高さを誇るのが、竹ヶ原敏之介氏が監修したSUTOR MANTELLASSI M.M.4です。

一度、目にしてしまうと「こんな靴が似合う、凛々しくも色気のある男になりたい……」と素直に思えてしまう全体的な印象については、一つ前の記事でご紹介致しました。しかしここまでの完成度に辿り着くまでには、天下の竹ヶ原氏と言えども、自らのいつもの靴作りとはまた異なる課題があったのだそうです。普遍的な靴の有りようを理解し尽くしているからこそモードな分野にも深く訴えかける作品を提供できる彼は、そこに安易な妥協をしたくなかったのです。

竹ヶ原氏がこのプロジェクトに臨む際の「3つの課題」とは?

1つ目の課題は、デザイン以前の「基本的な型紙」の設計だったそうです。

このプロジェクト「M.M.」では、マルチェロ・マストロヤンニ本人がオーダーで遺したものから設計には大きな変更を施していない、通常の既製品では有り得ない多様な曲面を駆使した木型を用いているので、それを「普遍化」できるか否かはひとえに型紙の出来に掛かっていたからです。ただでさえロングノーズ気味で、履く人の体格をひときわシビアに選ぶこの木型から、どのように「みんなの靴」を生み出すか…… 例えば鳩目を7対と多く設定したのも、その辺りの回答だったのかもしれません。

2つ目の課題は「イタリア」なる表現

「今回作るのは、艶っぽさを忘れない『SUTOR MANTELLASSIの靴』で、当然ながらマストロヤンニも想起させる必要がありました。ですので『頂点に立ちながら誰からも愛されるロマンチスト』的なコンセプトも与えつつ、思いを巡らせました。イニシャルのMの文字から王冠、そしてそれから革の王様・クロコダイル、みたいな感じで…… もし生きた状態から真っ黒なクロコダイルとかいたら、なんか惹かれるものあるじゃないですか!」(竹ヶ原氏)

うーむ、この辺りは一流のクリエイターならではの発想力ですね。
M.M.4undefined後方側面

今度は後方斜めから迫ってみました。古(いにしえ)のドレスブーツに多く見られるバルモラルラインを、カーフとクロコダイルとの境界線に用いるなど、この辺りのセンスは流石、竹ヶ原氏ならではです。凛々しくも官能的な面構成です。

まだまだ竹ヶ原氏の話は尽きませんよ!

SUTOR MANTELLASSI M.M.4の制作に関する3つ目の課題。それは2つ目とは対照的な日本の「繊細な美意識」。「日本の、しかも竹ヶ原氏だから可能な表現」も加えることでした。

彼曰く、「ここは敢えてデザインそのものではなく、ディテールの繊細な仕上げで表現しています」(竹ヶ原氏)。

例えばつま先と甲のブローギングは、抜き型を用いず手作業で施されていて、しかも穴の大きさを中心部から先端部へと微妙に変化させた驚きのグラデーション仕様! こういったディテールを繊細に仕上げるため、自身のブランドで用いている精巧な道具をマンテラッシの工場で使ってもらうことで実現したそうです。
M.M.4undefinedつま先Part2

つま先部を前方からアップで捉えてみました。メダリオンやブローギングの穴が、不思議とゴテゴテ見えないマジック! そしてよく見れば、メダリオンの先端部と中心部の穴の大きさを微妙に、異ならせているのです。丁寧な手仕事を竹ヶ原氏が求めている証拠です。

「イタリアの靴に時にありがちな『大味さ』に嵌らないよう、各工程で徹底的に指導しました。アッパーのステッチを施す際の糸の太さだけでなく、縫う針の太さや角度まで細かく指定した位です。工場側は戸惑っていましたが、私の日本での靴作りでは既に、当たり前に行われていることですので」(竹ヶ原氏)。

確かに彼が作る通常の靴は、細かい表現にまで気を遣っている点でも評価が高いのですが、そこを今回のプロジェクトでは何気なく内包させた訳です。

そして「靴を履く人に対するアプローチ」そのものについても、どうやら竹ヶ原氏はこのプロジェクトから大きな刺激を受けたようです。

「要は『孤高の存在に憧れる』的な、自分の通常のデザインとは対極の意識が求められたのです」(竹ヶ原氏)。



1つ目の課題にも絡みますが、木型の制約がありながら、何せユーモアに溢れ誰からも愛されたマストロヤンニの生涯を考えると、彼本人と彼のファンどちらにも捧げられる表情豊かな一足にしたい…… 発想のベクトルがいつもと真逆とは言え、デザインに対するそんな配慮は、彼にしか抱き得ないものではないでしょうか。
M.M.4undefined舌革

舌革の部分です。先端は確かに、「M」の字とか王冠に見えますよね! このようなユーモアは名優マルチェロ・マストロヤンニ、そしてこの靴を監修した竹ヶ原氏双方に共通するものではないでしょうか。

これまでの写真でご覧いただいた通りの造形美の結晶のような一足に、竹ヶ原氏ならではの深い思索と情熱が込められていたのがお解かりいただけましたでしょうか。

「リサーチやディレクションの『ブランドとしての手法』など、これまでの自分のやり方とは異なる発想が得られて、その意味では本当に勉強になりました。普段使わない部分のアタマを使い、少々困惑しましたが……」(竹ヶ原氏)。

――と、はにかみながら話を纏めてくれた竹ヶ原氏。SUTOR MANTELLASSI M.M.4は確かに、これまでの彼の作品とはまた一味異なる逸品です。

もう一度書かせて下さい。

「こんな靴が似合う、凛々しくも色気のある男になりたい……」。一度目にすれば、そう惹き付けられてしまうこと確実です!

▼前編はこちらをご覧ください。
竹ヶ原敏之介氏監修、マンテラッシ限定モデル 印象編

【商品情報】
SUTOR MANTELLASSI M.M.4

アッパー: 黒カーフ*黒クロコダイル
ソール:レザーソール
サイズ:6 1/2~9 1/2  ハーフサイズ毎に用意
(日本サイズでは約25.0~28.0 0.5サイズ毎に用意)
製法:グッドイヤー・ウェルテッド
価格:税込み29万7000円(27万5000円+税)
足数:国内限定10足(GALLERY OF AUTHENTICのみで取り扱い)

【問い合わせ先】
GALLERY OF AUTHENTIC
住所:東京都渋谷区神宮前2-27-12
Tel:03-5412-6908
営業時間:12時~20時
定休日:水曜日


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。