親との近居を多くの人が希望
子育てしやすい環境づくりが重要
平成28年度の税制大綱によれば、少子高齢化を構造的な課題と捉え、子育てにやさしい社会の必要性が記されるとともに、3世代同居リフォームの税額控除制度の導入などの施策が対策としてとられています。では、子育てしやすい住まいとはどんな住まいなのか。まずは、内閣府の平成25年度「家族と地域における子育てに関する意識調査」のデータを基に考えてみたいと思います。アンケート結果を見ると、既婚者の子育て意欲は高いことがうかがえます。結婚している20歳~49歳の方の希望の子ども人数は、「2人」という回答者が 53.8%で最も多く、次いで「3人」が26.9%。 平均の希望人数は2.2人となっています。一方、2014年の合計特殊出生率は、1.42人。では、どうしたら子育て環境は、整うのでしょうか。
今後、子どもを持つ場合の条件として挙げられているのが
1、働きながら子育てができる職場環境であること(56.4%)
2、教育にお金があまりかからないこと(51.9%)
3、健康上の問題がないこと(47.4%)
4、地域の保育サービスが整うこと(保育所や一時預かりなど)(46.2%)
5、雇用が安定すること(41.9%)
6、配偶者の家事・育児への協力が得られること(39.3%)
7、出産・育児について相談できる人が地域にいること(23.8%)
8、配偶者以外の家族に、育児に協力してくれる人がいること(22.4%)
大きく分けて、経済的側面と子育てサポート的側面、労働環境的な側面が挙がっています。内閣府発表のデータによれば、雇用者の共働き世帯数は、昭和55年に全国で614万世帯だったものが平成19年には、1,013万世帯に。全国で約400万世帯も増えています。こうしたライフスタイルの変化が家族が求める子育て環境にも影響しているでしょう。
また、「祖父母の育児や家事の手助け」については、共働きの女性が「とてもそう思う」が51.4%、「ややそう思う」が30.6%もあり、親との近居や同居が子育ての解決策の一つとして、注目されています。同調査で、理想の家族の住まい方として、祖父母と同居を20.6%の方が希望、祖父母との近居を31.8%の方が希望しています。近居と同居で半数以上を占め、こうしたニーズも今回の施策の背景のようです。
通勤との家計負担とのバランスを考えて立地を選ぶ
心理的な負担を減らすコミュニティの存在
子供の遊び相手を期待(写真はイメージ)
マンションの立地を選ぶ際には、通勤アクセスはもちろん地域の保育サービスについても確認が必要です。厚生労働省発表の保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)によれば、全国の待機児童数は23,167人で5年ぶりに増加(前年比1,796人の増加)しています。保育所の施設数は、前年比で4.3%増加、定員数も5.9%増加していますので、利用ニーズの拡大(前年比+63,845人)に追い付いていない状況です。この1年で定員が大きく増加したのが、1位名古屋市(+3,661人)、2位横浜市(+3,576人)、3位高知市(+2,791人)の順。他に首都圏では、川崎市が6位(2,135人)にランクしています。保育所の待機児童数は、最も多い東京都に次いで沖縄県が多いなど都市部だから施設が足りないわけではないので、街ごとに確認したいポイントです。例えば流山市のように、保育所の増設だけでなく、駅前送迎保育ステーションを設置している街もあります。行政の子育てサポートがあると子育ての負担も軽減できるでしょう。
大都市のファミリーの場合に共に地方都市出身というケースも少なくないでしょう。遠方の親からサポートが受けられない場合は、不安な面も多いと思います。一定規模の新築マンションなら、入居後に同じ子育て世代と知り合う機会も多いでしょう。大規模マンションのメリットとして、同じライフステージのママと知り合うことができたことを挙げる人も少なくありません。マンション内でのサークル活動や子育てに関するセミナーの開催などといった取り組みも行っているマンションもあります。キッズルームの横にママ同士が寛げるラウンジを設けているマンションなら自然に交流が深まるでしょう。注意したいのは、マンションの価格帯です。マンションを購入する共働きファミリーが増えつつありますが、高価格帯になるほど若い夫婦にとって高嶺の花になるのも事実。平均価格帯が高額になるほど若い同世代の数も限られるでしょう。一方、70平米台超中心の4,000万円台の住戸が多い郊外の大規模マンションなら子育てをスタートする家族も多いです。
最後に、子育ての上で避けて通れないのが教育費の捻出です。マンション購入と同時に教育費の準備も必要になります。文部科学省の平成26年度学習費調査によれば、3歳から高校卒業まで全て公立を選んだとしても総額523万円の教育費がかかります。立地などの利便性も大切ですが、教育資金も踏まえて予算を考えましょう。見落としがちなのは、マンションの管理費と修繕積立金。最近は、野村不動産の「オハナ」ブランドのようにランニングコストを意識して管理費を抑えるようにプランニングしたマンションも増えつつあります。将来の教育費を考えるなら、住居費とは別に最初から教育費を残しておくのも重要です。知識や教養は減ることのない財産だと思えば、住まいと同様に大切なことですから。
【あとがき】
私も子供の頃は、3世代同居で7人で暮らしていました。クリスマスにケーキが3つ並んだことも懐かしい思い出です。気軽に行き来できる近さに住むことは、大人が思っている以上に子供にはうれしいことかも知れません。