マンション相場・トレンド/マンション相場・買い時

マンションの価値は、希少性・効用・有効需要で決まる

不動産価格が再び上昇に転じたことからマンションの「資産価値」というキーワードが注目されています。今回は、資産価格を考える上で重要な、「効用」、「相対的希少性」、「有効需要」について考えます。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

不動産の経済価値を左右する「相対的希少性」「効用」「有効需要」
武家屋敷跡地が希少なのは現代だから

不動産価格が、ここ数年上昇に転じたこともあり再び「資産価値」に注目が集まっています。ただ、よくよく話を聞くと、「価値」と「価格」を同じ意味合いで使っているケースも。「価格」は、払うものであり「価値」は、受け取るもの。今回は、マンションの「資産価値」について経済価値につながる「相対的希少性」「効用」「有効需要」の面で考えてみましょう。

まず、「相対的希少性」について考えてみましょう。このワードで思い浮かぶのは、「駅近」だったり「都心立地」といった言葉です。ただし同じ駅近でも東京都中央区の「駅近」と「吉祥寺」駅の駅近では、希少性の意味合いが大きく違います。中央区で駅徒歩5分圏といっても多くの沿線と駅が集積する場所。駅から徒歩10分以上歩く物件を探すのは、至難のわざかも知れません。一方で、「吉祥寺」駅は、JR中央線・京王井の頭線のターミナル駅でありながら南北に広範囲に住宅地が広がるゾーン。バス便立地のマンションが多いエリアです。駅徒歩圏のマンションなら「相対的な稀少性」は高いと言えるでしょう。

赤門

旧加賀藩前田家の上屋敷だった東大本郷キャンパス。赤門は、将軍の娘の輿入りの際に建立

では、都心エリアのマンションで、よく目にする「江戸時代の武家屋敷跡地」の「相対的希少性」は、いかがでしょうか。かつての武家屋敷の多くは、水戸藩邸あとの「小石川後楽園」や加賀藩邸あとの「東京大学」、尾張藩邸あとの「上智大学」など多くが公園や教育関連施設、公的施設などになっています。2015年の人気物件「Brillia Towers 目黒」も播磨国三日月藩主・森家の上屋敷跡地。このあたりの高台は、初代歌川広重が名所江戸百景に三度も描いた景勝地で、当時から希少な場所だったことがうかがえます。さて、江戸時代の江戸の街には、武士の住む武家地と寺社地と町人が住む場所と大きく分けて3つのゾーンがあったとのこと。その半分以上が武家地で大名屋敷もその半分を占めたといいます。そういう意味では、武家屋敷跡地が希少立地と言えるのは、今でこそかも知れません。

再開発エリアを見ればわかる「効用」の効果
利便性が高まれば街の価値もアップする

武蔵小杉の商業施設「グランツリー武蔵小杉」

武蔵小杉の商業施設「グランツリー武蔵小杉」

次に「効用」(有用性)を考えてみましょう。何にもない原っぱに一軒、家が建っていたとしても暮らすのにはとても不便です。そこには、駅やバス停などの交通手段や買い物ができる利便施設、学校などの教育施設、病院やクリニックなどの医療施設、子供が遊べる公園など、街としての機能が備わってこそ暮らしやすい立地と言えるでしょう。過去にいくつもの再開発エリアを見てきましたが、初期段階とバリューアップ後を比較すると、街の価値が高まった後の方が立地の価値がアップしているケースが多いです。

豊洲駅前

豊洲駅前では、再開発が進む

代表的な例として挙げられるのが、武蔵小杉と豊洲。ともに新駅開業から着実にインフラや生活利便施設が整備され立地の魅力は、大きく高まりました。かつて造船所やグラウンドがあった場所は、時代のニーズとともに人気の住宅地へと生まれ変わりました。大規模マンションの建設が始まった2000年代初頭と比べると、街の利便の向上とともにマンション価格も大きく上昇しました。

「効用」観点に、立地を選ぶとすれば将来どういう街の姿になるかが、資産価値に大きく影響します。スーパーは増えるのか、減るのか?。病院は近くにあるのか?。通学区の教育施設は、近いのか。支えるのは、地域の需要なので居住ニーズの強弱が街の利便にも影響します。

「有効需要」を左右する「ワークプレイス」
10年後の働き方は、どうなるのだろうか?

将来の資産価値を大きく左右しそうなのが「有効需要」です。昭和に栄えた炭鉱町から人が減ったのも閉山によって、働く場所が無くなったから。大都市集中の都市化の流れも、就業ニーズの多くが都市にあるからです。国勢調査(平成22年)による東京都の昼間人口の流入超過上位は、千代田区、港区、中央区、新宿、渋谷区の順。「東京都の土地」(2013年 東京都)によれば、東京23区の事務所面積の49%は、千代田区、港区、中央区の3区が占めています。「ワークプレイス」(職場)が都心に集積していることが、人口の都心回帰を促していることはある程度関係していると考えられます。また、千代田区や「みなとみらい地区」のように就業人口が大きく超過している街は、住宅価格も相応に高くなっています。10年後、20年後の有効需要がどうなっているかは、そのころの「ワークプレイス」(職場)がどこに、どのくらいのボリュームがあるかに左右されます。ワークスタイルも多様化する中、10年後どんな働き方の社会になっているかで不動産価格の形成も変わってくるのではないでしょうか。
東京23区の事務所面積の割合

東京23区の事務所面積の割合(出典:東京都の土地2014)


「都心3区のマンションは、無駄に高いから買いたくない」という話を聞いたことがあります。ホテルやオフィスなどの商業ニーズとも事業用地として競合するのでマンション価格もその分高くなります。「なるほどそういう考えもアリだな」と思いました。「有効需要」を背景に、中心市街地の価格はどうしても高くなりがちですが、通勤面以外の住居としての「効用」が高くない場合があるのも事実です。「資産価値」を「相対的希少性」「効用」「有効需要」の3つの観点で考えてきましたが、長い目で見れば各要素が徐々に変化していくのは避けられません(約100年前は、豊洲は無かったのですから)。

納得して長く付き合うマンションを選ぶためには、3つの視点に加えしっかりと「自分価値」の視点を持つのが重要だと思います。「自分にとって永く価値あるマンション」が、変化の激しい今だからこそ大切だと思います。「価格は払うもの、価値は受け取るもの」をよく考えてマンションを選びましょう。確かに「資産価格」が下がりにくいのは大切な部分ですが、勤務先に近いとか実家に行きやすいなどの家族の事情も大切にしたいもの。多くの人にとって価値は低いけど、自分にとっては価値の高いマンションこそ実はお買い得なマンションなのかも知れません。



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