PTSDとは、犯罪被害、交通事故、虐待などの強いストレス体験を機に、フラッシュバックなどの症状が出る病気です。フラッシュバックとは、過去に経験した体験が、今目の前で起こっているように思い出されることで、PTSDの最もつらい症状であるといえます。

フラッシュバックが何度も起こると、人間の体はトラウマを体験した際の出来事が今も起こっていると判断してしまいます。つまり、実際には危険ではないのに体は危険だと判断してしまうのです。そのため、いつでも緊張した状態が続きイライラや不眠などの症状も出てきます。

PE療法とは

現在、PTSDに対する心理療法で最も研究がすすんでいるのが持続エキスポージャー療法(PE療法)で、その効果が科学的に認められています。

PE療法では、PTSDに対する教育を行い、ストレスマネージメントの方法として呼吸法を練習します。その後、暴露と呼ばれる方法を行っていきます。暴露とは、恐怖刺激に対してあえて直面することで、恐怖刺激に対する「慣れ」を作っていくというものです。

PTSDとは、本来自然に治っていくトラウマが、何らかの影響で回復していない状態と考えられています。例えば、テロ、戦争、震災、犯罪被害にあった人は、繰り返し自分たちが経験したことを語っていこうとします。このように繰り返し自分の経験に触れていくことで、トラウマから回復していくのです。

一方、PTSDを発症した人は、辛いトラウマ体験を思い出すものや場所を避け、自分の経験に触れることを避けようとします。そのため、繰り返し思い出される記憶に慣れていくことができないのです。そのため、PE療法において実生活内暴露とイメージ暴露という2種類の方法で、あえて不安と向き合うことを行っていきます。

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PTSDでは、繰り返されるフラッシュバックのためにうつ状態になります


実生活内暴露とイメージ暴露

実生活内暴露とは、トラウマ記憶を思い出さないように避けている場所に、日常生活の中で行ってもらう方法です。

例えば交通事故のトラウマならば、交通事故にあった現場に行くとフラッシュバックが起こるため、その現場に行くことを避けてしまいます。そこで、あえて事故現場に行く、車の運転席に座るなどの暴露を行います。このような方法を通して、生活の中で避けていることを克服していくのです。

イメージ暴露とは、目を閉じた状態でトラウマ体験の詳細を何度も話してもらう方法です。

例えば、犯罪被害にあった場合は、その時どんな犯罪だったかを細かく描写しながら、順をおって話してもらいます。そうすると、頭のなかで事件の様子がありありと思い浮かびます。イメージ暴露とは、自分の記憶に対して暴露することなのです。実際のPE療法では、イメージ暴露が中心的な方法となります。

プロセッシング

イメージ暴露を行うと、トラウマ体験中に感じた恐怖や、トラウマ体験後に変わってしまった考え方などが明らかになっていきます。例えば、犯罪被害にあった場合、「被害にあったのは自分の責任だ。自分は人間として問題がある」などといったマイナスの思考です。トラウマ体験後に変わってしまった考え方が、PTSDの本質的な問題なのです。

PTSDの治療研究では、トラウマ記憶をしっかりと活性化し、当時の感情的な情報にアクセスすることで、トラウマ記憶が過去のものになっていくと考えられています。そのため、イメージ暴露後には必ず、トラウマ体験後に変わってしまった考え方について話し合いを持ちます。この話し合いをプロセッシングと呼びます。

宿題

このPE療法には、必ず宿題が出されます。この宿題を全て含めてPE療法なのです。宿題では実生活内暴露、セッション中やイメージ暴露の音声をきくことなどが含まれています。この宿題を続けて行うことで、短い治療期間で大きな効果を得ることができるのです。

まとめ

PE療法は、日本ではあまり知られていない治療法だと感じています。しかし、今現在の所、PTSDに対して最も科学的根拠がある心理療法です。この治療法が広まり、PTSDに悩む人が減っていくことを祈っています。

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