価格と同じくらい大切な金利の動向
消費税アップで、コストは上昇 法人税やインバウンドも影響?
価格以上に重要な視点は、金利水準が5年後以降どうなっているかです。現在、デフレ脱却に向けて日本銀行による金融緩和で金利は極めて低い水準にあります。35年間固定金利で借りられるフラット35の2015年11月の最低金利を見ると、返済期間が20年以下、融資率が9割以下の場合では、1.28%。返済期間が20年以上35年以下、融資率が9割以下の場合では1.55%になっています。民間金融機関の変動金利ローンでは、1%を割る水準のローン金利も目立ちます。4,000万円を35年固定金利でローンを組む場合、金利が1.5%の場合の総返済額は、約5,143万円なのに対し、金利3%の場合は、約6,465万円。月々の返済額(ボーナス払い無し)も、金利1.5%の場合が12万2473円に対し、金利3%の場合は15万3940円です。金利が上昇すれば、月々の返済負担は大きくなります。
冒頭に、年収倍率がアップしていることを紹介しましたが、月々の返済額は金利の低下によってここ数年は、さほどアップしていません。ローンを組んで購入する際は、価格と金利をセットで考える必要があります。
ここで多くの人が疑問に感じるのが「本当に将来金利が上がるのか」といった点です。多少の変動はありながら、ローン金利は低水準が続いてきました。今の低金利が当たり前のように感じるのも無理はありません。しかし、日本銀行が掲げるデフレ脱却ができれば早晩、金利が上昇する可能性が高いでしょう。ある程度自己資金が無いと、希望条件に合ったマンションが買えなくなるかも知れません。
次に、2020年の価格動向に影響しそうなポイントを挙げてみましょう。まず将来予定されている消費税の引上げです。建物価格に対して消費税率が8%から10%に引き上げられます。建物価格が2,500万円のマンションなら50万円のアップになります。さらに不動産価格に影響しそうなのが、法人税率の引き下げです。税率が引き下げられれば、その分内部留保しやすくなるので企業の不動産保有にはプラスです。需要の旺盛な都市部では、不動産ニーズが高まることも考えられます。
さらに将来的に見て、外国人の保有ニーズも都市部の不動産価格に影響を与えるのではと思います。2003年に本格的に取り組み始めた訪日観光客への取り組みは、当時の500万人強から2016年には2400万人を超える水準に。アジアの富裕層に人気の都心エリアなどの理解しやすい不動産は、今以上にニーズが高まる可能性があります。
5年でどう街が変化するのか
2020年には、東京が様変わりする?
5年という年月でどの程度、街は変わっていくかも注意が必要です。現時点でも人口流入が続く街もあれば、首都圏でも流出している街もあります。また、市街地再開発などによって整備が進むところも多いでしょう。汐留や六本木、豊洲、武蔵小杉、麻布十番など街や新駅の整備によって、利便性が高まり利用価値だけでなく資産価格にも影響したケースは、多々あります。整備前の方が値頃感あるのは、過去の事例が示しています。中でも2020年に五輪を控える東京都心エリアは、現在再開発のラッシュ。新国立競技場周辺や東京湾岸エリアの選手村や競技場の整備だけでなく、多数のプロジェクトが進行中です。8月31日に三菱地所が発表した東京駅に近い「常磐橋街区再開発プロジェクト」は、地上約390mを予定する61階建てを含む大規模な再開発で、2027年予定の街区工事が完了すれば、街の姿が大きく変貌しそうです。
今後東京で開発・開業が予定されているプロジェクト例
◎東京駅周辺(常盤橋街区再開発プロジェクト 他多数)
◎日本橋エリア(高島屋建替えなど)
◎品川~田町間の新駅設置(2020年開業予定)
◎銀座エリア再開発(松坂屋建替・数寄屋橋)
◎日比谷駅前再開発(新日比谷プロジェクト)
◎虎ノ門周辺(ホテルオークラ本館建替 虎ノ門パストラル跡地ほか)
◎渋谷駅周辺部再開発
◎築地市場移転による豊洲新市場
◎赤坂見附 東京ガーデンテラス紀尾井町(グランドプリンスホテル跡地)
◎新宿駅のバスターミナルおよび東西通路整備
どれも完成すれば、少なからず周辺地域の利便性や魅力を高めるだけでなく、交通ネットワークで結ばれた街の拠点性も高めます。全てが完成した姿を想像すると、街の価値が高まると感じるのは私だけではないでしょう。
いずれ買うのなら、先送りしないのが正解
ライフプランが定まっているなら、ずっと賃貸という選択肢も
マンションをいずれ買うという視点で考えると、「このマンションに住みたい」と思えるような出会いは、そんなに簡単に訪れないと覚悟しましょう。5年後に家探しをスタートして、すぐに気に入ったマンションが見つかるかどうかはわかりません。また、リーマンショック後や東日本大震災の後のように、突発的な出来事によって、急に市場トレンドが変わる場合もあります。そして、自宅を買うのであれば、必要なのはたった一つの住まい。納得して購入を決断できる物件が一つ見つかれば良いのです。そのために、必要なのは自分なりのマンション選びのモノサシ。多くの物件の見学や情報収集によって、知識や経験だけでなく感覚的な良し悪しも見につくことは、言うまでもありません。いづれ買うと考えるなら、2020年に先送りせずに、今からマンション情報をチェックし続けるのが購入の近道だと思います。
一方で、夫婦どちらかの実家に住むなど将来のライフプランが描けているならずっと買わないという選択肢も考えられるでしょう。2020年以降は、首都圏などの都市部でも人口の頭打ちが予想されているので、賃貸選びはしやすくなることが予想されます。ただし、長寿社会の中、リタイア後の住居費が重いことも事実なのでその場合は、相応の老後資金の準備が必要になります。
購入を今検討する場合でも、無理な購入プランは避けましょう。2014年度フラット35利用者調査では、首都圏のマンション融資利用者の手持ち金の平均額は、916.5万円。購入価格の平均が4378.6万円なので多くの人が、十分自己資金を用意していることがわかります。
また、1カ月あたりの予定返済額は、12万2700円。総返済負担率は、21.6%となっており堅実にマンションを購入していることがうかがえます。価格上昇トレンドの中でも、理想のマンションを選べるのは、資金面などでもキッチリ準備ができている人。資金面で不安がある方は、まずは自己資金を貯めるところからスタートを始めましょう。
人生が時間と場所の積算だとすると、今年から2020年までの5年間も大切な期間です。今を大切に、損得勘定に左右されず少しでも人生がいい方向に向かうような選択をぜひ実現してください。