行き先?
それこそ、サイコロでも振って決め、ぶらりと旅をする。かみさんはウインド・ショッピングでもするだろうが、ガイドは苦手だし、すぐ飽きる。かみさんに、そんな同伴は迷惑であろう。ゆえに、旅先に「将棋を指せる場」があれば嬉しい。できれば、宿泊先からカラコロと歩いていける所が望ましい。その土地の言葉を聞きながら、駒音を楽しめたら最高だ。
ああ、夢のような愛棋家・隠居の旅である。そんな至福にいざなうガイドマップ、どこかにないだろうか。あるやもしれぬが、寡聞にして知らぬガイドは思い立つ。ならば、我作らん哉。題して『愛棋家・ぶらり旅ガイド』。まず隗より始めよ。初回はガイドの地元、湯の町別府からである。
将棋処「と」
と、書いて「しょうぎどころ・ときん」と読む。何はともあれ、まずは、場所からガイドしよう。JR別府駅・東口には、らしく「手湯」がある。天然温泉に手を浸し、しばし温めてから海へ向かいメイン道路を下る。両側にお土産店などを眺めながら、ぶらり5分。地元最大のデパート「トキハ」にたどり着く。その西口真っ正面に「と」がある。 末尾に地図情報を補足しているので参照願いたい。
迎えてくれた席主は白井 剛史(しらい たけし)氏。作務衣(さむえ)に身を包む、笑顔が印象的な人物だ。画像の通路正面、引き戸を開けると、磨き抜かれた床の玄関に「いらっしゃいませ」と、これまた笑顔の女将(おかみ)。和風旅館か料亭を思わせる雰囲気である。
靴箱に収め、通されて驚いた。備えてあるものが尽くされているのだ。垂涎(すいぜん)の素材、桂(かつら)や榧(かや)を使った本格的な盤駒。しかも艶やか。聞けば、時間の許す限り、席主が磨いているという。
純和風の雰囲気を壊さぬよう、なおかつ疲れぬように用意された畳仕立てのテーブル。これも画像をご覧いただきたい。しかも完全分煙化の部屋割り。つまり愛煙家も気兼ねなく指せるよう配慮されているのだ。
はてと、ガイドは思う。
-世に、いろんな将棋施設がありますが、多くは「将棋道場」や「将棋センター」の名がついていますよね。なぜまた「処(ところ)」なのです?
将棋をしたり、おいしいものを食べたり、飲んだり、近くの温泉でのんびりして、1日遊び回って「将棋三昧」を味わってもらいたいという願いを店名に込めたのです。/席主
なるほど。だから、ここには女将が腕をふるう「おにぎりかふぇ」が併設されている。画像はメニューの一つ「おにぎり定食」だ。大分県名物の鳥天に舌鼓。
女将曰く「味はもちろんですが、安心安全には徹底的にこだわりました」
アルコール類も注文できる。
おじいちゃん、おばあちゃんのディズニーランド
興味深い言葉だった。席主は続ける。おじいちゃん、おばあちゃんのディズニーランドを目指しているんですよ。/席主
将棋は一生できる楽しみですね。若い人はもちろんですが、お年寄りが楽しめる空間にしたいんです。/席主
たとえば、「と」には老眼鏡が用意されている。血圧計がある。先端機器に弱いガイドには何のことだかよくわからないがプラズマクラスターエアコンなるものも設置されている。大画面テレビをゆったりと楽しめる。そして、本家ディズニーランドの「隠れミッキー」ばりに、ここには「隠れ駒」がある。施設のあちこちに駒模様が隠されているのだ。(画像にも隠れてますぞ。)
取材の最後に「と」のモットーを語ってもらおう。
便利だ、損だ、お得だとせちがらい世の中、人情と手入れの届いた空間で、極上の将棋空間をすごしていただきたいです。
豊かな人生、将棋とともに……。/席主
取材を終えて
いかがだったでしょうか?これからも愛棋家の皆さんにぶらり旅ガイドの続編をお届けするつもりです。そして、それは、まさしくガイド自身の隠居生活の指針にもなるのです。もちろん、現役バリバリの皆さんにもお楽しみいただけるはずです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。また、最後になりましたが、店休日にもかかわらず、取材を快諾、協力していただいた席主さん、女将さんにお礼を申し上げます。<データ>
【店名】将棋処「と」
【席主】白井剛史
【住所】〒874-0920
大分県別府市北浜2-7-31もず屋ビル2F
【電話】0977-24-2555
【店休日】月と火(ただし祝日は営業)
【営業時間】午前11:00-最終手合い19:00
(食事はラストオーダー18:00)
【料金】1000円/1日
【マップ】グーグルマップ
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