クレッシェンドとデクレッシェンドを弾くコツ
クレッシェンドとデクレッシェンド
音量の変化はスムーズに!
クレッシェンドとデクレッシェンドがきれいに聞こえるための絶対条件は、音量をなめらかに変化させること。途中で強過ぎたり弱過ぎたりする音が混ざると、響きが凸凹してスムーズに音量が変化しているように聞こえず、効果が薄れてしまいます。音量を変化させていく過程でバランスを崩してしまうのには、主に3つの原因があります。ショパン作曲の「子犬のワルツ」の一部分を例にご説明しましょう。 ■ポイント1:音の動く方向につられて音量を変えない
同じ音量で弾いているつもりでも、音が下降すると弱く、上昇すると強くなっているように聞こえるもの。例にあげた楽譜のように、クレッシェンドの途中で下降する音があると、だんだん強くしているつもりでも思ったほど音量が上がったように聞こえず、黄色の●で示した頂点の音だけが鋭く突き出たように強くなってしまいがちです。
音が下降してもクレッシェンドしているように聞こえるためには、指にかかる重さ(圧)を抜かずに、体重を乗せていくイメージで弾くようにします。
■ポイント2:指替えがわからないように弾く
指替え(指くぐり)のあるところでは、その音だけにアクセントがついてしまい、なめらかな音量の変化の妨げとなりがちです。録音したり、目を閉じ耳を澄ませて弾いてみたりして、指替えしたことがわからないようになめらかに弾けているか確認します。
■ポイント3:指の動きが音量に反映しないように弾く
音の上がり下がりが入り交じったところでは、指の動きがバタバタと大きくなり、音量のコントロールが甘くなりがちです。特にデクレッシェンドの場合は、しっかり意識して音量をしぼっていかないと聞いている人には伝わりません。
指先で弱くしようとすると、かえって力が入って音がくっきり浮き立ってしまいます。指の付け根からの動きを小さくしていくイメージで弾くと自然に音量も抑えられるので、是非試してみて下さい。
音量を変化させる割合は計画的に!
多小節にわたって音量を変化させる場合多小節にわたってクレッシェンドやデクレッシェンドをする場合、最初から少しずつ変化させていくと、漫然としてしまい演奏効果が薄れてしまいます。最初の方は変化させないか、させてもほんのわずかに抑えておき、後の方でぐっと変化させると効果的です。
大音量や極小音量に変化させる場合
フォルテから更にクレッシェンド、またはピアノから更にデクレッシェンドというように、大音量や極小音量への変化が求められる場面では、自分がコントロールできる音量の幅を知り、その中でどのように音量の配分をしていくか予めプランを練ってイメージをかためておくことが大切です。
そして、音楽的なバランスが崩れないように注意しながら、両手同時に音量を変化させるのではなく、片方の手は最初のほうでは変化させずに後の方で変化させるというように時間差をつけると、音量の変化をより豊かに表現することができます。
オースティン作曲の「アルプスの夕映え」の一部分を例にご説明します。 ■ポイント1:音量の変化は一気に後半でする
4小節でピアノからフォルテまで音量を上げていくこの場面では、同じパターンを繰り返す左手を上手に使うことで、ダイナミックな音量の変化を表現することができます。
青枠で囲んだ1回目と2回目の左手は小節単位で、そして「cresc.molto(急激に音量を上げていく)」が示されている3回目、4回目の左手は、打鍵のたびに前の音より確実に強くなっていくように弾きます。このように音量の変化を配分すると後半で一気に音量がアップするので、曲のタイトルどおり、目の前に広がる壮大で美しい「アルプスの夕映え」が表現できて演奏効果大です。
■ポイント2:右手と左手の音量の変化に時間差をつける
もともと音量が上がっているところから更にクレッシェンドをする場合、力任せに強くしようと鍵盤を叩いてしまいがちですが、頑張っているわりにはクレッシェンドしているように聞こえないばかりか、逆に音楽的な響きからほど遠い騒音にもなりかねません。
このような場合は、最初は片手だけクレッシェンド、そして後半は両手でクレッシェンドするというように、右手と左手の音量の変化を始めるタイミングをずらしてみましょう。そうすることで変化させられる音量の幅が広がり、無理なく変化を表現することができます。 譜面にクレッシェンドやデクレッシェンドが示されていたら、単に「だんだん強くする、弱くする」ではなく、どの程度、またどのように音量を変化させるのがその場面にふさわしいのかを考えるようにしましょう。変化をしっかり意識して弾くことが、表現力豊かな演奏へとつながる大切なポイントです。
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