同じ楽譜を見て弾いても、演奏に違いが出る理由とは?

同じ楽譜を使って楽譜どおりに弾いていても、人によって演奏は違って聞こえます。もちろん、初級者と上級者の演奏を比べてしまえば差が出るのは当たり前ですが、プロのピアニスト同士を比べても演奏する人によって印象が違います。

これは、同じレシピ(=楽譜)を見て料理をしても(=ピアノを弾いても)、作る人によって出来上がりの味(=演奏)に違いが出る理由と似ています。

たとえば、レシピに「千切り」と書いてあっても、人によって千切りの太さがまちまちだったり、「弱火」「中火」「強火」などの火加減にも個人差があります。その他、火を通すタイミングや塩少々の「少々」の加減など、小さな様々な違いが出来上がった料理の味の差につながります。

ピアノ演奏でも、音の強さやニュアンス、速度の変化など、楽譜に書かれた指示を人それぞれどのように解釈、判断して表現するかで演奏の仕上がりに大きな差が出るのです。

■実際に聞き比べてみましょう!

太田胃散のCMでお馴染みのショパン作曲「前奏曲」第7番を、3人のピアニストで聞き比べてみましょう。1分足らずの短い曲なので、是非最後まで聞いてみてください。
 
  1. ショパン:前奏曲 第7番 ピアノ:白水芳枝 
  2. ショパン:前奏曲 第7番 ピアノ:根津理恵子
  3. ショパン:前奏曲 第7番 ピアノ:須藤千晴
(ピティナ公式サイトより)

どの演奏が一番好きでしたか?テンポや間の取り方が違うだけでも曲の印象はだいぶ変わります。特に2と3の演奏ではテンポの差が大きいので、聞く人の好みの分かれるところです。速めの2の演奏を「若々しい」と感じるか、「せわしない」と感じるか。また、ゆっくりめの3の演奏を「叙情的」と感じるか「遅くてつまらない」と感じるか。いずれにしても、どちらが正しいということではありません。
 

違いは「個性」!

違いが出ることは決して悪いことではなく、むしろその違いこそが「個性」として大切にすべきポイントなのです! 楽譜に書かれたとおりの音を間違いなく弾くことはもちろん大切ですが、それ以上に演奏の仕上がりを左右するのは、料理で言えば「味付け」、音楽で言えば「表現」するテクニックです。

「あの人の作ったアレが食べたい」というのと同じように、「あの人の弾くあの曲が聴きたい」と言われるような演奏ができたら素晴らしいですね。

 

「どのように弾きたいか」曲についてイメージをもつ

ほとんど味のしない料理をあまり美味しいと思わないのと同じように、表情に乏しくただ正確な音が鳴っているだけの演奏もあまり上手には聞こえません。

演奏の上手い下手は、弾く人の表現力で決まると言っても過言ではありません。表現は豊かであればあるほど、演奏は深みを増し説得力をもちます。そのためにはまず、曲について「このように弾きたい」という自分なりのイメージをもつことが大切です。

「弾くことに精一杯で、表現するところまで余裕がない」、または「何をどのように表現していいのかわからない」という人も少なくないと思いますが、それでは人に伝わる音楽は奏でられません。ピアノの練習というと、どうしても指を動かすことに意識が偏りがちですが、音の響きにもしっかり耳を傾け、表情豊かな演奏ができるよう心がけたいものです。
 
ピアノと楽譜の写真

曲について、自分なりのこだわりをもつことが表現豊かな演奏につながる

 

表情豊かな演奏のための第一歩

楽譜に並んだ音符や記号、音楽用語から曲のイメージをふくらませ表情豊かな演奏をするには、具体的に何をすればいいのでしょうか?

まず、「明るい感じ」「悲しい感じ」というような漠然としたものでも構わないので、曲から感じる雰囲気や色、思い浮かぶ情景、季節、曲から連想するストーリーなど、すべて書き出してみましょう。心の中で思っているだけでなく、具体的に言葉に置き換えてみることで、自分の表現したいイメージがはっきりしてきます。表現の目指すべき方向が決まったら、あとは聴いている人にそれが伝わるように演奏を仕上げていけばいいのです。
 
楽譜のイメージ写真

表現に正解、不正解はない!曲から感じることをすべて書き出して、自分の表現の方向性を見つけよう
 

楽譜に書かれた「表現」に関わる記号と用語

楽譜には、表現に関わるさまざまな記号や単語が記されています。それらを、大まかに以下の5つに分類してみました。
表現に関わる音楽用語、記号の表

楽譜に書かれた「表現」に関わる表記


これらの表記を実際にどのように演奏の中で反映させるかは、ピアノのみならずあらゆる楽器で演奏の出来栄えを左右する大切なポイントとなります。今後の記事では、それぞれのトピックについて具体的な例を取り入れながら、ひとつずつ丁寧にご紹介していきます。

表現力をしっかり身に着けて、「あの人の弾くあの曲が聴きたい!」と言われるような演奏を目指しましょう。
 

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。