アドバイス1 家計をいち早く節約モードに
貯蓄する余裕がないということですので、まずは家計を見てみますと、毎月2万円は貯蓄されていますが、貯蓄額が10万円ですから、貯めてもすぐに引き出してしまうということだと思います。ですが、家計データは「毎月5万円は貯められる」という収支になっています。データに上がっていない支出を奥様に尋ねたところ、長男の方の学校にかかる費用や医療費、他にご主人のたまのゴルフや奥様のネットショッピングなどがあるとか。不定期な支出も含まれていますが、月にならすと、実際の教育費は5万円近く、雑費は倍の2万円、趣味娯楽費3万~4万円といったところでしょうか。
お子さんが3人いらして夫婦共働き。日々忙しく、だからこそ、家族での楽しみや息抜きは当然必要でしょう。それは十分理解した上で、それでも、将来を考えれば家計を節約モードに切り替え、ある程度「我慢」もしながら、貯蓄に励むことが現状での優先課題だと言えます。
実際に手を付けるべき費目としては、趣味娯楽費や雑費、家族のこづかいなど。具体的には、海に行く回数を減らすといったことです。食費に含まれるビールも、見直しの対象となります。そこまでと思われるかもしれませんが、そのくらいのことをしていく必要はあると考えます。月1万5000円は年間で18万円にもなるのですから。
長男の方の学資保険を中途解約し、下の2人のお子さんの児童手当も実質、貯蓄に回っていない。その状況はやはりきびしいと言わざるを得ません。
アドバイス2 他大学も含め、進学については再考を
どのくらい貯められるかですが、当面の目標は月額6万円。加えてボーナスから半分の28万円。これで年間100万円となります。クルマのローンを完済したり、下のお子さんが小学校に上がれば、その分、教育費は減るので、さらに貯蓄アップも可能でしょう。ただし、それだけ貯めても追いつかないのが、長男の方の学費です。美大を希望されていて、目指している私立美大の4年間の学費が640万円となります。年間貯蓄100万円を卒業するまでの7年間続けたとして700万円。受験に際して、専門の予備校や教室に通う可能性も考えれば、その7年間で貯蓄がほぼ底をつきます。
また、学費免除制度はいいとして、奨学金を安易に利用すべきではありません。学生でありながら、数百万円の借金をお子さんが背負うわけです。社会人になってから少しずつ返済するとは言っても、その負担はかなりのものと考えてください。たとえば、同じ美大でも公立という選択肢はないのでしょうか。たとえば、お住まいから比較近い愛知県立芸術大学だと、卒業までの学費は半分以下で済みます(※)。
もちろん、その私大を目指す理由があるかもしれません。しかし、学費を用意することが現実的に難しいことは確かです。選択肢を広げ、また学費免除制度もよく調べた上で、美大進学を考えてみてください。
アドバイス3 無理なく購入できる物件で検討すべき
家計を貯蓄モードにして、仮に長男の方の大学費用が半分(300万円程度)に抑えられたしましょう。それで、家計も落ち着き、貯蓄ペースも年間100万円から落ちていないのであれば、住宅購入も現実味を帯びてきます。ただ、希望されている2500万円程度の一戸建てはきびしいと言わざるを得ません。実際の購入時期にはご主人が40代半ばとなっていますから、リスクなくローンを組むには、返済期間は20年以内としたいところ。1000万円を金利2.0%で借り入れると、20年返済で毎月の返済額は現在の家賃並みの5万円。自己資金が300万円用意できるなら、1200万円の物件(諸費用として別途100万円)が無理なく購入できるということになります。
借入額を2000万円とすれば、返済額も倍の月額10万2000円ほど。さらに600万円の自己資金を用意しないと、2500万円の物件は購入できません。下のお子さんの教育費もあります。できるだけ自己資金を貯めながら、広範囲に中古物件を探していくことが必要となるでしょう。
最後に、下のお子さん2人関しては、学資保険に加入してもいいと思います。強制的に、かつ計画的に貯蓄してくれるということで、一定の効果が期待できます。過去に解約もされましたが、きっちり貯蓄ペースが確立してくれば、そういうこともないはずです。
(※)愛知県立美術大学美術学部/油画専攻の場合=入学金28万2000円、授業料・年間53万5800円、教材費等・4年間17万円程度(平成28年入試要項より)
「まる」さんから寄せられた感想
このような貴重な機会を設けていただいた事に、心より感謝申し上げます。アドバイス通り、家計に甘く貯蓄を意識せずに、何とかなると……ここまでダラダラきてしまった結果だと反省しきりです。今回、今までなんとなく直視できなかった家計の支出を、しっかりと把握することで、必要支出とただの無駄使いを意識することができました。目標の為に、気を抜かず貯蓄に励もうと決意できました。この度は、本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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