アドバイス1 今は貯められなくても仕方のない時期
現状、貯蓄を切り崩しているとのことですが、家計を見る限り、保険以外はさほど見直しが必要な支出はなさそうです(保険については後で触れます)。しいて言えば、通信費は料金プランの変更によって、もう少し下げられるかもしれません。そこでまず理解すべきは、今は家計が苦しくても仕方がないということです。お子さんが幼稚園、保育園に通う時期は一般に世帯の所得もまだ低く、どうしても家計は苦しくなりがち。相談者の場合も、下のお子さんが来年4月に保育園か幼稚園、どちらかに入園するまでの半年間は、多少の赤字は仕方がないと割り切っていいと思います。さほど大きなマイナスではありませんし、まとまった額の貯蓄があるので、そう不安になる必要はありません。
来年4月以降に関しても、奥様が貯蓄できる額は月2万~3万といったところですが、それで十分と考えていいのでは。この苦しい時期は長くは続きません。お子さんが全員小学校に入学(公立の場合)すれば、かかる教育費はグッと下がります。妻がパートで働いた、その収入をほぼ全額貯蓄することも不可能ではないでしょう。
また、「妻の収入を増やすつもりで実家に近くに新築を買った」とのこと。それが、親御さんにお子さんの面倒を見てもらえるということであれば、パートの開始時期を前倒しにすることもできるはずです。そうなれば、赤字家計はより早く改善されると思います。
アドバイス2 安い保険料で貯蓄率のアップを
家計についてですが、気になるのは保険です。夫婦ともに終身保険に加入されているのは、貯蓄性を求めてのことだと思いますが、保険料はどうしても割高になります。また、マンションを購入されたのですから、ご主人の死亡保障はもう少し下げてもいいのでは。たとえば、ご主人の死亡保障3000万円、奥様1500万円の定期保険(保険期間10年)に加入したとすれば、保険料は6000円後半といったところ。それだけで毎月1万3000円前後、保険料負担が軽くなります。また、終身保険の解約返戻金は長期間掛けないと元本割れします。その意味で資金としての流動性は低い、つまりは使いたいときに使えないということです。さらに保険料のうち貯蓄や投資に回っているのは全額ではなく、保険コストが引かれた残りです。したがって、掛け捨ての保険であっても、浮いた保険料を貯蓄に回した方が合理的というわけです。
アドバイス3 奨学金利用は安易に決めない
事前に用意すべき教育資金は、基本的には大学費用を指します。私立文系で4年間にかかる費用は390万円、私立理系(医歯系を除く)で520万円が平均額。まだ進路は決まっていないでしょうから、1人400万円、お子さんが2人ですから計800万円をひとつの目安としていいでしょう。現在、加入されている学資保険の満期金は270万円。残り530万円のうち、今後、月2万円の児童手当を全額貯めていけば230万円ほどになります。さらに300万円を別途貯めていけば、今の貯蓄に手を付けずとも、大学費用を用意できるというわけです。毎月1万5000円で積み立てて17年弱。ちょうど下のお子さんが大学4年のときに貯まります。
また、データの補足に「奨学金利用も止むを得ない」とありますが、もちろん、それも選択肢のひとつです。住宅ローンの完済がご主人71歳のときですから、できれば繰上返済をして、少なくとも完済時期を65歳に短縮したいところ。その意味で、教育資金だけを貯めるというわけにもいきません。
それでも、奨学金利用を安易には決めないでほしいと思います。奨学金はメリットもありますが、同時に社会に出る前から大きな負担を子どもに背負わせるということでもあるからです。
まだ時間はあります。親としてできるだけ準備をし、どうしても不足する部分については奨学金でカバーするといったことで対処してはどうでしょうか。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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