関節可動域を測定する際の状況、反応でわかることはたくさんあります。CTもMRIも使わずに理学療法士はなにをみているのでしょうか?
「関節が固くなっていないか確かめる」と言うだけでは専門職とは言えません。実習、国家試験、臨床現場すべてにおいて大切な知識ですのでおさらいしていきましょう。
関節可動域測定の目的は?
すべての検査、評価には意味と目的があるわけですが、関節可動域測定の目的としては以下のようなものが挙げられます。なお、関節可動域には各関節に参考可動域というものがありますが、目安になる値であり正常値というものはありません。- 関節の動きを制限している因子を発見する。
- 障害の程度を判定する。
- 理学療法を行う上で参考にする。
- 理学療法効果の判定を行う。
では、次にこの目的について考察するのに必要な知識を整理していきます。
拘縮(こうしゅく)と強直(きょうちょく)、制限因子とは?
関節可動域の制限因子について考察する事は知識として重要なことです。その代表格として「拘縮」という言葉がありますが、これは学校の授業でも聞いた事があると思います。ちなみに拘縮とは、各関節が他動的にも自動的にも可動域制限を起こす状態とされます。一般的には、関節包や関節包外の構成体である軟部組織の変化によって起こる関節運動制限のことを指しますが、その他にもさまざまな要因がありますので、今回は比較的わかりやすい「Hoffaの分類」をご紹介します。
Hoffaの分類は5つあり以下に分けられます。
- 皮膚性拘縮:皮膚の熱傷、創傷、炎症などによる瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)の事であり、皮膚が弾性を失った状態。
- 結合組織性拘縮:皮下軟部組織と靱帯や腱などの結合組織の病変に起因する。(例:Dupuytren拘縮など)
- 筋性拘縮:筋肉の収縮性、伸展性の減少や、関節が長期間一定の位置に固定され、可動域が制限されたものをいう。要因として筋炎による筋線維の変化、筋断裂などによる筋の線維化による短縮などの筋自体の病変やギプス固定などによる退行変性、血行障害などによる筋の壊死、瘢痕化などの阻血性拘縮がある。(例:Volkmann拘縮など)
- 神経性拘縮:末梢神経や中枢神経系の疾患によっておこる。これは3つに分けられ、疼痛などの末梢刺激が反射弓を通じて筋スパズムをおこし、反射的に痛みを和らげさせる為に起こす拘縮を「反射性拘縮」と、脳卒中片麻痺の共同運動、脳性麻痺による等で生じる特定肢位によって発生する「痙性拘縮(けいせいこうしゅく)」、末梢神経麻痺により拮抗筋の緊張が優位になっておこるものを「弛緩性拘縮」という。(例:弛緩性拘縮→腓骨神経麻痺=下垂足など)
- 関節性拘縮:滑膜、関節包、靱帯などが炎症や損傷により、癒着、委縮したもので、強直との区別が難しいとされる。
なお、強直とは骨変形や結合組織の線維化などによる不可逆的な器質的変性による可動域制限のことです。
次のページでは、関節可動域を制限する因子の判断方法や関節可動域を測定する上で大切なことを御案内します。