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理学療法士に必要な「関節可動域」の知識(2ページ目)

「理学療法士と言えば角度計(ゴニオメーター)を持ち歩いているイメージ」と他の医療職から言われる事が多いのですが、この角度計で測るのが「関節可動域」になります。では、理学療法士は関節可動域を測って何を判断しているのでしょう。今回は関節可動域の基本的な知識についてご説明します。

野田 卓也

執筆者:野田 卓也

理学療法士試験ガイド

 

関節可動域制限の判断方法は?

理学療法士undefined関節可動域

最終域感により関節に起きている事象をおおまかに捉える事ができます。また、関節可動域を測定する際は注意すべき点もあるのです。

では、関節可動域制限になりうる因子について、それをどう判断し考察するのでしょうか?その方法として、カルテから現病歴、既往歴、生活歴などの情報を加味し、最終域感(end feel)を感じることで、関節に起きている状態を判断するということが挙げられます。

最終域感(end feel)は、イギリスの整形外科医であるCyriaxにより提案され、現在はいくつかの分類がありますのでご紹介していきます。

正常な最終域感
soft tissue approximation:軟部組織の衝突感
  • 状態:別々の筋肉同士が接近し重なり合う軟らかい停止感。
  • 例:肘関節屈曲時、膝関節屈曲時など
tissue strtch:軟部組織の伸張感
  • 状態:関節包や靭帯の伸張によりバネが伸びるような柔らかい停止感。
  • 例:股・肩関節内外旋、足関節背屈など
bone to bone:骨と骨の衝突感
  • 状態:骨と骨の接触。堅さを感じる停止感
  • 例:肘関節の伸展など
異常な最終域感
early muscle spasm:早い筋スパズム
  • 状態:関節を動かす最初で生じ、動かすとすぐに運動が止まる。
  • 例:炎症やより急性期の症状で多い。
late muscle spasm:遅い筋スパズム
  • 状態:動揺性のある関節、もしくは運動に対する無意識の防御として生じる。
  • 例:肩甲上腕関節前方脱臼不安テストをする際の運動最終域。※脱臼するかもしれないという不安感から無意識に筋スパズムが起きる。
soft capsular:軟らかい関節包
  • 状態:関節運動の最初から最後まで抵抗感があり最終域にいくほど強くなる。
  • 例:滑膜炎などの急性期や軟部組織の浮腫で起きやすい
hard capsular:硬い関節包
  • 状態:運動の最終域で生じる
  • 例:凍結肩など慢性症状の関節包障害で発生。
※関節包性の最終域感では筋スパズムは起きないので、筋が緩んでいるかはしっかり確認する事

関節可動域を測定する時に大切な4つのこと

実際に関節可動域を測定し状態を考察する為には、以下の4つの注意点を考慮する必要があります。これらがおろそかになると、評価として不明確になり、理学療法を行う上で適切な介入ができない可能性も出てきます。しっかり心得ておきましょう。

  1. 自動運動、他動運動療法を行い比較してみる。
  2. 健側(けんそく)と比較する。
  3. 他動運動は重力を除いた肢位で行う。
  4. 痛みの誘発動作や痛みの種類を探る。

1.自動運動、他動運動療法を行い比較してみる。

仮に関節可動域を測定する際に自動、もしくは他動運動だけで検査を終了させてしまった場合、検査における見落としが発生します。例えば、自動運動では「指示通りに関節を動かせるか?」という点で、被検者が脳血管障害や認知症患者の場合、認知症評価との相関性がでてきます。さらに「全可動域を指示通り動かせるか?」がわかることで、MMT(徒手的筋力検査)との相関性もみることができます。また、自動運動と他動運動で同じ可動域でも痛みが出たり、出なかったりといったこともあります。こういった点がなぜなのか?を考える事が、問題部位や原因の考察につながり、それが理学療法プログラムに反映されるのです。

2.健側と比較する。
障害による関節可動域への影響を比較する事で、痛みの原因やそこから追従する動作への影響を考察する上で重要になります。

3.他動運動は重力を除いた肢位で行う。

重力の影響を受けた状態では、最終域感の感じ方が変わります。特に筋スパズムは重力の影響を受けやすい為、できるだけ安楽な肢位で測定する事が求められます。

4.痛みの誘発動作や痛みの種類を探る。
痛みは最も訴えの多い症状です。その為、どういった時に痛みが出るか?どんな痛みか?といった情報を拾う事は大切です。原因を考察し、痛みを軽減・消失させるために理学療法プログラムを組むことは、患者さんにとって一番叶えてほしい事ともいえます。

関節可動域に関するまとめ

関節可動域は、いわゆる正常可動域と比較し、どうのこうのというわけではなく、あくまで正常可動域を平均値のベースとして考えたときに、どうしてその可動域なのか?左右差はどうなのか?痛みはどうなのか?原因は何なのか?を考察し、それらが姿勢や歩行などの動作、日常生活へどう影響するのか?まで考えて、リハビリテーション計画に組みこみ、理学療法プログラムに役立てていくことが重要視されます。

その点を考慮して、実習や臨床現場に臨んで頂けたら幸いです。
 

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