平成27年度宅建試験で出題が予想される判例

宅建試験における民法及び借地借家法の問題については、新しい判例からの出題があります。
主たる債務者を相続した保証人の弁済と時効中断

平成27年度宅建試験 新判例


平成26年度の宅建試験では「平成24年9月13日の定期借家契約の判例」が、平成25年度では「平成25年1月22日の地代の増減額請求の判例と平成23年2月22日の遺言の効力に関する判例」が、平成24年度では「平成23年4月22日の信義則に関する判例」が、平成23年度では「平成22年6月17日の不法行為と損益相殺に関する判例」が出題されております。

最高裁判所での判断は、一審・二審と裁判所の意見が割れるほど重要な不動産取引に関する争点で審査されたものばかりです。これから不動産取引法務の専門家となる宅建試験の受験者は当然に知っておかなければならない知識です。したがって、最低でも過去5年分くらいの最高裁判例は事実と結論をしっかりと勉強しておかなければなりません。

この記事を活用して最新の判例をカバーしておきましょう。


平成25年9月13日の最高裁判例

最判平成25年9月13日 民集 第67巻6号1356頁
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=83563

<事実の概要>

主たる債務者を相続した保証人の弁済と時効中断

平成27年度宅建試験 新判例


(1)A(銀行)は、B(商人)に対し、平成9年5月26日に2,000万円、平成10年3月9日に500万円、平成11年5月26日に1,000万円を貸し付けた。

(2)Xは、A銀行との間で、BがA対して負担する右(1)の債務を保証する旨の契約をした。

(3)Yは、Xとの間で、BがXに対して負担する右(2)の求償金債務について連帯保証契約をした。

(4)Bは返済困難となり、Xが保証人として平成12年9月28日にA銀行に対し代位弁済した。

(5)Bは、平成13年6月30日に死亡し、Yが単独でBを相続した。

Yは、Xに対し、Yが単独でBを相続する旨を告げていた。Yは、Xに対し、連帯保証人として、右(3)の債務について平成15年12月15日から平成19年3月30日まで合計422万4,630円を支払った。Xは、平成22年1月13日、Yに対し、本件各連帯保証債務の履行を求める旨の支払督促を佐倉簡易裁判所に申し立てた。Yが督促異議の申立てをしたことにより通常の訴訟に移行した。

<争点>
Xの請求は、連帯保証人であるYに対し、求償金残元金と遅延損害金の支払を求めるものです。それに対し、Yは、Xが代位弁済をした平成12年9月28日から5年が経過し、BのXに対する求償金債務が時効消滅していると主張して、連帯保証人としてこれを援用するとともに、連帯保証債務についても、平成16年6月3日より後は連帯保証人としての弁済もしていないので時効消滅していると主張して、これを援用しました。

<東京高等裁判所の判断(平成23年9月15日)>
「Yによる本件各連帯保証債務の弁済は、その主たる債務である本件各求償金債務の消滅時効を中断する効力を有するものではない」として時効消滅を認め、Xの請求を棄却しました。

<最高裁判所の判断>
「主たる債務を相続した保証人は、従前の保証人としての地位に併せて、包括的に承継した主たる債務者としての地位をも兼ねるものであるから、相続した主たる債務について債務者としてその承認をし得る立場にある。そして、保証債務の附従性に照らすと、保証債務の弁済は、通常、主たる債務が消滅せずに存在していることを当然の前提とするものである。しかも、債務の弁済が、債務の承認を表示するものにほかならないことからすれば、主たる債務者兼保証人の地位にある者が主たる債務を相続したことを知りながらした弁済は、これが保証債務の弁済であっても、債権者に対し、併せて負担している主たる債務の承認を表示することを包含するものといえる。これは、主たる債務者兼保証人の地位にある個人が、主たる債務者としての地位と保証人としての地位により異なる行動をすることは、想定し難いからである」。

そして、「保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合、当該弁済は、特段の事情のない限り、主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。」としました。


平成25年9月13日の最高裁判例に対する解説

保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合、原則として、主たる債務を承認したことにもなり、その消滅時効が中断するので、保証人としての立場も存続するとしたものです。

この判例を理解するための前提の知識として、時効中断と保証債務の2つを知っておく必要があります。

まず、時効中断とは、時間の流れにより権利を得たり失ったりする時効の基礎となっている事実状態と相容れない事実が生じて時効が中断することをいいます。時効が中断すると、それまでの時効期間はまったく効力を失います。この時効中断の事由(原因)として、民法では、「請求」「差押・仮差押または仮処分」「承認」の3つを規定しています(民法147条)。この中の承認とは、時効によって得をする当事者が、時効によって損する人に対して、その権利の存在することを知っている旨を表示することをいいます。

つぎに、保証債務とは、債務者がその債務(主たる債務)を履行しない場合に、他者(保証人)がその履行をする責任を負うことを内容とする債務であり(民法446条1項)、主たる債務を担保する作用をなすものです。その性質としては、「別個債務性」「付従性」「補充性」の3つが重要です。保証債務は主たる債務とは別個の債務で、主たる債務の発生原因(消費貸借契約等)とは異なる契約(保証契約)によって成立します(別個債務性)。付従性とは、主たる債務が成立しなければ保証債務も成立せず、保証債務の内容が主たる債務よりも重いことは許されず(民法448条)、主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅するという性質をいいます。また、補充性は、主たる債務者がその債務を履行しない(できない)ときにはじめて自己の債務を履行すればよいとするものです。その現れとして、催告の抗弁権(民法452条)と検索の抗弁権(民法453条)があります。これは抵当権などの担保物権にはない保証特有の性質です。

この2つの制度をしっかりと理解した上で前記の判例を読み解いて下さい。

次のページでは出題予想と関連する判例を説明します。