ブラジコヴァー(ソプラノ) アルフォンソ10世『聖母マリアのカンティガ集』
ヨーロッパ中世の音楽。「いま、ここ」の感覚とは全く違う異界感がありながら、それほどまでに違う世界に、同じ人間としての喜怒哀楽があったことに時折、はたと気づかされる...そういうところにも、古い音楽は底知れない魅力があるのだと思います。文芸に秀でた中世スペインの王が、自ら作詩・作曲もしながら編纂させた『聖母マリアのカンティガ集』。息をのむほど美しい中世ハープの響き、世界的古楽歌手の清らかな歌、陶然とせずにはおれません。
■ガイド大塚の感想
ヘレヴェッヘやバッハ・コレギウム・ジャパンとの共演も多いブラジコヴァーの透明な歌声が教会に響き、何とも美しい。聖母マリアのカンティガ集は、リズムを強調した演奏などもあるが、ここでは伴奏も品とセンスのある付け方で、美を極める。中世イベリアのアラブの寺院にいざなわれるアームチェア・トラヴェリングが楽しめる。
ケンプ(ピアノ) ショパン:ピアノ・ソナタ第2・3番、即興曲、他
全盛期のケンプのテンペラメントが強く反映された孤高のショパン。DECCAへの3枚のステレオ録音盤を2枚に集成!ケンプにとっては比較的珍しいレパートリーであるショパン。奔放でありながらも慈愛に満ちた彼のショパンは、貴重です。オリジナル・マスターからのハイビット・ハイサンプリング(192kHz,24bit)でデジタル化した音源をCDマスターに使用。1958年の良質なスタジオ録音です。
■ガイド大塚の感想
ドイツ音楽の大御所ケンプと対極にあるようなショパンだが、これが実に味わい深い。ショパン作品にどうしても漂ってしまうショパン香をあまり感じさせず、きっちり弾く。だが、ドライというのともまた異なり、ケンプらしい作品愛を感じ、特にピアノ・ソナタ第3番など、媚びのなさが素朴な真心を感じさせるようで、胸に染み入る。
タワーレコード
ケンプ(ピアノ) シューマン:ピアノ作品集
ドイツの真のロマン性を湛えた、ケンプの詩情溢れるシューマンを新マスターで復刻! 世界初CD化曲、1曲入り! ケンプにとって唯一の録音となる「謝肉祭」「子供の情景」他を含む、DGレーベルへのシューマンのステレオ録音を集成しました。これまでCD化されていなかった小品1曲(「森の情景」からの「第7曲」)を、世界初CD化としてリリースします。
■ガイド大塚の感想
技術で圧倒すると却って見えづらくなる作品本来の詩情を味わえる名録音の数々。抑制の効いたピアノで、単に詩情に溺れるのではなく、確かな構成感を持っているところが深みを持たせている。素朴ながら、凛々しさを湛えた温かさに包まれる。
タワーレコード