民法のマスターには時間がかかります
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不法行為を攻略するには、まずは、以下に紹介する重要論点をマスターしておいてください。
不法行為に関する重要論点は5つ!
(1)不法行為成立のための4つの要件・行為者に責任能力(12歳程度の知能)があること。
・故意又は過失によること
・他人の権利や利益を侵害していること
・その行為によって損害が生じていること
なお、加害者が未成年者などで責任能力がない場合には、親権者などの監督義務者の責任になります。
(2) 不法行為の効果
不法行為の責任を負った場合、金銭による損害賠償が原則です。例えば傷害事件や交通事故で負傷した場合には,次の費用などを請求することができると考えられます。
・治療費(入院費用・交通費等も含む)
・休業損害(休んだ日数分の通常得られていたとする給与等)
・精神的な苦痛に対する慰謝料
・後遺障害による,慰謝料,給与の減少があれば減少分等
・自動車の修理費用
・弁護士費用
なお、賠償されるべき損害の範囲としては遅延損害金も含まれます。債務不履行と違って不法行為にもとづく損害賠償責任の場合には、催告は必要なく、損害(不法行為)発生の時から履行遅滞に陥ったものとされます。
ただし、当該不法行為において被害者にも過失があったと認められる場合には、「過失相殺」として損害賠償金額が減額されることもあります。
(3) 不法行為の消滅時効
被害者が損害及び加害者を知った時から、3年以内に損害賠償権を行使しないと時効によって消滅します。
(4) 失火責任法による例外
加害者が失火によって他人に損害を与えた場合には、その加害者に重過失がない限り、不法行為責任を負う必要はありません。ただし、賃借人が賃貸人に負う債務不履行責任については免れません。
(5) 特殊な不法行為責任
a. 使用者責任
マン管試験で出題されやすいのは、管理会社の社員(被用者)が業務執行中に管理組合や居住者に対して不法行為を行った場合、管理会社も使用者としての責任を問われるという設定です。
ただし、この場合も被用者が、特定の業務を執行する際に加害者に損害をもたらしたという要件を満たす必要があります。
また、被用者が不法行為責任を負う際には、使用者も損害の全額につき責任を負わねばなりません。なお、使用者が被用者に代わって損害賠償した場合、使用者は被用者に対して信義則上相当な範囲で求償ができます。
b. 土地の工作物等の占有者および所有者の責任
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じた時には、その工作物の占有者又は所有者が損害賠償責任を負います。この場合、一時的には占有者が責任を問われますが、必要な注意をしていた場合には責任を免れ、所有者の責任となります。
なおこの場合、所有者はたとえ無過失であっても全責任を負わねばなりません。ただし、その瑕疵が工作物の工事を請け負った工事業者の過失によるときには、被害者に対して損害を賠償した占有者又は所有者からその業者に対して求償ができます。
c. 共同不法行為責任
複数人が共同して不法行為を行った場合、(その不法行為を教唆した者や幇助した者を含めて)当該加害者の各人が連帯してその損害(これを不真正連帯債務と言う)を賠償しなければなりません。この場合、各加害者は故意や過失の程度に関わらず損害の全額に対して責任を負います。
なおこの際、加害者の一人が損害全額を被害者に賠償した場合には、残りの加害者に対して相応の求償をすることができます。
重要論点の確認ができたら、次ページで過去問にチャレンジしてみましょう。