新築マンションの価格は、前年同月比13.2%の上昇
中古マンション価格は、前年同月比7.6%の上昇
不動産経済研究所発表の2015年9月度の首都圏のマンション市場動向によれば、2015年9月度の首都圏新築マンションの平均価格は、5,393万円で前年同月比13.2%の上昇。平米あたりの単価も14.4%の上昇となっています。一方、契約率は66%と昨年の12月以来の70%割れ。発売戸数も前年同月比で、27.2%減少するなど先送りの傾向があり、価格上昇で販売スピードがやや鈍化していることがうかがえます。
同様に、中古マンションの価格も上昇しています。東日本不動産流通機構発表の2015年9月度の月例速報によれば、首都圏の中古マンションの成約価格は、前年同月比7.6%上昇の2,958万円。成約平米単価も9.0%上昇しています。中古マンション動向で特徴的なのが新規登録物件や在庫物件の価格の上昇。ともに昨年同月比では、平米単価で15%以上上昇しており、売手側の強気の姿勢が伺えます。新規の売出し物件数も増えてきており、こうした傾向は在庫物件数の増加につながっており、昨年同月比で10.1%の高い伸びになっています。
在庫の増加は、将来の下落圧力の可能性も否定できませんが全国的に新築マンションの価格は上昇トレンドが続いています。今後一段高になるかどうかは、これからの新築マンションの供給価格動向と売れ行きにも左右されそうです。
土地価格の上昇トレンド続く 来年以降も供給価格は上昇の可能性大
上昇率トップ5に、愛知県、大阪府、石川県 名古屋駅前が伸び1位
9月16日に国土交通省から都道府県地価(基準地価)が発表されました。都道府県地価とは、都道府県知事が毎年7月1日における標準価格を判定するものです。毎年1月1日時点の地価を公示する地価公示と比べ、調査時点と対象区域が異なりますが、相互に補完関係にあり地価トレンドの目安にもなります。調査の結果からは、全国平均では下落が続いているものの下落幅が縮小傾向に。三大都市圏では、商業地が総じて上昇基調を強めており商業ニーズの高まりを表す結果になっています。それでは、全国の上昇率上位5地点を見てみましょう。
1位・・・愛知県名古屋市中村区名駅三丁目26番6号
※ 平成27年基準地価格 3,030,000(円/平米) 変動率 45.7%
2位・・・愛知県名古屋市中村区椿町1番16号
※ 平成27年基準地価格 3,250,000(円/平米) 変動率 36%
3位・・・大阪府大阪市中央区南船場3-5-11
※ 平成27年基準地価格 4,150,000(円/平米) 変動率 29.7%
4位・・・大阪府大阪市中央区難波3-4-16
※ 平成27年基準地価格 3,120,000(円/平米) 変動率 28.9%
5位・・・石川県金沢市広丘1丁目112番外
※ 平成27年基準地価格 395,000(円/平米) 変動率 25.4%
上位を見ると、首都圏以外の大都市圏の中心部などが並びます。1位、2位の名古屋はともに再開発でビルの建設ラッシュの進む名古屋駅の駅前。2027年にはリニア中央新幹線駅の開業予定もあり今後の発展期待から上昇度合いが高くなっています。
実際に、名古屋駅の周辺部を歩くと、その変貌ぶりに驚きます。現在JPタワー名古屋、JRゲートタワー、大名古屋ビルヂングが新築工事中。この10年でも、名古屋ルーセントタワーやミッドランドスクエアなど多くのビルが開業していて駅前のイメージが一新されているのに気づきます。上昇率5位にランクインした、石川県金沢市が、北陸新幹線開業に伴なう金沢駅周辺整備の進展で、大きく上昇したように交通網の整備や再開発の寄与度が首都圏に比べて大きいことがうかがえます。
東京圏では、上昇率1位は南青山、2位 銀座、3位 虎ノ門
外国人観光客の増加も、上昇の一因
東京都をはじめとする東京圏も、商業地中心に価格の上昇傾向が見られます。中でも、都心エリアの上昇が堅調です。住宅地・商業地の変動率上位3つは、1位・・・東京都港区南青山5-1-27 (表参道の駅前)
※ 平成27年基準地価格 11,600,000(円/平米) 変動率 20.2%
2位・・・東京都中央区銀座6-8-3 (銀座のみゆき通り)
※ 平成27年基準地価格 17,700,000(円/平米) 変動率 19.6%
3位・・・東京都港区虎ノ門1-3-2 (虎ノ門の駅前)
※ 平成27年基準地価格 9,200,000(円/平米) 変動率 17.6%
どの地点も、商業・ビジネスの中核ゾーンですが、周辺部の再開発が活発なエリアです。例えば、表参道は隣の渋谷で大規模な再開発が進行中。銀座も数寄屋橋や旧松坂屋の建て替えなどで、街が大きく変貌します。虎ノ門では、昨年の虎ノ門ヒルズの開業や現在『虎ノ門駅前地区第一種市街地再開発事業』が進行中。地価駅前広場を整備するなど、街の利便も高められます。
商業地の上昇の要因として挙げられるのが、訪日外国人観光客の増加です。日本政府観光局(JNTO)発表の8月の訪日外客数は、1,817,100で対前年比63.8%の高い伸び率。1月からの累計でも12,875,400人で49.1%と大幅に増加しています。円安だけでなく、ビザの緩和といった施策面や周辺国の経済成長や成熟化、LCCの普及など様々な要因によるものですが、観光客で賑わう銀座の商業テナントの賃料が大きく上昇するなど、不動産価格にも影響が出ています。
また、観光庁の観光統計によれば、平成27年6月の延べ宿泊者数は、全国で3,813万人泊で、前年同月比+8.5%。外国人の伸びは、56.1%のプラス。東京都も35.6%の伸びでホテルの稼働率も上昇している。2020年に向けてホテル需要が高まっていくことが予想され、都心エリアの商業立地のニーズは増えていくでしょう。マンション用地との競合も予想され、価格形成にも影響が出てくるでしょう。
新築マンションの分譲価格が土地価格+建設費+諸経費で決まることを踏まえると、建設費の下落が当面見込めない中、来年以降の分譲価格が少なからず上昇していくのは避けられないことでしょう。多用途とも競合する立地に関しては今後さらに供給が減っていくかも知れません。一方で、全体的な所得の改善が見られない中、一律にマンションが売れることは考えにくいでしょう。マンションの商品性がより問われる時代になっていくのではないでしょうか。最近1年間の土地価格のトレンドを見ると、新築マンションに関して言えば先送りするよりも早めに検討した方が、価格面でのメリットはありそうです。まずは、どんなマンションが出ているか確認して、自分なりの相場観やモノサシを見つけることをお薦めします。