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女性活躍推進法成立 私たちの働き方はどう変わるの?

女性活躍推進法が成立しました。女性活躍推進は少子高齢化における労働力確保の切り札と言われていますが、当事者である女性の働き方にどのような変化が訪れるのでしょうか。政策の方針を踏まえながら、お伝えします。

小倉 環

執筆者:小倉 環

大学生の就職活動・女性のキャリアプランガイド

女性活躍推進法で女性の働き方にはどんな変化がある?

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女性活躍推進が法的対応される。女性が働きやすくなることで、日本の未来が明るくなることを期待!

8月に女性活躍推進法が成立しました。女性活躍推進は少子高齢化における労働力確保の切り札と言われていますが、当事者である女性の働き方にはどのような変化が訪れるのでしょうか。政策の方針を踏まえて、お伝えします。


制定された女性活躍推進法は、厚生労働省のホームページによると下記のように記載されています。

国・地方公共団体、301人以上の大企業は……

(1) 自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
(2) その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
(3) 自社の女性の活躍に関する情報の公表を行わなければなりません
(300人以下の中小企業は努力義務。以下略)

この女性活躍推進法はアベノミクスの 成長戦略で掲げられた2020年までに女性管理職30%の目標を達成するための時限立法ですが、実際にこれから女性の働き方にはどのような影響が考えられるのでしょうか。

その1 男性労働者の多い業界で女性の採用数が上がる

男女雇用機会均等法があるにも関わらず、業界・企業によっては従業員の男女比が男性に偏っている企業があるのが実際です。しかし労働力不足が顕著になってきている業界や企業では事業存続の危機にもつながっており、見直されてきています。実際に建設業界や運輸業界では、女性の採用数を増やし、活躍を進めている企業が多く出てきています。

たとえば国土交通省では市場は拡大しているものの人材不足になっている宅配業界の運転手確保のために「トラガール促進プロジェクト」なるプロジェクトを開始。タクシー業界でも同様に新卒女子の採用数を増やすために、企業イメージアップを図る企業が多く見受けられています。あるタクシー会社では女性が働きやすい職場にするために、全従業員を対象にセクシャル・ハラスメント防止研修をしたところ、性別への配慮意識向上がドライバーのお客様へのおもてなしにつながっているとの声を聞きました。

このように「男の職場」のイメージが強い企業において、女性が働きやすくなることで、企業競争力が高まる事例の一つといえるでしょう。

その2 転職市場で女性の採用が活発になる

女性活躍推進法が成立し、301人以上の企業は平成28年度4月1日までに行動計画を策定し、届け出をしなければなりません。しかしながら女性管理職の育成をしてきていない、あるいは女性管理職候補者の母数が少ない企業が多く見受けられます。そのため、中途採用で女性管理職候補を調達することが加速しています。優秀な人材であれば、後輩女性のロールモデルになってほしいと入社後に時短勤務を認められて、転職に成功するワーキングママのケースも出てきています。

また、実際にライフイベント前の未婚女性の転職理由の一つに「女性が結婚・出産しても働きやすい職場にうつりたい」という理由が多くなっています。そのため、女性活躍推進法により行動計画を策定している企業のほうが採用力が高まるでしょう。

その3 「くるみん」同様、認定企業の人気が高まる

仕事と子育ての両立支援を促進する
くるみんundefined女性活躍推進undefined子育て企業

次世代育成推進法の認定マーク「くるみん」と「プラチナくるみん」

「次世代育成推進法」において要件を満たした企業は厚生労働大臣の認定を受け、次世代認定マーク「くるみん」を企業PRに使用できます。

新卒採用の場面などでくるみん認定企業はイメージ向上のためにパンフレット等に使用して、女子学生にアピールしています。女子学生も企業選びのポイントとして、この「くるみん」について教えられているため、くるみん取得企業の人気は高いです。
女性活躍推進法も次世代育成推進法と同様に要件を満たした企業に対し厚労省が認定することが決定しています。PRマークの発布も予定しているので、「くるみん」同様、学生の企業選びに大きな影響を与えるでしょう。

その4 研修や教育機会を男性と同等に与えられるチャンスが増える

女性活躍推進法では女性管理職候補者を増やすために、企業はリーダー、マネジメント候補者向けの研修や教育機会を増やすことを求めています。大企業では女性向け研修は活発になっていますが、中小企業で教育研修の予算がない……という場合は助成金をつかって研修を企画することができます。その助成金は「ポジティブアクション加速化助成金(※1)」という今年度から制度化される予定です。取組目標達成時に30万円が支給されるので、人事担当者などに相談して、機会をつくってもらうとよいでしょう。

その5 働き方の見直しがすすむ

女性従業員の就業定着および管理職数を増やすとなると、家庭との両立で時間制約がある女性でも昇進機会を得られる職場環境であることが前提になってきます。一方、日本はOECD加盟国の主要先進国では労働生産性が連続して最下位であり、残業ありきの働き方を是正することが女性活躍推進の鍵と言われています。女性に活躍してもらうためには、時間制約のある当該従業員だけが早く帰るのではなく、全員が残業せずに帰れる環境に働き方を変えていくことが望ましいのです。

たとえばあなたの在籍する企業では就業時間のなかで時間を取られがちな「会議」の時間制限・運用ルールはありますか?短時間勤務をしている女性従業員は夕方の会議に出席できない人が多いものです。そういった従業員の参画を促すためにも会議は15時までと社内ルールを設けたり、時間制限をつくる、進行を効率化するためにも資料を先に配布し読み込んでもらっておく、議事録はホワイトボードを写メで済ませるなど、会議一つとっても業務改善できることは多いものです。このように働き方を変えていくことは、女性だけでなく、男性にとっても働きやすい職場となります。

そのほかにもマタニティ・ハラスメント、セクシャルハラスメントの法的対応の強化、配偶者控除の見直し、パートタイマーの被保険者適応の拡大、女性従業員の積極的な評価方法、男性管理職のイクボス化、雇用形態や職制変更など人事制度や職場環境の面で大きな変化が見られるでしょう。

施行は平成28年4月1日です。会社によって女性活躍推進のフェーズは異なりますが、何から手をつけてよいかわからないという企業はまずは経営層と男性従業員の意識変革から始めるとよいでしょう。今後労働力人口が不足し、このまま出生率が上がらないままでは2060年には現在の60%程度まで労働力人口が減ると言う試算も出ています(※2)。女性の活躍が急務ななか、制度整備や働く環境改善とセットで従業員一人ひとりの意識も変わっていくことが期待されています。

※1 厚生労働省 ポジティブ・アクション加速化補助金
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/posijyoseikinhaishi.pdf
※2 総務省発表
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