たまにはむちゃ食いする時もあるかもしれませんが、もしそれが頻繁化していたら、むちゃ食い障害にはご注意を!
もっとも、食べる時は節度を持って食べなくてはいけない。ふだんはしっかり頭の中にそれがあっても、その時ばかりはどこかへ行ってしまった……なんてことが、たまにあるかもしれませんが、もしそれが頻繁化していたら、実は心の病気、「むちゃ食い障害」の可能性も考えられます。
「むちゃ食い障害」……体が苦しくなるまで食べ続けてしまう
どんなにご馳走でも、おなかが苦しくなるほど食べ過ぎれば、あまり気分はよくなりません。場合によっては、自責の念が強まり、その償いにジムでふだんの倍ぐらい汗を流すようなこともあるかもしれません。食べ過ぎてしまう原因は人それぞれです。食卓にふだん口にする機会のない好物が並んでいたのかもしれません。あるいは、単におなかがペコペコだったのかもしれません。場合によっては慢性的な気分の落ち込みなど何らかの心理的要因がむちゃ食いに関与している可能性もあります。
むちゃ食い障害では通常、そのむちゃ食いが以下のようなレベルになっています。
- いったん食べ始めると、おなかが苦しくなるまで食べ続けてしまう
- むちゃ食いする時は食べる量が多いだけでなく、食べるスピードも速すぎる
- まったく空腹感がなくても、むちゃ食いしてしまうことがある
- むちゃ食いのときは他人に分からないように1人で食べる
- むちゃ食いのあとは気分がかなり悪くなってしまう
- むちゃ食いの頻度は週に1回以上、それが3カ月以上続いている
メタボリック症候群など健康面でも問題が現れやすい
むちゃ食い障害(binge eating disorder)は米国精神医学会が発行する診断基準の最新版DSM-5に、摂食障害の新しいカテゴリーとして加わりました。むちゃ食い障害の「むちゃ食い」はこの「binge eating」を意訳しています。摂食障害の代表的な病気は拒食症や過食症などですが、むちゃ食い障害は実は摂食障害のなかでは最も頻度の高い疾患のひとつです。性差は女性に多くなっています。
拒食症や過食症と同様、日常生活上の問題も深刻化する可能性があります。摂食行為をコントロールできない状態は自分に自信を失いやすく、場合によっては、社会生活にすっかり消極的になってしまう可能性もあります。
むちゃ食い障害は過食症とは異なり、大食したあと、それを償う行為(下剤の使用、嘔吐、過度の運動など)が通常ありません。むちゃ食いによる大食が多くなれば、体重増加が深刻化する可能性があります。場合によっては高血圧や高血糖など健康面でも問題が深刻化する可能性があります。
むちゃ食いにストップを掛けるには治療が必要です
いったんむちゃ食いが始まると、それにストップが掛からないまま、体が苦しくなるまで食べ続けてしまいます。摂食行為にコントロールを完全に失ってしまった状態とも言えます。失ってしまったコントロールを取り戻すためには通常、精神科的治療が必要です。週に1回、3カ月以上続くことがその基準になっていますが、未治療のまま深刻化すれば毎日のようにむちゃ食いしてしまう可能性もあります。
治療は個人個人の病状に応じて、むちゃ食いを起きやすくさせている心理的要因などに対処していきます。一般的には心理療法のひとつである認知行動療法と薬物療法を組み合わせた治療法が最も効果的になっています。
体重増加が顕著な場合は体重を適正なレベルまで落としていくことも望ましくなってきます。その際、自力でのダイエットはむちゃ食いの引き金になりやすいことから、ダイエットには通常、専門家の指導が必要になります。
むちゃ食い障害は人が生きていく上で、その基盤をなす摂食行為に深刻な問題が生じた状態です。むちゃ食い障害と聞けば、「なにそれ?」と反応される場合もあるかもしれませんが、その深刻さは過小評価しないようにありたいものです。
最後に、この食欲の秋に水を差すつもりはありませんが、この季節、むちゃ食いには気を付けたいものです。なお、過度のダイエットはむちゃ食いの引き金になりやすいことにもご注意ください。