VW(フォルクスワーゲン)/パサート

VWパサートは「最も質実剛健」なセダン&ワゴン(2ページ目)

8代目となるフォルクスワーゲン パサートは、どこまでも真面目なサルーン&ステーションワゴン。質実剛健というドイツ車への賛辞が未だに似合うクルマとしてさっそうと登場した。ゴルフのイメージが強い日本でのパサートのポジションとは……?

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

「VW=ゴルフ=よくできた大衆車」で苦戦

VWパサート

セダン(TSIハイライン)のボディサイズは全長4785mm(4775mm)×全幅1830mm×全高1470mm(1510mm) カッコ内はヴァリアントの数値

VWパサートヴァリアント

全長はほぼ旧型と同じながら、ホイールベースは79mm延長され2791mmに


日本でワーゲンといえば、もう圧倒的に“ゴルフ”のイメージが先に強く立つ。下手をすると、VWというブランドネームよりもゴルフの方が知名度では優っている。次いで、ポロ、か。正直にいって、その他モデルの日本における認知度は、はなはだ心もとない。新参者のティグアンやトゥアレグ、up! はもちろんのこと、比較的馴染みがあるはずのパサートにしたって、弱い。それだけ、ゴルフ、そのミニ版としてのポロが、日本のVWをほとんど背負っていると言っていい。

良し悪しであろう。強いモデルを持つこと自体、悪い話ではない。ビジネスの確固たるベースとして、どんな時代になっても一定の販売母数が期待できるからだ。けれども、それをベースにして、ビジネスをさらに拡大しようと思ったとたん、そもそもの立ち位置が問われてくる。そのブランドの、絶対的なポジショニングだ。

あいにく、VWゴルフは、メルセデス・ベンツの以前の主力モデルあたりと違って、“よくできた大衆車”として人気を確立してきた。そこそこの予算で買える、素晴らしい実用車である。そこに高級なイメージはまるでない。結局、ゴルフのイメージが、VWのブランドイメージそのものと言ってよく、その昔のビートル=ワーゲンとほぼ同じ様相になっている、といえるだろう。

そこでいつも問題になるのは、VWがゴルフより高いクルマを売ろうと考えたときだ。消費者のイメージは、「VW=ゴルフ=よくできた大衆車」、でほぼほぼ固まっている。庶民のちょっとした贅沢であり、その性能の世界スタンダード的な高さゆえ、ユーザーの選択眼そのものが自尊心に繋がっている。巷に転がっている商品よりは少し高いけれども、良いモノを見る目が自分にはある、という満足、シアワセだ。それは決して、高いブランド品を買ったときには得られない、ある種の快感であったりもする。

そうなると、それより“高い”ということ自体、VWブランドの魅力を削ぐことになりかねない。良いのは分かっていても、その値段でその大きさのワーゲンって、ちょっと……と、ついつい考えてしまうわけだ。このあたり、サルーン主体でブランドを築いてきたメルセデス・ベンツが、下の“階級”に進出して成功するのとは、ワケが違う。

VWパサートヴァリアント

モジュラーコンセプトの次世代プラットフォーム、MQBを採用。現行ゴルフから導入され、開発期間短縮やコスト削減に貢献する


というわけで、パサートはこれまで苦戦を強いられてきた。とてもいいクルマだし、ヨーロッパの大ベストセラーであるにもかかわらず、日本でのセールスはパッとしなかった。今回のモデルチェンジにしても、モジューラープラットフォームのMQB戦略に則って設計されたオールニューである、なんてことはユーザーの興味をまるで惹くことはないだろう。残念なことに、ただただ、大きいワーゲンのセダンとワゴンという立場から抜け出すことは、容易なことではないと思う。

VWパサートヴァリアント

ラゲージ容量はヴァリアンが650~1780L、セダンが586Lに。上級グレードにはパワーテールゲートや、センサーの反応で自動的に開くイージーオープン機能も備わった

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