ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

『RENT』2015の魅力をユナク、アンディが語る(3ページ目)

2012年公演から3年ぶりに帰ってきたロック・ミュージカル『RENT』。初日を前に、稽古場では白熱したリハーサルが続いています。初出演キャストと前回からの続投キャストが混在する今回、どんな舞台になりそうでしょうか。ロジャーを演じるユナクさん、そして日本版リステージを行うアンディ・セニョールJr.さんにお話を伺いました!*観劇レポートをUPしました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


日本版リステージ アンディ・セニョールJr.インタビュー

日本版RENTリステージを担当するアンディ・セニョールJr. (C)Marino Matsushima

RENT日本版リステージを担当するアンディ・セニョールJr. (C)Marino Matsushima

「リステージ」という言葉はちょっと聞き慣れないかもしれませんが、11年に『RENT』新演出版が誕生した際、マイケル・グライフの演出助手を務めたのがアンディ。今回、彼はその新演出版を日本で「再現して」いる、と言えばわかりやすいかもしれません。97年に『RENT』で俳優デビュー以来、出演者としてスタッフとしてこの作品から完全に離れたことは無い、というほど『RENT』を愛し、この演目に無くてはならない人物である彼。作品のメッセージ、そして今回公演の手ごたえをうかがいました。

――2012年から日本で新演出版のリステージをされているそうですが、新演出のポイントは?

「11年にマイケル・グライフが演出をリニューアルしたのは、オフ・ブロードウェイでの初演からブロードウェイに進出するまで全く時間がなく(注・2週間という短さ)、もうちょっと(演出で)どんなことができるか、探求したかったためです。ビデオの使い方をはじめ、主に技術的な部分で手をいれていきました」

――初演から20年近い時が経ち、社会的な状況が変化したことでリニューアルされたのかと思っていました。

「そうではないんです。作品の舞台は91年のNYで、そこにいかに真実味を持たせるかというテーマは変わっていません。社会状況という意味でいえば、“LGBT”というワードがよく聞かれるようになった今の日本では例えば(トランスジェンダーの)IVANが(ドラッグクイーンである)エンジェル役を演じることはとてもタイムリーなのではないかな。性転換を経験している彼はこの役にぴったりだし、実際稽古もとても楽しんでいますよ」

――今回のカンパニー、どうご覧になっていますか?

「僕はとても好きですね。エネルギッシュだし、キャストの中にはいわゆるスターも多いのに、お互い、そして作品に対して敬意を忘れない。キャリアステップとして本作をとらえている人は一人もおらず、自分を完全にショーの一部と意識しています」


「美しさ」に満ちた
今回のRENTキャスト

――ファンの方がたのために、メインキャストの一人一人について、コメントをいただけますか?

「ええ、もちろん。マーク役の村井良大さんは(表現者として)ハングリーで、作品をとても愛している。スポンジみたいな吸収力で、今はなんでもとりこんでいます。ロジャー役の堂珍嘉邦さんはRENTファミリーの中心的な人物として、日々みんなに接している。とても謙虚な人で、僕も大好きです。もう一人のロジャー、ユナク(超新星)さんは勤勉。韓国のポップスターだが、皆に敬意をもって接している。と同時に、抗えないような魅力があり、彼と仕事ができて嬉しく思っています。
製作発表に集結したキャスト(C)Marino Matsushima

製作発表に集結したキャスト(C)Marino Matsushima

僕はこの作品と長年関わっているけれど、ミミ役のジェニファーさんもそう(注・08年の東宝版初演から今回まで、4回連続出演)。作品を心から愛していて、正真正銘『RENT』ファミリーと言える人です。いっぽう同じくミミ役のSoweluさんは、今回が初挑戦だが自分の内面をさらけ出す演技ができ、観ていて感動せずにはいられません。

コリンズ役の加藤潤一さんは、オープンハートの持ち主。前回公演に引き続きの出演だけれど、技術面はもちろん、“男”としての成長を感じさせてくれる。もう一人のコリンズ役、TAKE(Skoop On Somebody)さんは落ち着いた、素晴らしい人。カンパニーのパパ的存在です。エンジェル役を演じる平間壮一さんとIVANさんはとても個性を異にする二人で、平間さんは高度なテクニックがあり、演劇的。IVANさんは演技経験は少ないですが、とても豊かな人間力がある方です。そんな二人が一緒に稽古をし、助け合っているのを見るのはとても面白いですよ。モーリーン役の上木彩矢さん、ソニンさんも作品をとても愛し、作品に自分を捧げています。ジョアンヌ役の宮本美季さんは今回が初挑戦ですが、自分をさらけ出して取り組んでいる。そしてベニー役のSpiさんはかなりのベテラン(注・10年にアンサンブル出演、12年からベニー役)ですが、彼も前回は男の子っぽかったのが、今回は“男”に成長していますね。

チームとしてもとても団結していて、稽古を見ていると美しいものを感じます」

――アメリカのキャストとはどう違うでしょう?

「やはり文化的な違いで、日本人は表現の仕方が異なるので、この作品においては例えば性的な部分について、より西洋風の表現に踏み込んでもらうようにしています。逆に、お互いを本当に理解し、本当に思いやろうとする姿勢は、日本人ならではだと感じますね」

――この20年近くの間に、この作品が意味するものは変わったと思いますか?

「そうは思いません。ジョナサン・ラーソンは“ファミリー(注・“血縁関係”という意味ではなく、“一緒に生きる者たち”の意)”“愛”そして“真実”についての、普遍的なミュージカルを書いたのだと思う。それは何世紀経っても不変であろうと思います」

――アンディさんが本作の中で特にお好きな曲は?

「(ロジャーとミミが「あなた無しでは生きられない」と歌う)“Without You”ですね。ステージングもゴージャスだし、体の奥深くで共感できる曲なんです」

――では、この作品全体の魅力とは?

「真実を描いている、ということ。常にこの作品をベストの形でお見せできるよう力を尽くしたい、と思わせるものがあります」
「RENT」2012年公演より。写真提供:東宝演劇部

「RENT」2012年公演より。写真提供:東宝演劇部

――今回、日本の観客にどうご覧いただきたいですか?

「それぞれのキャラクターを通して、心を動かし、何か新しい可能性を感じてほしいですね。皆さん、いろいろな状況の中で、もしかしたら問題を抱えながら生きていらっしゃると思いますが、人生について、人間関係について、まだそこには可能性がある、と。

本作はシンプルなロック・エンタテインメントであるように見えるかもしれません。もちろんロック・ミュージカルだし、娯楽的な要素もありますが、決してそれだけではない、深い真実がこの作品にはあります。あなたの人生を変える可能性が。」

*****
かたや出演者、かたやスタッフと立場は違えど、ユナクさん、アンディさんの『RENT』、そして今回のカンパニーへの愛着と信頼は揺るぎないものでした。なぜここまで、固く信じることが出来るのか。本作を一度でもご覧になったことのある方なら、きっと頷けるものがあることでしょう。まだ『RENT』を体験したことのない方も、久しぶりという方も、アンディの言う「真実」を掴みに、ぜひ劇場へお出かけください!

*公演情報*『RENT』9月8日~10月9日=シアタークリエ、10月16~18日=森ノ宮ピロティホール

*次頁で『RENT』観劇レポートを掲載しています*
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます