定年・退職のお金/老後資金の貯め方

「資産運用は難しい」と思うとはまる罠

50歳になって、ようやく資産運用を始めてみようと考えた人にとって一番のハードルは、何やら資産運用がとても難しいものに思えてしまうことかも知れません。で、そこに罠があります。それは一体何か。どうすれば、そのような罠にはまらずに済むのかを考えてみましょう。

鈴木 雅光

執筆者:鈴木 雅光

投資信託ガイド

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投資は面倒くさいもの?

書店に行って、資産運用の本を開くと、何やら難しい言葉がたくさん並び、ワケの分からない棒線(チャートのこと)の説明ばかりされている。こんなの分かるわけがないと思っている中年サラリーマンも少なくないと思います。

書店に並んでいる資産運用関連本の大半は、恐らく50歳になって初めて資産運用をやってみようと思い立った人が読むには、かなりタフです。こういう本を目の当たりにすると、「ああ、資産運用なんて面倒。働いてコツコツお金を貯めればいいや」ということになりかねません。

でも、仮にこの超低金利がまだしばらく続くとしたら、預貯金でお金を殖やすのは困難です。やはり多少なりとも、株式などのリスク資産に資金を振り分けないと、リターンは得られません。

運用を人任せにできるラップ口座(ファンドラップ)

それと、難しいから人任せにしてしまうケースもあります。最近、流行のラップ口座などは、まさにその典型といっても良いでしょう。

ラップ口座といってもさまざまなタイプがあり、ここでは複数の投資信託でポートフォリオを組んでくれる「ファンドラップ」を取り上げます。このサービスはヒアリングシートで簡単な質問項目に応えると、その人のリスク・リターンプロファイルに合った投資信託のポートフォリオを組んでくれます。つまり、自分で考えてポートフォリオを組む手間が省けるのです。

その代わり、ファンドラップは高いコストを要求されます。ファンドラップは複数の投資信託をパッケージにしたもので、そのパッケージ内での購入、乗り換えなどには一切、コストが掛かりません。ただし、投資信託の運用管理費用に加え、ファンドラップフィーが掛かります。運用管理費用は投資信託によっても異なりますが、たとえば年率で1.5~2%程度。これにファンドラップフィーとして年率2%程度が加算されます。合せて最大年率4%のコスト負担は、相当に割高です。

ラップ口座は高コストなのがネック

年間4%というコスト負担がいかに重いものであるかは、資産運用の平均的なリターンと比べれば分かると思います。

といっても、個別銘柄で元本が10倍になったといったハイリスクな投資法との比較は、まったく合理的ではないので、ここではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のリターンと比べてみましょう。

GPIFは、集めた年金保険料を、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、短期金融資産に分散して運用しています。そのリターンは、2001年度から2014年度までの13年間で、年3.18%です。2014年度のように年12.27%という高いリターンを実現することもあれば、2008年度のようにマイナス7.57%と大幅に下落するケースもあります。それらを平均して年3.18%というわけですが、それと比べても、年4%のコスト負担はあまりにも重いと言わざるを得ません。

自分でポートフォリオを組めばコストは抑えられる

そんなに重いコストを負担しなくても、自分でポートフォリオを組めば、もっとコストは安く抑えられます。たとえば、すべてETF(上場投資信託。証券会社で株式のように売買できる)を用いて、

・国内株式:東証株価指数(TOPIX)
・外国株式:MSCIコクサイ
・外国債券:シティ世界国債インデックス

という3つのインデックス(株価指数)に分散投資するだけで良いのです。

売買する際には、株式と同様に売買手数料は掛かります。しかし運用管理費用が年0.1~0.25%程度と格安なので、トータルのコスト負担はかなり低くなります。

ちなみにMSCIというインデックスは、日本を除く世界先進国の株式市場に分散投資したのと同じ投資成果を目指すものです。加えて国内債券のインデックスはありませんが、これは日本国債のインデックスに連動するETFが存在していないからです。この部分は円建てで、元本割れリスクの低いものを組み合わせれば良いので、たとえば円建て預貯金でもいいですし、個人向け国債を付け加えてもいいと思います。

投資する金額は、等分すれば十分です。そう考えれば、資産運用など簡単なものです。

難しいと思って人任せにすると、それだけ高いコストを要求されます。金融機関は常に、個人から少しでも多く手数料などを取ってやろうと考えているからです。いつまでも投資は難しいなどと思っていると、その罠にはまるリスクに直面するのです。

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