FR系とは別次元のBMWである
試乗に借り出したのは、もちろん、218dで、売れ線になるだろうMスポーツだった。
最初にほめておくと、ビーエムの、あのうるさいディーゼルが静かになった! 実はこのエンジン、3シリーズ用とは違う新世代。エンジンがかかる瞬間など、外で聞けばディーゼルっぽい音がするけれども、ドアを閉めて中に居る人には、ほとんどそれらしき音は聞こえない。3シリーズの初期には、ノイズもバイブレーションもひどかったから、よりコンパクトな2シリーズでこの静かさは、大きな進歩である。
パワーフィールも、相当なもの。軽~くアクセルペダルを踏み込むだけで、弾かれるように前へ進む。ふわっと踏んだ右足の裏に、もりもりと力が伝わってくる感覚が、いかにもヨーロッパのイマドキ・ディーゼルターボで、おもわず頬も緩む。たとえ7人乗りFFワゴンであっても、BMWブランドのスポーティなイメージを実感できるという点で、お似合いのキャラクターかもしれない。
ただ、最近は特にそう感じるようになったのだけれども、ディーゼルターボの加速フィールは、どうにもトゥマッチな気がしてならない。特に、この手のコンパクトな実用車系で、毎日使うクルマで、はたして、ここまでの“もりもり”感は必要なのだろうか? BMWはまだいい。元気に走る、というブランドイメージがある。けれども、他のブランドでは、どうだろう?
ほどよく気持ちのいい加速という点で、ガソリンエンジンにはまだまだ捨て難い魅力があると、ふたたび思うようになった。
もっとも、最新モデルには、走りのキャラクターを変えることができるよう、走行モードセレクトが備わっている場合が多いから、例えばBMWなら、プロエコモードでじんわり加速を選ぶこともできるわけだが…。
その、分厚い加速フィールに対する葛藤、単純に“コイツ速ぇ~”と思う自分と、“いつも速くて面倒くせ~”と思う自分、を抱きつつ試乗を続けていくうち、ついに後者が優ってしまう。なぜなら、乗り心地が、この手のクルマにしてはやっぱり硬いと感じてしまったからだ。初期に試乗したアクティヴ ツアラーよりもかなりこなれてきたようには思うし、FFミニバンタイプにしてはBMWらしい身のこなしだとは思う。けれども、いくらMスポーツだったからとはいえ、フラットなライド感覚が強過ぎて、イマドキの乗り心地とはいえない。
フロントエプロンのエアカーテンやDピラー後方のエアブレード、フラットなアンダーボディなどによりCd値0.28を実現。エアカーテンはフロントエプロン両端のエアインテークから取り込んだ空気をフロントホイールアーチへと送り込むことで、ホイール側面をカーテンのように覆い空気抵抗を低減させる
もっとも、そこで日和って柔いキャラにしてしまうと、BMWが7人乗りのMPVを作る理由がなくなるような気もする。結局のところ、BMWをこれまで堪能してきた人ほど、この新しいFFモデルたちには、ある種の“困惑”を覚えてしまうということなのだろう。
結論として言っておくと、FFモデルは、それらしく走るように味付けされてはいるものの、FR系とは別次元のBMWであるというシンプルな事実認識が、今のところはまだ、有効なのだった。