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ラジオは古いけど最先端、吉田尚記が語るメディア論

Twitterのフォロワーは約13万人。ラジオだけでなく、様々なメディアでも活躍するニッポン放送の吉田尚記アナ。近著『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』も話題の彼に、「ラジオとは何か」「メディアとは何か」を縦横無尽に語ってもらった。インタビュー記事の後編、知的なマシンガントークが炸裂する!

執筆者:All About 編集部

Twitterのフォロワーは約13万人。ラジオだけでなく、様々なメディアで活躍するニッポン放送の吉田尚記アナ。近著『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』も話題の彼に、「ラジオとは何か」「メディアとは何か」を縦横無尽に語ってもらった。インタビュー記事の後編、知的なマシンガントークが炸裂する!
ニッポン放送、吉田尚記(よしだひさのり)アナウンサー。2006年4月3日放送開始の『ミュ~コミ』、同番組の後継となる『ミュ~コミ+プラス』(2010年放送開始)でパーソナリティを務める。2012年には同番組のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞 DJパーソナリティ賞を受賞。近著は『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』。

ニッポン放送、吉田尚記(よしだひさのり)アナウンサー。2006年4月3日放送開始の『ミュ~コミ』、同番組の後継となる『ミュ~コミ+プラス』(2010年放送開始)でパーソナリティを務める。2012年には同番組のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞 DJパーソナリティ賞を受賞。近著は『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』。


インタビューの前編はこちら


ニュースメディアとしてラジオほど効率的なメディアはない

――ここまで「ラジオの面白さ」について語っていただいたわけですが、情報メディアにおけるラジオの立ち位置や役割について、吉田さんの考えを聞ければと思います。
吉田尚記氏(以下、吉田) まずひとつ言えることとして、何かほかのことをしながら消費できるメディアってラジオくらいしかないんですよね。だから個人的には「なんでみんなもっとラジオを使わないんだろう?」って不思議に思う。それと、ニュースメディアとして、ラジオは非常に優秀。たとえばテレビは視聴者からの批判を非常に受けやすいから、無味無臭なことしか言えなくなりがちです。一方ラジオは、直前まで誰にも相談することなく、生放送でいきなり喋れてしまう……もちろん、その人の責任において、ですけどね。たとえば最近だと、元外務省主任分析官の佐藤優さんが出演しているラジオ番組は本当にスゴイ。


――朝の番組『高嶋ひでたけのあさラジ!』でニュース解説をやっているんですよね。
吉田 このあいだの特番もすごい反響があったそうです。だけど、内容的にはテレビで絶対に喋れないものだったと思う(笑)。そもそも、ラジオは番組作りの効率性においても優れているんですよ。たとえば、テレビで何かのニュースを扱うとなったら、その話題に関連した映像が必要になりますけど、ラジオは言葉で説明すればいいだけ。本来、情報というのはテレビであろうと本であろうと、大元は人の知識から生まれますよね。それを正しく伝えることができれば、メディアはなんだっていいわけで、その点においてラジオは余計なステップを踏まなくて済む。ちなみに、佐藤優さんがラジオに出る理由も「ダントツで効率的だから」とおっしゃっていました。自分の喋ったことを多くの人に伝えるという部分で、ラジオほど効率的なメディアはない、と考えているようです。


――ラジオは効率的、というのは改めて考えるとその通りですね。
吉田 情報受け取る側のリテラシーが高い場合は、むしろテレビのニュースみたいに無味無臭なものだと効率が悪いかもしれません。少し尖っているけど、プロの意見を直接聞けてしまうラジオのほうがずっと役にたつと思うんですよ。


――お話を聞いていると、ラジオにおけるニュースの扱いは、インターネットの“ブログ論壇”に近いところがある気もします。個人が色々な手間を省いて、世間に情報を発信していくという点において。
吉田 非常に近いですね。一方、ラジオとブログで決定的に違うところもあります。ブログは情報が保存・蓄積されていくから、たとえば10年前に書かれた記事が読まれるのもおかしなことではない。だけど、ラジオではそういうことがほぼありえません。世の中に対する浸透のしかたが違うんですよね。ラジオは瞬間的に横へ広がる力はあるけれど、アーカイブされていく力がない。それに対してブログはアーカイブの力が強いから、たとえ記事をアップした直後にあまり読まれなくても、あとになって人が集まることもありえる。アーカイブ力の低さが、ラジオの弱点であり、同時にもったいないところだと感じてしまう。だから自分は、インターネット時代になってブログ文化がここまで一般的になったんだから、力のあるパーソナリティの言葉はどんどん蓄積して、ネット上に残していくべきだと考えているんです。


ラジオ=最先端のライフハックである

インターネット全盛の時代、ラジオはいかなる情報を扱うべきなのか?

インターネット全盛の時代、ラジオはいかなる情報を扱うべきなのか?

――吉田さんはTwitterとラジオの連携にいち早く取り組んでいました。現在のインターネット文化についてはどうお考えですか?
吉田 最近、評論家の宇野常寛さんが「活字離れってウソじゃないか?」という指摘をしていました。Twitterを始めインターネットは基本テキストのメディアなわけで、いまほど人々が活字を読んでいる時代はほかにないんじゃないか、と。一方で、ネット上でのコミュニケーションは、非言語化が進んでいる面もある。LINEのスタンプはそうだし、インスタグラムも非言語的、ニコニコもYouTubeもそうですね。さっき話したニュースとは逆で、コミュニケーションは実際に見たほうが早い。「百聞は一見にしかず」の時代なんだと思いますね。


――そんな時代において、ラジオの有効性とは?
吉田 YouTubeがユーチューバーですごく盛り上がっているところにヒントがあるかもしれません。いまユーチューバーがやっていることって本質的にはラジオと近いんですよ。自分ではやりたくないことをやらされる、というエンターテインメントの基本。実際、僕が『ミュ~コミ』および『ミュ~コミ+プラス』でやってきたことは、いまユーチューバーがやっていることとあまり変わらないんですよね。罰ゲームで、赤いベストと麦わら帽子をかぶって、井の頭公園のボートに乗りながら「海賊王に俺はなる!」って言わされるとか(笑)。

あとは、さっきも話したことですけど、何かをしながら聴けるというメリットはやっぱり重要。情報をたくさん集めることが正しいとは言い切れないけど、間違いなく効率的ではあるし、それをずっと供給し続けているラジオはやっぱり代え難い存在だと思います。ポジショントークになってしまうかもしれませんが、僕に言わせればいまの日本の社会はラジオの効率性をうまく使いこなせていない。


――いま風の言葉で言い換えるなら「ラジオは最先端のライフハック」というところでしょうか。
吉田 実際そうなんですけど、問題なのは聴く側だけでなく、ラジオを作る側もそこにちゃんと気がつけていないところがある……。僕たちがやっていることは“新しいこと”のハズなのに、「昔なつかしの番組」みたいなことをやりがち。実際、不思議なことにラジオには“懐かしい”という感情を刺激する何かがあるんですけど。小学生が「懐かしい~」と言っていたりしますから(笑)。ただ、僕自身はその“懐かしい感覚”に乗っかっていく必要はないと考えています。


――では、ラジオの可能性を広げるモノ・コトで吉田さんがいま注目しているものはなんでしょうか?

吉田 うーん、そうですね……絶対におかしいと思っているのは、ラジオの情報を扱うポータルサイトがないこと。ラジオを週に1回以上聴く人の割合が非常に高いイギリスでは、ほとんどの人にお気に入りのDJがいるという状況のようですが、日本がそうなるためにはポータルサイトが絶対に必要だと思う。いままでラジオを聴いていなかった人が、いざインターネットで「ラジオ」と検索したときに、ラジオのポータルサイトが出てこないといけないんです。情報の流動性がないところにブームは起こりません。「このラジオ番組がおもしろい!」といった情報が蓄積されていて、オススメもしてくれる場を作る必要があるでしょう。

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