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ラジオは古いけど最先端、吉田尚記が語るメディア論(2ページ目)

Twitterのフォロワーは約13万人。ラジオだけでなく、様々なメディアでも活躍するニッポン放送の吉田尚記アナ。近著『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』も話題の彼に、「ラジオとは何か」「メディアとは何か」を縦横無尽に語ってもらった。インタビュー記事の後編、知的なマシンガントークが炸裂する!

執筆者:All About 編集部

生放送を続けて15年、吉田尚記がイマ考えていること

――『ミュ~コミ』から始まり現在では『ミュ~コミ+プラス』。それ以前に担当していたオールナイトニッポン時代も含めれば、生放送をやって15年以上になりますが、この期間を振り返って思うことは?
吉田 「国民的○○」がどんどんなくなりましたよね。いまはみんな考えていることがバラバラで、たとえば世間にほとんど知られていないのに、武道館を満員にするアーティストが最近はたくさんいる。これって、昔では考えられなかったことですよね? でも、いまではそういうことが当たり前になった。その背景にはネットの普及というのがもちろんあって、津田大介さんも「ネットは動員の革命」を起こしたと話しています。その意味で、ラジオが世間を動かす力は弱まってしまったことは認めざるをえない。ここ最近で唯一あった世間を動かした例と言えば『トイレの神様』ぐらいかな。

だから、今後ラジオというのは、文化的にセグメンテーションを強めるべきかもしれない。大勢に与せない人たちや「何か違うんじゃないかな?」と感じている人たちの方を向かなければいけないんじゃないかと思う。Twitterもそうで、テキストも含めた生放送を始めたときに、Twitterは本当にラジオに近いと感じた。つまり、しゃべり言葉もラジオ局という設備を通さないと誰にも届かないけれど、マイクの前に座ってラジオ局の設備を通せば、関東一円ラジオをつけているほぼ全員に届くわけです。

TwitterもTwitterというメディアを通せば、その人の脳内から生まれた言葉、自分の打ち込んだ140文字がその瞬間に何万人も同時に見られる可能性がある。あとは、ラジオもTwitterも影響力のある人が存在していて、その影響力のある人たちの言うことをみんなが積極的に聞いている。そう考えると、いまはオピニオンリーダー的なグラフがTwitterに移った面もあるかもしれない。だけど本来、そういったことはラジオがやっていたんですよね。


――ちなみに、ウケるパーソナリティーの条件って何だと思いますか?
吉田 それがわかったら自分がそうなっていますよ(笑)。でも、唯一言えるとすれば、ラジオはマーケティング的な観点でウケようと思っても無理。番組を作る側でそうすることはある程度できるかもしれないけれど、自分自身が狙ってそうなろうと思ってもまず難しい。

『ミスター・ビーン』で知られる俳優のローワン・アトキンソンが言っていたことなんですけど、「役者というのは、生涯本当のアタリ役はひとつしかできない」ということなんです。ローワン・アトキンソンはミスター・ビーンだけだし、渥美清さんだって『寅さん』を超える役には出会えなかった。ラジオパーソナリティもそれと同じで、自分が本来持っているものとは違う価値観で世の中に出ていくのは恐らく無理なんですよ。ラジオは「この人はどういう人なんだろう?」という真実味をリスナーが探るから、その人が生涯貫いているものしか伝わらない。


吉田氏の圧倒的な「現場力」が、番組を面白くしている!

吉田氏の圧倒的な「現場力」が、番組を面白くしている!

――それで言うと、吉田さんはあらゆる“現場”に足を運ぶことが、リスナーに対する真実味であり説得力になりますね。
吉田 まあ、それがしたくて生きていますから(笑)。昔、つボイノリオさんがインタビューで「必ず毎日映画を観に行くか、美術館に行くか、本を読むかしている」と語っていたことはすごく覚えていますね。だから、ラジオパーソナリティの共通点としては「よくモノを知っていること」も重要。例えば、西川貴教さんもすごく色々なことを知っているし、声優さんやアイドルでも人気がある人はやっぱりモノを知っている。


――『ミュ~コミ+プラス』でも、吉田さんの「モノを知っている」ところがすごく活きていると思います。
吉田 自分が『ミュ~コミ+プラス』で何をやっているかというと、自分だけが考えていることを勝手に分析して、その瞬間に喋っているということかもしれない。少し話がズレるんですけど、アナウンサーの仕事の面白さって、どこにいてもいいっていうことだと思うんですよ。国会にいてもいいし、アイドルのライブにいてもいいし、災害現場にいてもいい。だけど、タレントやお笑い芸人さんだとそうはいかない。僕がアナウンサーとして裁判を傍聴しても違和感はないけれど、阿蘇山大噴火さん以外のタレントやお笑い芸人さんがそれやると「何やってるの?」って変な感じになってしまう。

「最もいろんなところに行ける職業」というのは、アナウンサーのすごい強みですよね。だから僕は実際にいろいろなところへ行くわけで、そういった人間だから見られたことや感じられたことを、そのまんま出せる場所が『ミュ~コミ+プラス』。そんなことを10年間、週に4回ペースでやっていて、いまだに喋ることに飽きたことがないわけです。『ミュ~コミ+プラス』はそういう番組なんだよって、色々な人に知ってほしいですね。


――いちばん時代と寝ている男(笑)ですね。
吉田 うん、すごく時代と寝ている。時代加藤鷹ですよ(笑)。でも、現場へ足を運ぶことは本当に大事。たとえば、この1年間で千葉に行ったことがある、大宮にも横浜にも、都内であれば秋葉原、新宿、渋谷、池袋はもちろん、町田や祖師ヶ谷大蔵、千歳烏山とかのローカルなエリアにも行った……という人、どれだけいますかね。実際、そんなにいないと思うんですけど、僕は行くわけですよ。この番組が聴ける地域のことを知らないで、放送をやっちゃいけませんから。そういうことは本当に意識しているんです。だから僕は「口じゃなくて足がしゃべっている」のかもしれませんね。


――「少数派だけどひとりじゃない」、「ラジオはカップ戦」、「アナウンサーはどこにいてもいい職業」、そして「口ではなく足でしゃべっている」。今日はたくさんのパンチラインをいただきました。
吉田 最後はちょっと意識しすぎましたけどね(笑)。


<番組情報>
◆ニッポン放送『ミュ~コミ+プラス』
◆放送日時:毎週月曜日~木曜日 24:00~24:53
◆出演:吉田尚記、松井玲奈(月曜アシスタント)、田所あずさ(火曜アシスタント)
◆番組HP:http://www.allnightnippon.com/mcplus/
◆番組Twitter:https://twitter.com/mc1242
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