アドバイス1 ライフイベントに合わせながらひとつずつクリア
ご相談者のYさんが心配されていることをまとめると、増えない収入に対して教育資金、老後資金、そして母親の介護費用をどう備えていくか、ということになるかと思います。多くの同世代の人が共通の不安を抱えているでしょうが、実際にはどれもこれも一度には解決しません。今後、順番におとずれるライフイベントに合わせながら備えていく、つまりは資金に優先順位をつけてひとつひとつクリアしていくという考えでいいのではないでしょうか。
また、Yさんの場合、有利な点があります。ひとつは負債がない。住宅を現金で購入しているため、貯蓄ペースを高めることができます。もうひとつは、すでにまとまった貯蓄があるということ。その意味で、過度に心配しているという気もします。
もちろん、さまざまなリスクを想定しながら慎重にマネープランを考えることはとても大切ですが、それにより必要以上に自分を追い込んでしまっては意味がありません。したがって、ある程度の資金の目安を定めて、不安を解消していく作業が必要になってくるでしょう。
アドバイス2 貯蓄ペースを維持できれば老後資金も安心
では具体的に考えてみましょう。まず教育費ですが、高校まで公立と想定すれば、用意すべきは大学費用。進路に寄ってかかる費用は異なってきますが、たとえば私大文系とすれば卒業までに1人400万円。また、心配されている仕送り費用ですが、その平均額は月7万円ほど。4年間で336万円ですから、多くかかるケースで1人750万円、2人で1500万円となります。
その資金ですが、現在毎月25万円、ボーナスで80万~90万円の貯蓄ペース。上のお子さんが高校卒業時点で約5400万円貯まる計算になります。まったく問題なく用意できます。
お母さんの介護費用ですが、今後、どのような介護が必要になるか、またどんな介護を望むかで費用は当然異なってきます。平均額で言えば、介護保険を利用した上での自己負担額は月3万~5万円と言われています。介護に要する年数を長く見積もって10年とすれば500万円前後。また、全額をYさんが賄うのではなく、お母さんの資産なども介護費用に回すことができるはずです。介護による家族の負担は経済的なものだけではありませんが、少なくとも費用に関してはクリアできるはずです。
老後資金についても、もちろん、その過ごし方や健康状態でかかる費用も変わります。それでも、先ほどの貯蓄ペースを維持していけば、退職金を考慮しなくても、60歳時に8500万円貯まります。現在すでに1200万円ありますから、教育資金や介護資金を差し引いても、安心できる額の老後資金は用意できると言えるでしょう。
アドバイス3 投資30%は無理なくできる範囲
株式投資についてですが、現在の国内市場を見ると躊躇するとのこと。これは、アベノミクス以前に投資経験がある人だからこその意見です。あの時代の株価低迷を思えば、今の相場は確かに過熱していると感じる方がむしろ自然です。では、本当に今の国内市場はバブルなのか。意見はいろいろあるかと思いますが、私はまだ上昇余地はあると考えています。上がるペースは落ちるかもしれません。また、途中にはそれなりの調整も入るでしょう。それでも、長期的には上昇トレンドにはあると思います。
投資スタンスしては個別の割安株を根気よく探していく。NISAを上手く活用するのもポイントでしょう。また、30%ほどを株式投資に回すと考えられているようですが、現在の貯蓄ペース等を考慮すれば、その配分で問題ないと思います。ただし、一気にではなく、10%、20%と市場を見ながら、段階的に配分を増やしていってください。保険については、学資保険はあえて入る必要はありません。
しっかり分けて貯蓄していけば、どんな貯蓄商品で教育費を準備しても構わないのです。火災保険は、家計にも余裕がありますから、加入しておけば安心でしょう。ただし、保障内容は支払い条件などが複雑ですので、よく保険会社に説明を受けてください。また、不安であれば地震保険も合わせて加入しておくといいでしょう。
Yさんから寄せられた感想
深野先生アドバイスありがとうございます。お金のことはなかなか他の人に相談できないことなので大変参考になります。一番の現在の不安要因は給料が増えないことだと思っています。(現在の給料は毎月80時間以上の残業によります。出るだけいいとも言われますが……)介護保険はまだ制度についてはまったく理解していないのですが、思いのほか負担は少なそうなので安心しました。NISAはとりあえず口座だけは作ってみました。2人ともフルタイムで働いているので子どもと接する機会が少なくなってしまうのが悲しいのですが、現在の貯蓄ペースを保ってやっていけばなんとかなりそうなので頑張ってやっていこうと思います!教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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