2つの意味で「伝説」を作った
ビートたけしがラジオ伝説のど真ん中に君臨することについては、誰も異を挟むことはないと思います。ただそれに加えてもう一つ、伝説の主と呼ぶべき由縁が彼(正確には、高田文夫も含めて)にはあります。レジェンドとなったたけし・文夫のコンビは、また、レジェンドの作り手でもあったのです。もっとも有名なのがいわゆる「村田英雄伝説」です。歌謡界の首領的存在だった村田先生の珍エピソードを毎回紹介するうち、リスナーからの「目撃情報」が届くようになり、虚実入り混じった伝説群が出来上がった。ってことになってますが、なに、本当のところは最初から脚色満載のネタでした。
村田先生だけでなく、毎週オープニングで話してきたエピソードトーク、高倉健、大島渚といった超大物から、浅草でたむろってたホームレスのような面々まで取り上げては、爆笑トークに仕立て上げてきました。こうして伝説を作り続けていったことで、自分達もまた伝説となっていったのです。
リスナーの数だけ伝説が
スペースの関係上、ここではビートたけしのみを論じましたが、もちろん伝説のDJは大勢存在します。ラジオというメディアの特性として、1人1人に語りかけているように感じられるんですね。ということは、リスナーそれぞれが伝説のDJを持っているとも言えます。ざっと思いつくだけでもタモリ、所ジョージ、コサキン、カメ&アンコー、伊集院光、笑福亭鶴光、萩本欽一、ナインティナイン(岡村隆史)、糸居五郎、ナッチャコ……、そうそうたる伝説のDJばかりですが、ほんの一部だともいえます。ここに挙げた方々は全員東京キー局で活躍されてた方々ですが、当然ながら全国には遥かに大勢のレジェンドが存在しています。
当ガイドの出身地・広島にも柏村武昭という伝説のDJが存在しました。全国的には「お笑いマンガ道場」の司会者として知られてますが、中四国地方ではまさしくカリスマでした。番組が簡単に聴ける今であれば、ラジオビギナーの皆さんはアンテナを張り巡らせれば、自分にとっての伝説を見つけられるかもしれません。
新たなラジオの歴史を切り開くのは、間違いなくニューカマーのリスナーだと信じています。