ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.26 霧矢大夢、運命に導かれて(2ページ目)

宝塚歌劇団の月組トップスターを経て、2013年に『マイ・フェア・レディ』で女優デビューを果たした霧矢大夢さん。その後も輝くばかりの存在感を発揮している彼女ですが、この秋には松本幸四郎さんが1207回も主演し続ける名作『ラ・マンチャの男』に、8代目のアルドンザ役として参加します。大作に取り組む抱負やいかに?*観劇レポートを掲載しました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

アルドンザという役が内包する
“女性”の生命力を探求中

『ラ・マンチャの男』記者会見にて。(C)Marino Matsushima

『ラ・マンチャの男』記者会見にて。(C)Marino Matsushima

――劇中劇で演じるアルドンザは、場末の宿屋で働く野性的な女性で、ドン・キホーテからなぜか「ドルシネア姫」と崇められるも、男たちに蹂躙されるという壮絶なお役。彼女がこんな目に遭う意味合いはどういうところにあると思われますか?

「女性としては、とても厳しい役どころですよね。“こんなふうに生きていくしかないのさ”と歌うシーンもあるのですが、それでもなぜ彼女は、生き続けることができたのか。ドン・キホーテに対して“なぜあなたはそんなに騎士道を求め続けるのか”と自分から発信してゆく様子などを見ていると、彼女は根本的に自分の置かれている状況に屈していなくて、あきらめていない。ドン・キホーテという存在にも刺激を受けて、自分自身の生き方を見つめなおせるバイタリティのある人なんですよね。

根本的に、女性は強いのかな、と思えます。言葉にすると薄くなってしまうかもしれませんが、男性がドン・キホーテのように彷徨える存在であるのに対して、女性は母なる大地のようにいろんなことを受け止めて生きてゆける。そういう女性の生命力を、アルドンザを通して表現できたらいいのかなと思います。最後にドン・キホーテの肉体は滅んでいきますが、彼のテーマをアルドンザが歌い、その魂を受け継いでゆくような流れになっています。女性としての“人生のとらえ方”を、悲惨な目に遭いながらも失わない人として演じられたらいいですね」

――音楽的にはミッチ・リーの本作はいかがですか? プラシド・ドミンゴ主演のCD版を聴くと、アルドンザを歌っているオペラ歌手の方は地声と裏声を行ったり来たりしていて、音域的に大変そうなナンバーに聴こえました。

「そうなんですよ。そこではおそらく男役の経験を活かせる部分もあるかと思いますが、それだけなく、クラシカルな発声での表現もできなければいけないので、喉のコンディションを含め、これからの大きな課題の一つになってくると思いますね」

――今回、特にご自身のテーマとされていることはありますか?

「すべてですね。先ほども会見で皆さんのこの作品に対する思いや情熱、役者人生ひっくるめての思いをうかがっていると、そこに自分も役者として人として、プライドをぶつけられるのかなあと思いますし、そういったことがすべてテーマになってくると思います。私の仕事人生においても、とても大きな体験になるような気がしますし、何かの力でここに導かれたように感じているところです」

*次頁では霧矢さんの“これまで”を伺います。ダンス好きの少女が宝塚に首席で入団、順風満帆のなかで経験した挫折は、彼女に何を与えたのでしょう?
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