霧矢大夢 大阪府出身。94年、宝塚歌劇団に首席入団し、同年初舞台。09年に月組トップスターに就任、『スカーレット・ピンパーネル』等で主演。12年に退団、13年に『マイ・フェア・レディ』イライザ役で女優デビュー(16年7~8月に再演予定)、14年『オーシャンズ11』『ヴェローナのニ紳士』などで活躍している。(C)Marino Matsushima
牢獄の人々が劇中劇として演じるドン・キホーテの物語を通して、“見果てぬ夢”の崇高さを描くミュージカル『ラ・マンチャの男』。先日、都内で行われた製作発表記者会見では、ほぼ出演者全員による圧巻の歌唱披露も話題となりましたが、1969年の日本初演からセルバンテス/ドン・キホーテを演じ続け、今回実に1208回目からの出演となる松本幸四郎さんの「生きていれば夢を失うことはある。それでも立ち上がろうという気持ちになっていただくために演じ続ける」、そして77年公演から牢名主を演じ続ける上條恒彦さんの「いまだに夢は何も達成できていない。おそらく生を終える時まで叶わないと思うけど、本作に出演している間は頑張ろうと思える」など、人生経験に裏打ちされたコメントが続出。最後に幸四郎さんが味わい深く歌った「The Impossible Dream」には涙をぬぐう記者も見受けられるほど、感動的な記者会見となりました。
その直後に行われたのが、この霧矢大夢さんインタビュー。一般的な記者会見とは一線を画したこの日の会見は、今回が『ラ・マンチャの男』初参加となる霧矢さんにとっても大きな印象を残したようです。
世界に誇る日本版『ラ・マンチャの男』に
初挑戦する不安と楽しみ
――さきほど、記者会見を拝見して圧倒されてしまいました。ご出演者の人生の歩みが投影された、重みのあるお言葉がたくさんありましたね。「そうなんですよ。私もまだ客観的な部分があって、出演者でありながら皆さんのそれぞれの思いをおうかがいして、まだお稽古が始まっていないので、正直申し上げてこの中に入っていけるのかと、ちょっと怖い気持ちもあります。でも、この凄い方々と素晴らしい作品に出演させていただけるんだという喜びもありますし、今まで不安9割、期待1割くらいだったのが、今は不安が9.5割、でも楽しみも5割ぐらいに増えました。って、10割超えていますけれど(笑)」
――作品についてはどんな印象をお持ちでしたか?
『ラ・マンチャの男』
――本作の一番の特徴と言えば、教会侮辱罪で牢に入れられたセルバンテスが、囚人たちを巻き込んで『ドン・キホーテ』の物語を演じていくという「入れ子」の構造。それゆえミュージカルとしては難解な作品と言われることもありますが、演じる側から見ると、俳優の方がたはもともと「演じる」ことが前提なので、そう違和感はないのでしょうか?
「そうですね。複雑な構造のお芝居ですし、私が演じさせていただくアルドンザもすごく難しい役どころだと思うんですけど、劇中劇で“演じる”ことが二重に重なっても違和感はないと思うんですね。
逆に、劇中劇を演じていない、名もない囚人役の時の方が、居方が難しいかもしれません。今は、私が演じるこの囚人は何の罪で服役してるのかな?と考えたりしています。セルバンテスが活きた16世紀末のスペインで牢獄にいる女性って、何の罪だろう。貧乏で職がなくて盗みを働いたとか、生きていくために仕方なくやったことが罪になってつかまったのかなとか、宗教的なことでいえば魔女狩りじゃないですけど、男性をたぶらかしたと思われたり、女性であることが罪である…ということがあったのかな、などと考えています」
*『ラ・マンチャの男』のお話、次頁にまだまだ続きます!