イタリア/カプリ島他南イタリア

デザイン好き必見! 南伊ソレントの名建築ホテル

南イタリアの人気の海浜リゾート地ソレント。ここにイタリア20世紀を代表する名建築家ジオ・ポンティが設計したホテル「パルコ・デイ・プリンチピ」があります。建物のみならず、プール、家具、タイルなど細部にわたるまで彼の手で綿密にデザインされた、ポップであまりに美しい近代建築遺産です。

河村 英和

執筆者:河村 英和

イタリアガイド

ソレントの海に輝く、ホテル・パルコ・デイ・プリンチピ

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ジオ・ポンティのデザインしたタイルと家具に囲まれたホテルラウンジの一角 (c)Ewa Kawamura


hotel parco dei prinipi

ソレントの断崖の真上に建つ白亜のホテル・パルコ・デイ・プリンチピと宿泊客専用海水浴場 (c)Ewa Kawamura

ソレント(Sorrento)は、南イタリア・カンパーニア州の有数のリゾート地。ナポリ湾に面して、ヴェスヴィオ山の絶景が望める風光明媚さと、歴史ある旧市街の魅力から、海水浴シーズンは大人気。そんな夏のソレントは人があまりに多く、とても賑やかですが、そこから1.5キロメートルほど東へ離れたサンタニェッロ(Sant'Agnello)は、静かで落ち着いたエリアです。馬車旅行時代の19世紀初頭は、まだソレントの中心部にホテルが沢山なく、むしろこちらのほうがナポリに近いこともあって、ホテルや貸別荘が早くから集中していました。

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ホテルの入り口には19世紀の英国風ネオゴシック様式の建物も (c)Ewa Kawamura

そんなサンタニェッロには、20世紀イタリアを代表する偉大な建築家、ジオ・ポンティ(Gio Ponti、1891-1979)が設計した、素晴らしい近代建築遺産といえるホテルがあります。それが今回ご紹介する、「王子たちの領地」と命名されたホテル、パルコ・デイ・プリンチピ(Parco dei Principi)です。このホテルは広大な敷地で、もともとイエズス会の所有だったところ、19世紀にブルボン王朝の手に渡りました。

歴史ある敷地には英国式庭園と19世紀のヴィラも

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ホテル敷地内のヴィラ・コルチャコフ(旧ヴィラ・ポッジョ・シラクーサ)のテラスからみえるナポリ湾とヴェスヴィオ山 (c)Ewa Kawamura


Villa Poggio Siracusa

ブルボン王家時代に建てられたシラクーサ伯の別荘 (c)Ewa Kawamura

庭も植物園のように広く、自然を生かした英国式庭園に整備され、ヴィーナスの神殿と呼ばれる東屋も置かれました。道路に面した入り口には19世紀に建設された英国風ネオゴシック様式の建物があり、庭園を抜けて海に面した場所には、ブルボン家と繋がるシラクーサ伯の別荘(Villa Poggio Siracusa)があります。ここは、1885年にロシアの富豪が所有するようになり、コルチャコフ荘(Villa Cortchacow)とも呼ばれ、今は結婚式など特別なイベントのときのみ開放されています。

ジオ・ポンティによる個性ある青と白を基調にした美しいデザイン

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家具も壁のタイルもすべてジオ・ポンティのデザイン (c)Ewa Kawamura


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今でも充分新しいジオ・ポンティのセンスに脱帽 (c)Ewa Kawamura

そして1962年、コルチャコフ荘の隣に、ジオ・ポンティによって設計されたホテル「パルコ・デイ・プリンチピ」が建設・開業します。建物だけでなく、すべての客室の家具、公共空間の家具、床タイル、壁の装飾タイルも、あらゆる部位にジオ・ポンティの息吹きが感じられます。今流行りのデザインホテルの先駆けといってよいでしょう。外壁も内壁も、地中海建築らしい白亜の色を基調として、1960年代独特の直線美が走るなか、海をイメージした個性的な青がアクセントカラーに。ジオ・ポンティの斬新なデザインは、時代を越えて今もなお新鮮です。

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ホテル・パルコ・デイ・プリンチピのためにジオ・ポンティがデザインしたタイル (c)Ewa Kawamura

ジオ・ポンティに設計を依頼した当時のホテルのオーナー、ロベルト・フェルナンデスは、それから2年後、同じく彼の所有であるローマの同名ホテル「パルコ・デイ・プリンチピ」(1964年)も、ジオ・ポンティに設計させています。ホテルは、ロイヤル・グループというホテルチェーンに属していて、現在同チェーンのナポリにあるホテル・ロイヤル(現ロイヤル・コンティネンタル)の家具とプールも、当時(1953年)はジオ・ポンティのデザインでしたが、今は一部の客室とプールにその名残がみられるのみです。

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バルコニーの手すりに光るジオ・ポンティの個性 (c)Ewa Kawamura

より完璧なかたちで、ジオ・ポンティの設計・デザインを、今も思う存分に堪能できるのは、なによりもソレントの「パルコ・デイ・プリンチピ」です。ここでは、全体からディティールの随所に至るまで、ジオ・ポンティの魂が光輝いて宿っています。エレベータ、階段、手すり、どこを目をやっても、ジオ・ポンティの世界に、あっという間に引き込まれてしまうことでしょう。

プールも海水浴も両方楽しめる!

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ジオ・ポンティのデザインが楽しいホテルのプール (c)Ewa Kawamura


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ホテルの宿泊客専用の絶景の海水浴場 (c)Ewa Kawamura

もちろんプールもジオ・ポンティのデザインで、彼独自の自由な造形の美しさに驚きです。ポップな飛び込み台、イレギュラーな階段、ひとつのプールのなかに、複数のプールがあるかのような、様々な水深とカタチが楽しめます。ホテルでは、プライベート・ビーチも用意されていて、そこから眺めるナポリ湾とヴェスヴィオの絶景は忘れられぬ滞在の思い出になるに違いありません。20世紀建築遺産とソレントの自然美の両方が満喫できる、稀有なホテルのひとつです。

<DATA>
Hotel Parco dei Principi (ホテル・パルコ・デイ・プリンチピ)
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ホテル内の英国式庭園 (c)Ewa Kawamura

住所:Via Bernardino Rota, 44, Sorrento NA
TEL:+39 081 878 4644
料金:260ユーロ~
アクセス:ヴェスヴィオ周遊鉄道(Circum Vesuviana)のサンタニェッロ(S.Agnello)駅から徒歩約13分。ソレント中心部まで徒歩約25分。ソレント中心部とホテルを往復する無料シャトルサービスあり(要予約)。
※ホテルのフェイスブックには最新情報も
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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