集中力を取り戻すことは心の健康を取り戻すこと。集中力を高めることは自分の実力を高めること!
今回は集中力の基礎知識を精神医学的観点から詳しく解説します。
ふだんの集中力はどのくらい?
集中力は記憶力や思考力などと共に精神機能の重要な要素です。集中力のレベル自体は個人差がかなりあります。いったん本を読み出すと、それに没頭して最後まで読み通せる人もいるでしょう。しかし気が散りやすい人もいます。数分読めば、そこでスマホをチェック。また数分読んで、スマホをチェックとなっていたら、その時の集中力は低いといえるでしょう。こうした際に重要なのは、それが普段のことなのか、それともその時に限ってなのかです。
充分なモチベーションで何かに真剣に取り組んだ場合、どのくらい集中力が持続するか? もし1時間以上続けば、集中力は素晴らしいと言って間違いないでしょう。反対に10分も続かないような場合、集中力に何か問題を抱えているということは、はっきり認識しておきたいものです。
集中力を損なう要因は?
普段なら30分は集中できる人が、最近では10分も持たなくなっていると感じる場合、さまざまな要因が考えられます。何か心配事を抱えていたり、トラブルが続いてイライラ気味なのかもしれません。単にモチベーションが低下している場合もあるでしょうが、睡眠不足、心身の疲労、食事の内容、そして風邪を引くなど体調不良も集中力の低下につながりやすいです。
こうしたことは多くの方に経験があると思いますし、それが時折ならば精神医学的な問題は無いです。しかしそれが増えてきているのであれば注意が必要です。
特に注意したいのは負の連鎖に入っていく可能性です。集中力が悪くなれば、物事の効率は落ちてきます。さまざまな弊害が複合的に現われやすくなります。睡眠時間が足りない、疲れが取れない、イライラする、場合によっては周囲の言動に過敏になってしまう……。もし最近集中力の低下を自覚したら、心身の健康に黄色信号が灯っているということ。取り得る対策は積極的に取って行きたいものです。
深刻化していたら、病気が原因の可能性も!
集中力の低下が深刻な場合、心の病気の可能性もあります。例えば、うつ病では気持ちの落ち込みと共に「目先の事に集中しにくい」ことは、抑うつ症状の1つとして現れやすいです。反対に気分が良くなれば物事に集中しやすいですが、それが過ぎれば、かえって気が散りやすく、1つの事に集中できなくなります。特に躁うつ病の躁状態ではそれが顕著になりやすいです。「発達障害」の1つであるADHD(注意欠陥/多動性障害)では、集中力の低下は特徴的な症状になっています。ADHDは小児だけでなく大人でもあらわれ得ます。また、集中力の低下は加齢に伴い、性ホルモンの分泌低下がもたらす更年期症状として、あるいは認知症の初期症状として現われる場合もあります。
もし日常生活に深刻な支障が出るレベルで集中力が低下した場合、こうした病気が原因となっている可能性にもご注意ください。
集中力のベースラインを上げるためには何が効く?
集中力を高めたいとした場合、それは元々のレベルから、ある程度下がった状態を元に戻すことなのか、それとも元々のレベルをさらに上のレベルに高めることなのか? 心の病気による集中力の低下など、精神医学的な対処は主に前者が対象です。後者に関しては、私たちの普段の集中力はまだかなり能力を伸ばせる余地があるように思います。特に、10分間本を読んではスマホをチェックするような人ならば、劇的な違いが出るかもしれません。
集中力を高めるためには、いろいろな事がよく言われています。実際にそれぞれ試してみたいものですが、ここで注意したいこととしては、人によって効き目が異なるということです。また、それが行き過ぎた場合、かえって逆効果になる事もあります。
例えば、コーヒーの成分であるカフェインは中枢神経系を刺激し、集中力を高めますが、胃腸の具合などでコーヒーが苦手な人もいらっしゃると思います。またコーヒーの量が1杯、2杯の適量を過ぎて、5杯、6杯と増えていけば、集中力は低下しやすくなり、カフェイン依存症にも注意が必要になってきます。行き過ぎの弊害にはどうかご注意ください。
最後に、「集中力のベースラインを上げよう!」とは私たちがふだん意識するような事ではないでしょうが、物事の効率を上げる必要性は今後ますます求められるのではないでしょうか。ご自分の集中力の現状はぜひ意識しておきたいものです。もしふだんの集中力でなくなっていたら、それは心の不調のサインでもあることはどうかご注意ください。