『王子とこじき』
7月25日~8月23日=自由劇場、9月21日~10月4日=京都劇場 ほか全国公演あり『王子とこじき』
16世紀のイギリス。貧しい家に生まれたトムとヘンリー八世の子として生まれたエドワード王子は、ひょんなことから出会い、顔がそっくりだったことから衣服を取り換え、互いになりすます。身なりに惑わされた大人たちのせいで、二人は次々に騒動に巻き込まれるが……。
マーク・トウェインの原作を、俳優の石坂浩二さんが若かりし日に脚色。真実を見極めること、そして真実を勇気を持って口にすることの大切さを描いた劇団四季ファミリー・ミュージカルが、久々に再演されます。初演は1967年ですが、今回の加藤敬二さんによる振付には随所に「今」のテイストが差し挟まれ、重厚感溢れる衣裳も魅力。いずみたくさん、佐橋俊彦さんによる音楽も親しみやすいものの、あまり上演頻度が高いわけではない作品の貴重な公演ですので(前回公演は2006年)、未見の方はぜひお見逃しなく!
『王子とこじき』撮影:下坂敦俊
ファミリー・ミュージカルには“とにかく音楽が素敵な作品”“キャラクター設定が面白いもの”などいろいろなタイプがありますが、本作はとりわけ主人公、エドワード王子の奮闘過程が見どころ。歌(心躍る主題歌「真実の歌」で観客参加のシーンも有り)やダンス(ヒップホップ調も有り!)はもちろん、笑いも随所に取り入れた親しみやすい作品ではありますが、トムと衣服を交換した結果、城を追い出され、アイデンティティ喪失の危機に陥ったエドワードが、困難を乗り越えて“本当の自分”に戻ってゆくまでのドラマがしっかり芯にあることで、見ごたえのある舞台に仕上がっています。
『王子とこじき』撮影:下坂敦俊
『王子とこじき』撮影:下坂敦俊
『グッバイ・ガール』
8月7~23日=東京国際フォーラムホールC『グッバイ・ガール』
アメリカを代表するコメディ作家ニール・サイモンの脚本で77年に公開され、アカデミー賞主演男優賞を受賞した同名映画の舞台版(ブロードウェイ初演は93年)。男運のないシングル・マザーのダンサーと、風変わりな俳優の恋の行方が描かれます。
今回の日本版は劇団M.O.Pの主宰者で多数の現代劇を手掛けているマキノノゾミさんが演出。日々の騒動の中で「これが本当の恋?」「この愛を信じていいのかな?」と揺れ動く主人公たちの繊細な心模様を、紫吹淳さん、岡田浩暉さんがどう演じるか。『コーラスライン』のマーヴィン・ハムリッシュが手掛けた音楽も心地よく、夏のデート・ミュージカルをお探しの方には特にお勧めです!
『グッバイ・ガール』
まばゆい恋ばかりがミュージカルじゃない!と改めて感じさせるのがこの『グッバイ・ガール』。旬を過ぎたダンサーである主人公のシングル・マザー、ポーラは男運が悪く、尽くしては捨てられ、の連続。対するエリオットは変わり者の売れない役者で、二人は最悪の出会い方をします。言い合いばかりの日々ですが、エリオットが人生を賭けた主演舞台が大失敗に終わったことをきっかけに、二人は急接近。けれども自信の持てない二人は、なかなかもう一歩前に進むことができない…。
軽妙な会話と洒落た音楽で彩りながらも、ニール・サイモンの台詞も最大限に生かし、いわゆる“負け組”の揺れ動く心をじっくりと描いた本作。今回の舞台でも、14人編成オーケストラの厚みのある演奏に包まれ、場面に応じて時に軽快、時にしっとり、そして時に華やかに演じ分ける芸達者たちによって、「良質のミュージカル・コメディ」が立ち現われています。
『グッバイ・ガール』
『サウンド・オブ・ミュージック』
8月9日~12月6日=四季劇場「秋」『サウンド・オブ・ミュージック』
誰もが知っている「ドレミの歌」はじめ、「エーデルワイス」「ひとりぼっちの羊飼い」など名曲揃いのオスカー&ハマースタイン作ミュージカル。修道女見習いのマリアがトラップ大佐一家との出会いを通て、“本当の自分”に気づき、勇気と愛を支えに新たな人生へと踏み出してゆくさまが描かれます。
7人の子役のかわいらしさ、曲の親しみやすさからファミリー・ミュージカルと思われがちですが、舞台版はナチスの圧力に抵抗する大佐たちの姿を丁寧に描き、政治的メッセージ色の濃い仕上がり。信念のため茨の道を選び、旅立つマリアたちに歌われる「すべての山を登れ」がいっそう感動的に響く舞台となっています。軍隊のような日々を送っていた子供たちが、マリアに音楽の喜びを教えられ、子供らしさを取り戻してゆく変化にも注目を!