アッと言う間にヒーローとなった矢野
「今までなら打席に入っていなかったかもしれないが、打たせてもらったので……」
笑顔だが、声は震え、目には光るものが見えた。6月14日のDeNA戦だった。ここ3日間で2度目のお立ち台。つい5日前まで在籍していた巨人では、立つことがなかったであろう第3打席で逆転決勝ホームランを放ち、矢野はアッと言う間にヒーローとなった。
10日に日本ハムへのトレード移籍が発表され、11日にチームに合流。札幌での入団会見で、栗山監督から「期待している。巨人で出し尽くせなかったものを出してほしい。明日(12日)からすぐに(スタメンで)いってもらう」と声をかけられた。「プロに入ってあんな言葉をかけてもらったのは初めて」と矢野は感激した。その夜、「人生で初めて緊張して眠れなかった」という。期待に応えなければというプレッシャーと胸の高鳴りが交錯した。
国学院久我山高から国学院大を出て巨人にドラフト6位で入団したのは2003年。2006年に103試合に出場し、定位置を取りかけたが、故障や選手層の厚さから代打稼業になってしまった。しかも左投手専用。
栗山監督は「技術を持っていながらやれない苦しさがあったと思う」と評論家時代から矢野を気にかけていた。それが今回のトレードにつながったともいえる。
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